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- モルガン・スタンレーは投資家向けのレポートの中で、コロナ禍を契機として、パブリック・クラウドやオンライン会議へのシフトの加速など、12種類のテクノロジー・トレンドが生まれると予測。
- 特にマイクロソフトが、そのトレンドのうち6つのカテゴリーにおいて収益を上げる見通し。同社が恩恵を受けるカテゴリー数はレポート対象企業中、最多だ。
モルガン・スタンレーが、コロナ禍を契機として生まれる12のテクノロジー・トレンド予測を発表した。特にマイクロソフトが言及されたカテゴリー数はレポート対象企業中、最多だ。
モルガン・スタンレーは、6月17日に投資家向けに発表したアナリストレポートの中で、顧客企業が今後最も出費を増やし、パンデミック後もその傾向が持続すると見込まれる分野を示した。
特にマイクロソフトは、12のカテゴリーのうち、パブリック・クラウドやオンライン会議へのシフトなど、6つのカテゴリーにおいて恩恵を受けると見込まれる。ポイントは次のとおりだ。
在宅勤務は「一過性のものではない」。オンライン会議のマーケットはZoomが席捲するだろうが、マイクロソフトも利益を得る
オンライン会議について、コロナ禍以前にモルガン・スタンレーが行ったアンケート調査によると、28%はマイクロソフトが提供するTeamsやSkypeを利用しており、Zoomは27%だった。
しかし、ここ数カ月における新規ライセンス数では、Zoomがマイクロソフトをはじめとする企業を上回っており、今後もオンライン会議のマーケットを席捲するだろう、とレポートは記している。
コロナ禍発生後、オンライン会議に対する支出を増やした企業のうち、59%がZoomを選んだのに対し、マイクロソフトを選んだ企業は39%にとどまっている。
レポートでは、従業員がオフィスに戻ることでZoomやマイクロソフトの株が売られるかもしれないが、在宅勤務は「一過性のもの」ではなく、オンライン会議のための支出増加分のうち42%は今後も継続すると考えられ、そのうち一定のシェアをマイクロソフトが得るだろうと見ている。
コロナ禍によってパブリッククラウドへのシフトが加速するなか、関連支出においてマイクロソフトが最大のシェアを獲得すると予測
今回のレポートは、パブリッククラウドが「事業の生き残りのカギとなりつつある。コロナ禍において企業がコネクティビティに注力しているからだ」と伝えている。
ちなみにパブリッククラウド・サービスの評価についても、モルガン・スタンレーは2020年前半、テクノロジー企業の幹部を対象に調査を行っている。その調査結果によると、マイクロソフトのAzureがアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を上回った。
AzureがAWSを上回ったのは、2018年の調査開始以来初めてだ。この調査は、第1四半期に各社の最高情報責任者(CIO)を対象として行われるもので、企業が今後どういった分野にIT予算を配分するかを予測するのが目的だ。
パブリッククラウド市場のシェアにおいては、アマゾンが今も最大シェアを維持している。リサーチ情報会社ガートナーの最新データによると、2018年末時点で、アマゾンがネットインフラ市場において47.8%のシェアを占め、マイクロソフトは15.5%だった。
マイクロソフトは、ローコード・アプリケーション、データアナリティクス、ヘルステック、AR/VRといった一大トレンドからも収益を上げるだろう
企業が事業プロセスのデジタル化を進めていくと、アプリケーション開発をローコーディングあるいはノーコーディングで支援するプラットフォームの提供者が利益を得るだろう、とモルガン・スタンレーは予想する。
このシフトにおいて、勝者となるのはマイクロソフトだと見ている。同社が提供するPower Platformがその理由だ。
レポートによれば、企業はAIや機械学習といったデータ中心テクノロジーに大規模な投資を行いつつある。マイクロソフトはここでも恩恵を受ける。
そのほかにマイクロソフトが利益を上げると見込まれるトレンドとしては、大手テック企業によるヘルスケア分野への参入も挙げられる。マイクロソフトも、同社初のヘルスケア業界用クラウドを引っさげて参入し、強力な取り組みを開始した。さらに、AR/VRへの投資増加もトレンドだ。パンデミック発生以降、AR/VRの実用事例は拡大している。
レポートは、「コロナ禍によってAR/VRの実用事例が拡大するだろう。距離をとりながらの交流がかつてないほど必要とされているからだ」と記し、「人と人との直接の交流の仕方について、『ニューノーマル』の到来が告げられた」と述べている。
(翻訳・住本時久、編集・常盤亜由子)