コロナでNPO苦境 。相談急増で人手不足の一方、仕事できない団体も。マッチングで解消へ

ホームドア

コロナの影響で相談件数が急増しているHomedoor。

撮影:今村拓馬

子どもや困窮者を支援をするNPOの“人手不足”が深刻化している。新型コロナウイルスの影響で、相談や支援業務が急増しているからだ。

一方、海外での支援などを活動の中心としている団体では移動の規制の影響で、“仕事不足”が起きており、こうした両者をつなぐ「緊急雇用マッチング」が始まっている。

企業間でも、自社で従業員を雇い続けることが難しい企業が、一時的に従業員を他社に出向させる「従業員シェア」という取り組みが広がるなど、仕事と雇用をめぐる新しい動きが出てきている。

「もうすぐ家を失う」切実な相談急増

「コロナの影響で相談が急増しています」と、NPO法人「Homedoor(ホームドア)」の事務局長、松本浩美さんは言う。

Homedoorは大阪市を拠点に、ホームレス状態となった人の就労や生活を支援している。ここ数カ月で増えているのが「住居を失うことになりそう」という切迫した相談だ。松本さんによると、3月ごろから相談者が増え始め、4月の新規の相談者は107人。前年4月の約3倍にも上ったという。

「3〜4月は『先が見えず不安』『ついさっき仕事を失った』という相談が中心でした。最近は『これ以上家賃を払えない』『もうすぐ家を出なくてはならない』という不安の声が寄せられつつあります」

個室のシェルター18部屋は満室が続いている。1つ空くと、その日のうちに別の人で埋まる。一時シェルターにいた60代男性は長年、建設業で生計を立ててきた。この春、熊本地震の復興現場へ行くはずが、現地で感染者が出て工事が止まり、職と住居を失った。「60年生きてきて、こんなにお金がないのは初めて」と話していたという。

コロナ前の聞き取り調査の様子

Homedoorの活動「夜回り」では、路上で生活している人たちへの聞き取り調査もしていた。

Homedoorの資料より

「うちに来る方は、行政の支援の狭間に落ちてしまった人が多い」と松本さんは言う。生活保護の案内をしてもらえなかった人、貸付・給付制度の融資が間に合わず、途方にくれている人……。何に困っているのか、どうすれば支援できるのかを探るには、対面での丁寧な聞き取りが欠かせないという。

Homedoorの常勤スタッフは4人。特に、相談業務の専従は1人しかいなかった。相談件数の急増でボランティアスタッフはフル稼働に。ほかの常勤スタッフも相談に回ることになり、相談・支援業務以外への事業に手が回らなくなっている状況だという。

Homedoorの運営を支える事業の1つが、家を失った人たちの仕事と運営費の獲得を目指すシェアサイクル事業「HUBchari(ハブチャリ)」。現在、大阪府内に約200箇所の拠点がある。コロナの影響で電車通勤を避けるためにシェアサイクルの需要も増えており、2020年5月の1カ月だけで延べ約4万回の利用があった。

「企業からも寄付や協力の申し出も増えています。事業を広げたり、社会の仕組みを変えていくチャンスなのに、相談・支援業務で手はいっぱい。人手が足りていない。フットワークが軽く、バイタリティにあふれる人が必要です」(松本さん)

Homedoor理事の松本浩美さん

Homedoor理事の松本浩美さん。

業務が減ったNPO、海外協力隊も

一方で、コロナ禍で業務が激減した団体も多い。三密を避けるために活動できなかったり、海外との行き来ができなくなったりしたからだ。共同通信の報道(6月9日)によれば、活動場所となる地元のNPOなどから資金支援などの要望が寄せられた都道府県は、31にも上ったという。

NPOだけではない。国際協力機構(JICA)は2020年3月、71カ国に派遣中の海外協力隊員1785人に帰国指示を出した。新規の派遣、赴任地への再派遣の目処は立っていない。

こうした状況の中、業務の急増した団体と急減した団体や個人とを結びつける「緊急雇用マッチング」が6月上旬、NPO法人「クロスフィールズ」によって開かれた。

クロスフィールズの中心事業は、日本企業の社員を新興国に派遣する「留職プログラム」や先進国での「社会課題体感フィールドスタディ」。クロスフィールズもまた「ほとんどの既存事業が止まった状況」(代表理事の小沼大地さん)だという。

「協力隊も、短期でできる仕事を探している方が多いと耳にしました。一方で、激務になっている団体もある。そこで、マッチングイベントを開くことにしたんです」(小沼さん)

フルリモートの仕事や長期雇用の募集も

npo1

マッチングイベントの様子。左側はクロスフィールズの小沼さん。

イベントは6月6-7日の2日間、オンラインで開催された。参加者は延べ約150人。青年海外協力隊員が多かった。

働き手を求める側の団体は、冒頭のHomedoorを含む計11団体。短期のバイトのような募集があれば、フルリモートでできる仕事、「機会があれば長期で働いてほしい」など、幅広い形態の募集があった。

全国の子ども食堂を支援しているNPO法人「むすびえ」は、企業や団体からの食材・物資の受け入れや、ファンドレイジングを取りまとめるプロジェクト・リーダーを求めて参加した。現在、既存メンバーもほぼ全ての業務をリモートで行っているという。

事務局の釜池雄高さんは参加者に、「子どもたちと直接触れ合うことは少ないが、全国で頑張っている運営者を支援できる。やりがいは大きいです」などと訴えた。

むすびえ事務局の釜池雄高さん

むすびえ事務局の釜池雄高さんは、「市民活動を支える中間支援団体の役割が増している」と言う。

釜池さんは言う。

「コロナを受けた調査の結果、多くの食堂が従来の活動の代わりにフードパントリーを始めるなど、食べ物を届けるために柔軟な対応をしていたことが分かりました。世間的な存在感も高まりつつあり、『支援したい』という人や企業も増えています。

こども食堂の活動が全国に広がる中で、(こども食堂などの市民活動を支援する)中間支援団体の役割は増していく。だからこそ、今は人手が必要です」

使命感に共感 「採用、受けてみたい」

イベントに参加した三島純菜さんは、青年海外協力隊員としてセネガルに派遣されていたが、2020年7月の派遣終了を前に帰国した。学校現場で子どもの教育に関わり、「仕上げの段階」での帰国指示。

「日本でも子どもの教育に関わりたいと思い参加しました」

別の26歳の女性は管理栄養士の資格を生かし、グアテマラで栄養・衛生の啓発活動を行い、2019年末に帰国した。2020年3月、就職しようとしていたNPOから「仕事がなく、採用しても働けるのは1年後」と告げられた。イベントでは、子どもの学習支援をしているNPOに興味を持ったという。

「“子どもの未来”を考える団体の使命感に共感しました。採用を受けてみようと思っています」

クロスフィールズの小沼さんによれば、すでに10人以上の申し込みがあり、実際採用につながったケースも出始めているという。

「先行きが見えない中でのマッチングの難しさは感じましたが、NPOのようなソーシャルセクターで働く人をつなぐニーズがあることが分かりました」

個別相談会の中には、「うちのNPOでは活動が止まっているので、職員を別のNPOに派遣したい」と話すNPO職員の姿もあった。

「コロナを受けて、うちもほかのNPOへと職員を出向させています。ソーシャルセクターに注目が集まっているいま、一時的な人員の融通にとどまらず、団体間の人事交流が当たり前になるように、今後も“越境”する機会を増やしていくことで、NPOの活性化に貢献していきたいと思います」(小沼さん)

(文・笹島康仁 )

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