2019年、各社からキャッシュレス決済サービスの「○○ペイ」が登場し話題となった。
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各社からキャッシュレス決済サービスの「●●ペイ」が登場し、従来からあるクレジットカードや電子マネーも日常生活に浸透した2019年。現金至上主義が主流だった日本の決済スタイルが劇的に変化した“キャッシュレス元年” だったと言えるだろう。
これに続く2020年は、マイナンバーカードを取得した人が所定の手続をしてキャッシュレス決済サービスをひも付けることで、ポイントが付与されるマイナポイント事業がスタート。「マイナンバーカード」に注目が集まる可能性が高い。
知っているようでよく知らない、マイナンバーカードのメリットを今一度おさらいするとともに、2020年9月から開始予定の「マイナポイント」事業の概要についても紹介していく。
「本人確認書類」としての利用だけじゃない。さまざまなメリット
マイナンバーカードはプラスチック製のICチップ付きカード。表面には顔写真と氏名、住所、性別、生年月日が記載され、マイナンバーは裏面に記載されている。
提供:総務省
マイナンバー制度とは、2015年10月に施行されたマイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)に基づき、国民の利便性の向上、公平・公正な社会の実現、行政の効率化を図るための社会基盤となるものだ。日本に住民票を有するすべての人に12桁の番号、「マイナンバー」が記載してある「通知カード」、「個人番号通知書」が郵送されている。マイナンバーは社会保障、税、災害対策など複数の機関が管理する個人の情報が、同一人物の情報であることを確認するために活用されている。(※2020年5月25日以降、通知カードの廃止に伴い、券面事項に変更が生じた際には通知カードは使えなくなる)
そして、そのマイナンバーが記載された顔写真やICチップ付きプラスチック製カードが「マイナンバーカード」だ。マイナンバーカードには、マイナンバー以外に氏名と住所、性別、生年月日が記載されている。また、顔写真付きのため、本人確認書類として利用することが可能だ。
マイナンバーカードのICチップには、「署名用」と「利用者証明用」という2種類の電子証明書が収められている。署名用の電子証明書は「作成・送信した電子文書が、自分自身が作成した真正なものであり、自分自身で送信したものであること」を証明できるため、e-Taxなどの電子申請で利用。また、利用者証明用は「マイナポータル」という行政手続のオンライン検索・電子申請ができる自分専用のポータルサイトへログインする際に利用できる。
「マイナポータル」では、子育てや介護、法人設立などの行政手続がワンストップで行えるほか、行政機関からのお知らせも確認が可能だ。(詳細はこちらから)
では、マイナンバーカードを取得することによる具体的なメリットを見ていこう。
まず挙げられるのは、マイナンバーカードの電子証明書を利用することで、住民票の写しや印鑑登録証明書などの公的な証明書を手軽に取得できるようになることだ。従来は、市区町村の窓口へ開庁時間内に行く必要があったため、この手続は工数のかかるものだった。それが、近所のコンビニやドラッグストアなどに設置されたキオスク端末でできるため、メリットは大きい。
(※コンビニ交付サービスは市区町村により異なる。詳細はこちらから)
もう一つのメリットは、国や市区町村が提供するさまざまなサービスをマイナンバーカード1枚ですべて受けられるようになることだ。
例えば東京都豊島区では、区立図書館の利用カード番号を紐付けることで、マイナンバーカードを図書館利用カードとしても使用できる。また、群馬県前橋市では、予防接種の履歴や定期健診のお知らせなどの母子向け情報を集約したサイトに、マイナンバーカードの公的個人認証を利用してアクセスできる。
国の施策としては、2021年3月から、マイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになる予定だ。(マイナポイントの申込時に、健康保険証の利用登録もできるようになる)
テクノロジーによって利用者の利便性が向上し業務の効率化も進むという意味では、“行政のデジタルトランスフォーメーション”とも言えるだろう。
個人情報管理について不安を感じる人もいるかもしれないが、マイナンバーカードのICチップには、税・年金の情報や病歴などプライバシー性の高い情報は記録されない。また、カードを利用するためには暗証番号等の認証が必要であり、暗証番号を一定回数間違えるとカードがロックされ、不正に情報を読み出そうとするとICチップが壊れる仕組みになっているなど、万全な安全対策が講じられている。
スマートフォンからも簡単に申請することができる
マイナンバーカードの総合サイトでは、申請方法などを確認できる。
出典:マイナンバーカード総合サイト
現在、マイナンバーカードの普及率(人口に対する交付率)は約17%という数字にとどまっている(2020年6月1日時点)。運転免許証や健康保険証などとは違って「持っていないと困る」というものではないことも一因だが、先に述べたように、将来的にメリットと必要性は増していく。今後を見据えて、交付申請を済ませておきたいところだ。
マイナンバーカードの申請の方法は、スマートフォンやパソコン、まちなかの証明用写真機、郵便の4通り。このうち、スマートフォンによる申請が最も手軽でオススメだ。まずはスマートフォンのカメラで顔写真を撮影し、郵送された通知カードの下に付いている「個人番号カード交付申請書」に印刷されたQRコードを読み取って、申請用WEBサイトにアクセスしてメールアドレスを登録。登録されたメールアドレス宛に通知される申請者専用WEBサイトにアクセスし、画面に従って必要事項を入力、顔写真のデータを添付して送信すれば完了だ。
申請完了からおおむね1カ月で、居住する市区町村から「交付通知書」のはがきが届く。これに記載された必要な持ち物を持って指定の交付場所に行き、窓口でパスワード(暗証番号)を設定し終えたら、マイナンバーカードを受け取れるという流れだ。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、地域の状況に応じて、適切な時期に受け取りに行くことをおススメする。
5000円分を上限に、利用金額の25%をポイントとして付与
2020年9月から開始予定のマイナポイント事業のロゴ。
出典:「マイナポイント事業」サイト
さて、2020年9月1日からは「マイナポイント」付与がスタートする。これは、所定の手続をした人が選択したキャッシュレス決済サービスでチャージもしくは買い物をすると、決済額の25%(上限5000円分)がその決済サービスで利用できるポイントとして付与されるというお得な施策だ。
このマイナポイントを受け取るには、マイナンバーカードの取得が必須。その上で、「マイナポイントの予約」が必要となる。マイナポイントの予約のため、スマートフォン向けに専用「マイナポイント」アプリが用意されている。また、公的個人認証に対応するICカードリーダライタがあれば、パソコンと専用ソフトを使ってもマイナポイントの予約が可能だ。
その後、2020年7月以降(2021年3月末まで)にマイナポイントの申込みを行う。これにより、マイナポイント事業に登録されている好きなキャッシュレス決済サービスの中から1つを選択しひも付けする。2020年6月12日時点で、登録されているキャッシュレス決済サービス事業者は約120種類になる。
キャッシュレス決済サービスが日常生活に浸透したのは、その合理性と利便性を私たちが実感したからだ。同様に、マイナンバーカードにも合理性と利便性は十分にあり、しかも今後は社会インフラとしてその重要性は増していく。「よく知らない」「手続をつい後回し」にしてしまうことなく、より快適な社会生活を送るためのツールとして活用したい。