アップルを世界屈指の企業へと押し上げたスティーブ・ジョブズ。FNDRのビンセントCEOはジョブズから多くを学んだ。
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- コンサルティング会社のFNDRは、アップルやAirbnbなど、大手テック企業の創業者らとビジネスをした経験を持つ。その経験を通じて学んだアプローチをもとに、スナップチャット(Snapchat)やバイス・メディア(Vice Media)、グロッシアー(Glossier)といったクライアントを獲得してきた。
- FNDRのジェームズ・ビンセントCEOは、アップルのスティーブ・ジョブズやジョナサン・アイブから「アイデアとは脆いものであり、少人数で細心の注意を払って練っていかなければならない」と学んだと話す。
- FNDRの最高クリエイティブ責任者(CCO)であるスティーブン・バトラーは、Airbnbのブライアン・チェスキーから学んだ。チェスキーは同社の難局に際し、自社のユーザー全員をコミュニティの一員として扱い、創業に込めた想い繰り返し語っていたという。
コンサルティング会社のFNDRは、ベンチャーキャピタル(VC)やテック業界での人脈を活かし、スナップチャット(Snapchat)やバイス・メディア(Vice Media)、グロッシアー(Glossier)といった企業をクライアントとして獲得してきた。
しかしファウンダーの成長にとって本当の意味でカギになったのは、同社の共同経営者らがかつて広告代理店に勤務していた頃、いまや屈指のテック企業となったクライアントから学んだ経験にあるとCEOのジェームズ・ビンセントは話す。
FNDRのクライアントであり、ロンドンを拠点にするVC、フェリックス・キャピタルの創設者であるフレデリック・コートは、「デジタル領域におけるFNDRの豊富な経験は、アップルとの仕事で培われたものだ」と話す。
そこで本稿では、FNDRがスティーブ・ジョブズなど才気あふれる人たちから何を学んだかを紹介しよう。
ジョブズとアイブは少数精鋭にこだわった
アップルの元最高デザイン責任者、ジョナサン・アイブ。彼の仕事の仕方にアップル成功の鍵があったとビンセントは見ている。
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アップルの元最高デザイン責任者ジョナサン・アイブはかつて、iPhoneやApp Storeのような大掛かりなアイデアはそもそも脆いものなので、少人数に絞ったメンバーで細心の注意を払って取り組めるかどうかが成否の鍵を握ると語った。
アイブのこうした考え方がアップル成功の秘訣だとビンセントは言う。彼は広告代理店グループのオムニコム在職時代に10年以上アップルを担当し、注目を集めた同社の広告キャンペーンをいくつも手掛けた。
またスティーブ・ジョブズは、コンセプトを商品化するにあたり、高度に構造化されたやり方で、信頼のおける小規模のチームを何週間もひとつのアイデアに集中的に取り組ませたという。
ビンセントは言う。「大いなる飛躍とはこうやって成し遂げられるものです。誰もが『いい会議だった』と口にするくせに一向に成果が見えない、長時間の会議ではなくてね」
ビンセントは自身が創業したFNDRにもこの手法を持ち込んだ。同社の打ち合わせはごく短く、参加者は5人まで。また、クライアント企業の創設者1人ひとりに対し、自社のあるべき姿を明確に描くよう働きかける。
Airbnbの難局でチェスキーが語ったこと
Airbnbの苦境時、CEOのブライアン・チェスキーが周囲に語り続けていたこととは。
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「ジェームズはスティーブ・ジョブズと仕事をした経験から、礼儀正しくふるまうべき時と、『理解できません、もう一度説明してください』と言うべき時があることを学んだんだ」。そう語るのは、FNDRのCCOスティーブン・バトラーだ。バトラーは広告代理店TBWA\Chiat\Day在職時にAirbnbを担当していた。
以前、サンフランシスコ市が短期滞在者用の賃貸物件に規制を課し、Airbnbのリスティング物件を実質的にホテルに分類する条例案を出したことがあった。この案は結局否決されたが、こうした苦境に直面してもAirbnbのブライアン・チェスキーCEOは冷静さを失うことなく、同社設立に込めた想いを繰り返し説いていた、とバトラーは振り返る。
Airbnbはコミュニティ——チェスキーは心からそう信じており、その信念は同社の最初のキャッチフレーズ「どこでも居場所がある」にも表れていた、とバトラーは言う。
ビンセントとバトラーは、こうした創設者たちとの経験を自分たちのクライアントにも生かそうと考えている。ジョブズやチェスキーがそうしたように、クライアントの事業の背景にある重要なストーリーを引き出すのだ。
例えばスナップチャットの案件では、FNDRはこのプラットフォームの「人々が友達とつながれる場所」という部分に着目した。バイス・メディアは、女性従業員への不当な扱いが報じられた後、ナンシー・デュバックをCEOに任命し、その後FNDRを迎え入れた。この動きについてビンセントは「立て直し」だと表現し、企業体質を正す狙いがあるとしている。
(翻訳・松丸さとみ、編集・常盤亜由子)