1982年生まれ。東大法科大学院卒業後、総務省に入省。入省後に司法試験に合格。熊本県庁出向後、総務省で人事採用などを担当。2010年によんなな会を発足。2013年から神奈川県庁に出向。
撮影:竹井俊晴
47都道府県と霞が関の公務員をつなぐよんなな会を立ち上げた脇雅昭(38)。20代は自身の仕事の価値に悩んだこともあったというが、そんな脇が今28歳の自分に声をかけるとしたら……。
28歳。僕は超モヤモヤの渦中にいました。
よんなな会で50人、60人くらいの会を年に1回していたころですね。2年くらいかな。ずっともがいて苦しんでいたと思います。
自分は何のために働くのか。その価値もビジョンも見えなくて、苦しかった。
その時代の自分に何を伝えたいかというと、
「そんなに長く悩み続ける必要ないよ」「人生のビジョンなんか、無理して作らなくていいんだよ」
ということかな。
みんな言うんですよ。「ビジョンが必要だ」って。
僕自身も、ビジョン作成セミナーに行ったことがあります。「さあ、みんなんでビジョンを考えよう!」というような。でも違和感しかなくて、すぐに帰ってきちゃったんですけれど。
撮影:今村拓馬
今だから思うのは、
「そんな大そうなビジョンなんか持たなくてもいい。とりあえず毎日、今やりたいと思うことを積み重ねていけばいい。そうしたら、いつか、『ああ、これが自分の道だったんだな』って気付く」
ということですね。
真っすぐビジョンを言える人は、キラキラしていてかっこいいのだけれど、その人たちだって、きっと、最初からそのビジョンを持っていたわけではないと思うんです。後からかっこよく言っているだけだから。
「これをやったら、あの人が喜んでくれるかなあ」という気持ちに正直に生きれば、それでいい。そのうち誰かが「君がやりたいことって、こういうことじゃない?」って、言葉にしてくれます。
僕だって、「公務員の志と能力1%良くなったら世の中が良くなる」とか「338万人の公務員が〜」なんて、最初から思ったわけないじゃない(笑)。
338万人のことを考えたわけじゃないんです。まずは、目の前の1人が幸せになってくれればそれでいい。そう思ってやってきたら、道ができた。その道を見て、誰かがそれに言葉を与えてくれる。その繰り返しでここまで来ました。
撮影:竹井俊晴
世の中で、唯一理屈抜きで動かすことができるのは自分だけなんですよね。それを使わないのはもったいない。
「こんなにワクワクするんだったら、理屈なんて要らない。ビジョンなんて要らない」と思った瞬間に、僕はすごく楽になりました。理屈ではなく、直感を信じ始めたんですね。直感こそ38年物の自分感覚そのものなので。
悩んだ時間は無駄ではなかったけれど、でも2年もうじうじしている必要はなかった。
やってからの違和感や課題感は絶対大事だけれど、やる前の違和感なんて想像でしかないから、マジで意味がないんですよね。
悩むくらいなら、まずは動き始めちゃったほうがいい。
やる前にわかった気分になれるほど、世の中は甘くないし、複雑だし、だから面白い。
そしてその「世の中」って、どこか遠くにあるんじゃなくて、半径数メートルのこの世界をどうやったら良くできるか、と考えることの先にある、そう思っています。
(敬称略、完)
(文・佐藤友美、写真・竹井俊晴)
佐藤友美(さとう・ゆみ) 書籍ライター。コラムニスト。年間10冊ほど担当する書籍ライターとして活動。ビジネス書から実用書、自己啓発書からノンフィクションまで、幅広いジャンルの著者の著書の執筆を行う。また、書評・ライフスタイル分野のコラムも多数執筆。 自著に『女の運命は髪で変わる』のほか、ビジネスノンフィクション『道を継ぐ』など。