Box共同創業者のアーロン・レヴィ氏。
出典:Box Japanの画像などをもとに編集部作成
法人向けに根強い人気を持つコラボレーション型クラウドストレージ「Box」を展開するBox Japanは6月19日、「企業のニューノーマル化に向けてのBoxの取り組みと支援について」と題した記者説明会を開いた。
Boxは直近、導入企業を大きく伸ばしている。2019年3月には4200社だったが、直近6月1日時点では約1.7倍に当たる7000社以上に増加。
Box Japan代表の古市克典氏によると、株価の指標の1つの、いわゆる「日経平均」を構成する225銘柄企業の50%がBox導入企業だという。また経産省と東証が選ぶ「攻めのIT経営銘柄」(2019年発表、全29社)の65%がBoxを使っているとした。
出典:オンライン記者説明会から筆者キャプチャー
新型コロナウイルスの影響下でもビジネスを前進させるニューノーマル社会へと変わるなかで、Boxが伸びている市場について、オンライン登壇した共同創業者のアーロン・レヴィ氏は「テクノロジー、リテール(小売り)ライフサイエンス、ヘルスケア(医療)も、大きく成長している」(レヴィ氏)と、これまでにない分野も含めて、安全な社外コラボレーションを支援するツールとしての導入が進んでいる様子を説明する。
Boxのインサイトから浮かぶ働き方の変化
Box共同創業者のアーロン・レヴィ氏。
出典:オンライン記者説明会から筆者キャプチャー
2005年に大学在学中にBoxを起業し、現在34歳のアーロン・レヴィ氏は、新型コロナウイルスが結果的に進めることになった「働き方」の劇的な変化について「世界各国を見てもたった1カ月のなかで、すべての企業で遠隔勤務が大きく展開している」と説明。
日本においては、3月の後半から4月中旬ごろにかけて、顕著な「働く場所(ロケーション)の変化」があったと概観した。
Boxのデータ上でも在宅シフトの変化があらわれている。
出典:Box Japan
Box導入企業のファイル閲覧時間帯のデータを示しながら、「働き方も大きく変わっている。どの時間に働くかというのも、朝の早い時間と夜になってきています。長い時間、ある意味働いている。遠隔で作業ができるようになってきています」(同)と、利用データから見える働き方の変化について言及した。
縦軸の単位は不明ながら、いわゆる9時〜5時のファイル参照数は減っているが、それ以外の早朝や深夜の参照数が増えている、とするグラフ。働く時間の分散化が進み、「働きやすい時間に働く」という姿が浮かび上がる。
出典:Box Japan
これからの働く環境がどう変わっていくのかについて、次の5つのビフォー・アフターの変化を挙げた。いずれも、すでに見えている各種ツールの利用兆候からの示唆だ。
- 9時5時のオフィスワーク → よりアジャイル(素早く、身軽に)で、どこでも働くスタイルに
- 非同期的な働き方 → よりリアルタイムなコラボレーションと、ダイナミックに協業するように
- マニュアルや紙ベースのプロセス → デジタル化し、自動化されたワークフローをこなすようになる
- 柔軟性のない単一ツールによる仕事 → 生産性の高いアプリを良いとこどりで使うようになる
- ネットワークの「境界」を保護 → データの「フロー」を保護。きちんと守りながら共有し、多様なデバイスでどこからでも働く
新旧の働き方を展望したビフォー・アフター。
出典:Box Japan
「私たちの未来の機会というのは、古い技術を新しい環境の中で復元することではありません。抜本的なオペレーションのあり方を刷新するということです。どのように共有し、コラボレーションし、さらにビジネスをどう変革するか考えるべきときです」(レヴィ氏)
IT技術の役割は「カジュアルITからシリアスITに」
Box Japan代表の古市克典氏。
出典:オンライン記者説明会から筆者キャプチャー
続いて、Box Japan代表の古市克典氏は「ITの質が変わろうとしている」とし、これまでどちらかといえば個人の生活を向上する「カジュアルIT」中心だったものが、社会基盤を支える「シリアスIT」(自動運転、遠隔医療などに代表される)に変わってくる、とした。
失敗しても良い、便利だからやってみよう(カジュアル)という存在から、失敗が許されないもの(シリアス)に変わってくるという見方のなかで、社会におけるIT技術の立ち位置が変化していく節目にある、と見る。
ワークフローの自動化を安全に行う機能「Box Relay」を使って、契約業務をオンラインで完結させるような導入企業も出てきている、と古市氏。
出典:オンライン記者説明会から筆者キャプチャー
この点でBoxはこれまでも、セキュリティーを重視するシリアスITの提供に注力してきた、と古市氏。
継続的な機能のブラッシュアップに加えて、テレワークでの契約業務の効率化の手段の1つとして、ワークフローの自動化を安全に行う機能「Box Relay」の注目が高まっている。
「リモートワーク(の増加)でBox Relayの需要が一気に増えました」(古市氏)
これまで判子で決裁されていた作業をやめて、Relayの電子的な履歴でチェック済みか確認し、承認も電子的に完結させるという使い方が増えている、と語った。
(文・伊藤有)