アメリカ国立アレルギー・感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ博士。4月1日、ホワイトハウスで。
Alex Brandon/AP
- アメリカの複数の州で、新型コロナウイルスの1日当たり新規感染者数が過去最多となった。
- アンソニー・ファウチ博士は「第2波のことが話題になっているが、我々は今も第1波の中にいる」とウォール・ストリート・ジャーナルに語った。
- ウイルス感染を抑え込むことができたと思われる国々もあるが、今は感染者が再び増加するのではないかと恐れられている。
アメリカの複数の州で、新型コロナウイルスの1日当たり新規感染者数が過去最多となったことを受け、感染症専門家でアメリカ国立アレルギー・感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)博士は、アメリカはまだ「第1波」の中にいると述べた。
「第2波のことがよく話題になっているが、我々は今も最初の波の中にいる」と同博士は6月16日、ウォール・ストリート・ジャーナルに語った。
さらに、各州で規制が緩和され、多くの人々が通常の生活を取り戻す中、ウイルス拡散のリスクが高まっていると指摘した。
「テレビでバーに人が集まる様子が映し出されているのを見た。まだそういう場所で集まれる段階ではない。非常に危険だ」
感染症の流行が抑えられたように見えても、再び感染者が急増したり、いっそうひどい状況になったりすることもあり得ると、パンデミックの初期から専門家は警告してきた。
ウイルスの発生源となった中国や、ニュージーランド、ヨーロッパのいくつかの国々は、国内でのウイルス感染を抑え込むことができたようだ。現在、新規感染者のモニタリングや検査が行われているが、いわゆる「第2波」の発生が恐れられている。
一方アメリカでは、アリゾナ州、ネバダ州、オクラホマ州、フロリダ州、テキサス州、オレゴン州の少なくとも6つの州で6月16日、1日の新規感染者数が過去最多を記録したと発表された。
「そもそも第1波から抜け出せていない」
フロリダなど、複数の州の知事は、感染者数が増加したからといって、新たにロックダウンの措置を取ることはしないと述べた。ただし、オレゴン州では、6月9日に経済活動を再開させる予定だったが、感染者数の増加により延期となっている。
他の専門家も、新規感染者数の記録的増加は、第1波によるものであり、第2波ではないというファウチ博士の見解に同意している。
ノースカロライナ大学医療センター疫学病院の医療ディレクター、デイヴィッド・ウェーバー(David Weber)博士は「そもそも第1波から抜け出せていない」とNBCニュースに語った。また、ヴァンダービルト大学メディカルセンターの疫学者、ローレン・リップワース(Loren Lipworth)氏も「第2波というのは、第1波が消滅した後に現れるものだ」とNBCに語った。
「それがアメリカで起こっているとは思わない」
ファウチ博士は6月に入ってから、新型コロナウイルスの流行は彼が経験した中で「最もひどい悪夢」であり「世界を打ちのめした」と述べ、「今もまだ終わっていない」と警告した。
だが、アメリカ合衆国のマイク・ペンス(Mike Pence)副大統領は、6月16日に公開されたウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿文で、第2波への恐れは「大げさ」だと主張し「我々は見えない敵との戦いに勝利している」と述べた。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)