令和時代に『風の谷のナウシカ』が劇場公開される意味

『風の谷のナウシカ』と『もののけ姫』のパンフレット。

『風の谷のナウシカ』と『もののけ姫』のパンフレット。

撮影:吉川慧

映画配給会社「東宝」は6月18日、スタジオジブリの長編アニメーション4作品を26日から全国の映画館で上映すると発表した。372劇場で上映されるのは以下の4作品だ。

  • 『風の谷のナウシカ』(1984年、宮崎駿監督)
  • 『もののけ姫』(1997年、宮崎駿監督)
  • 『千と千尋の神隠し』(2001年、宮崎駿監督)
  • 『ゲド戦記』(2006年、宮崎吾朗監督)

企画のキャッチコピーは「一生に一度は、映画館でジブリを」

文春ジブリ文庫『千と千尋と神隠し』と『ゲド戦記』パンフレット。

文春ジブリ文庫『千と千尋と神隠し』と『ゲド戦記』パンフレット。

撮影:吉川慧

スタジオジブリの長編アニメーション映画は『思い出のマーニー』(2014年、米林宏昌監督)、『レッドタートル ある島の物語』(国際共同制作、2016年)が最後となっている。

ジブリの二大巨匠、宮崎駿監督と高畑勲監督の長編映画も、近年は劇場で観られる機会はなかなかない。

宮崎監督は近年、三鷹の森ジブリ美術館で上映された短編映画『毛虫のボロ』などを制作。CGによる新たな表現にも取り組んでいる。

長編作品は現時点では『風立ちぬ』(2013年)が最後となっている。同作の公開後、宮崎監督は年齢を理由に長編映画からの引退を表明。翌2014年、スタジオジブリは制作部門を解散した。

2015年、宮崎監督が引退を撤回したと鈴木敏夫プロデューサーが発表。制作部門も再構築され、現在は新作アニメーション』を制作中だ。

宮崎駿監督(左)と高畑勲監督。

宮崎駿監督(左)と高畑勲監督。

Getty Images

1960年代の東映動画時代から宮崎監督の盟友で『火垂るの墓』などで知られる高畑勲監督は、2018年4月、この世を去った。20代の頃から構想を練っていた『かぐや姫の物語』(2013年)が遺作となった。

#一生に一度は映画館でジブリを

/「スタジオジブリ」4作品劇場上映が決定しました\

6月26日(金)より全国372館で上映します

『風の谷のナウシカ 』(1984)『もののけ姫 』(1997)『千と千尋の神隠し 』(2001)『ゲド戦記』(2006)

こうした背景から、ジブリ作品を「映画館で見たことがない」という世代も増えつつあるのだろう。

そんな中で、過去のジブリの名作を劇場のスクリーンで見られるチャンスは千載一遇と言える。文字通り「一生に一度は、映画館でジブリを」が叶うチャンスだ。

往年のファンにとっても喜びはひとしおだ。Twitter上では、令和の時代にジブリの原点とも言える36年前の『風の谷のナウシカ』が映画館で観られることに歓喜する声がでている。

さらには今回の企画が、鋭意制作中である宮崎監督の新作長編アニメ公開への布石ではないかという意見も…。

こうして、「映画館で見たジブリの思い出」は、時を超え、世代を超えて受け継がれていく。

ファン歓喜、東宝サイトダウンの珍事も

ファンの“熱”もあってか東宝のサイトがダウンした。

ファンの“熱”もあってか東宝のサイトがダウンした。

Business Insider Japan

いずれにしろ、多くのファンが熱狂し、公開劇場を調べようとアクセスしたのだろう。

リバイバル上映発表後の6月18日午後5時頃、Business Insider Japan編集部は東宝のサイトがダウンしていることを確認した。

東宝は18日午後「現在、アクセスの集中により、スタジオジブリ4作品の上映劇場ページが繋がりにくい状態になっております」とお詫びを発表。「しばらく時間をおいてから再びアクセスしていただきますよう、お願い申し上げます」と呼びかけた。

この珍事も、ジブリファンの“熱”を示すエピソードの一つとして歴史に刻まれることだろう。

サイトダウンを受けて東宝は18日午後9時前、上映劇場を伝えるページを別途用意したと発表。Twitterでも公開劇場を伝えた。

大画面で堪能したい「ジブリの色」

『もののけ姫』のイメージボード。

『もののけ姫』のイメージボード。

©Museo d'Arte Ghibli/©Studio Ghibli

往年のスタジオジブリ作品は現在のアニメーション制作技術とは異なり、アニメーターが描いた絵(原画)を透明なシート(セル)に転写し、絵の具で色を塗り、それらをつなげて作っていた。いわゆる「セルアニメ」というものだ。

およそ2時間の作品で、セル画の枚数は約12万枚にも及ぶ。スタッフたちは全て手作業で、絵の具でセルに色をつけていた。

宮崎駿監督や高畑勲監督は、登場人物と日常を緻密に描くことで、実写とは違う豊かな情感とリアリティを表現しようとした。

アニメーションにリアリティや臨場感をもたせるためには、色の役割が欠かせない。その色彩設計を担ったが「ジブリの色職人」と謳われ、宮崎監督が「戦友」高畑監督が「同志」と呼んだ保田道世さん(2016年死去)だった。

通常のテレビアニメでは約130~160色のところジブリ作品ではその倍以上。『となりのトトロ』(1988年)は308色、『魔女の宅急便』(1989年)は436色。今回のリバイバル上映で公開される『もののけ姫』では580色もの色が用いられた。

興行収入193億円の金字塔を打ち立て、20世紀の日本映画最大のヒット作となった『もののけ姫』は、スタジオジブリがセル画で制作した最後の長編作品でもある。

ぜひ劇場の大スクリーンで、クリエイターたちが心血を注いだアニメーションのダイナミズムを味わって欲しい。

東宝では、公式YouTubeチャンネルでリバイバル上映する4作品の特報映像を公開している。

風の谷のナウシカ

もののけ姫

千と千尋の神隠し

ゲド戦記

文・吉川慧

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