アップルは次世代モバイルOS「iOS 14」と「iPadOS 14」について公開した。
出典:アップル
アップルは6月23日(日本時間)、開発者向けイベント「WWDC 2020」を初めてウェブのみのイベントとして実施。次期iPhone向けOSである「iOS 14」およびiPad向けの「iPadOS 14」の詳細について公開した。
なお、両OSともにパブリックベータ版の公開は7月、一般向けの公開は2020年秋頃の予定。現状でアップデート対象となる機種は以下のとおり。
- iOS 14:2015年9月発表のiPhone 6s以降のモデルおよび第7世代iPod touch(2019年5月発売)
- iPadOS 14:すべての世代のiPad Pro、2017年3月発表の第5世代iPad以降、2015年9月発表のiPad mini 4以降、2014年10月発表のiPad Air 2以降のモデル
1. ついにホーム画面上のウィジェット表示が解禁
ホーム画面にウィジェットが追加できるようになる。
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ユーザーとしてiOS 14で最も変化を感じる点は、なんといってもホーム画面だ。iPhoneのホーム画面にもついにウィジェットの自由配置が可能になる。
厳密に言えば、現行のバージョンでもホーム画面のトップを開いた状態で右に向かってスワイプすれば「今日の表示」画面で各種アプリのウィジェットを表示できた。だが、ホーム画面そのものにウィジェットを追加することはできなかった。
時間帯に応じて自動で内容が変わるウィジェット機能「スマートスタック」。
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iOS 14ではそれが可能になる。WWDC 2020の基調講演ではプリインストールされているアップル純正アプリのウィジェットが例として紹介されていたが、いずれもまったく新しいデザインが確認された。
また、日中は予定確認用のカレンダー、夜はその日の活動量を確認できるアクティビティーといったように、時間帯などに合わせたウィジェット自動切り替え機能「スマートスタック」も用意されている。
2. アプリの自動整理画面が追加
自動でアプリをカテゴリーごとにまとめる「App Library」。
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ホーム画面の進化はウィジェットだけではない。新搭載の「App Library」によって、自動でアプリが分類され、カテゴリーごとの大きなフォルダーにまとめたような表示になる。
App Library画面はホーム画面の最終ページという扱いになるため、「ホーム画面の枚数が多い」と感じている人は、2ページ目以降の任意のホーム画面を非表示化することで、より瞬時にApp Library画面を表示できる。
いままでのホーム画面や前述のウィジェットといった機能はどちらかと言えば“こだわり派”の人に好まれる印象があるが、App Libraryは逆に自動で整理整頓して欲しいと考える人に最適な機能だ。
3. Siriは全画面表示から控えめな表示に
Siriは起動時に全画面表示にならなくなった。
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アップルのスマートアシスタント・Siriの演出にも手が加えられた。今まではウェイクワードなどで起動させると画面全体にぼかしがかかり、Siriの発言内容やサジェストが見られる仕様だった。
iOS 14/iPadOS 14からは、全画面での遷移はなくなり、Siriの起動後は丸いSiriのアイコンが画面下部に表示、実行結果なども通知のように画面上から出てくる仕様に変更された。これによりSiriを呼び出す直前の作業を失念するようなことがなくなった。
また、Siriは起動時に表示中のコンテンツを読めるのもメリットだ。例えば、ある料理のレシピサイトをSafariで開いた状態でSiriに食料品リストへの追加を求めれば、そのレシピに書いてある品物をリマインダーリストに追加できる……といった使い方が想定されている。
4. アプリ操作中の通話も邪魔じゃなくなる
ほかのアプリを起動している際の通話通知も控えめに。
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控えめになったのはSiriだけではない。通話通知もかなり控えめなお知らせに変更された。従来であれば、iPhoneで音声電話、iPadでもSkypeやLINEといったVoIPアプリで着信すると画面全体に通話画面が表示されていた。
これがiOS 14/iPadOS 14では、ほかの通知と同じように画面上から小さなバナーのように出現し、相手の名前やアイコン、会話の終了・開始のボタンが表示される。これにより、Siriと同じく着信状態になってもその時に行っている作業が中断されることは少なくなる。
5. 日本語対応のアップル純正「翻訳アプリ」が登場
アップルの翻訳アプリは11言語に対応している。
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日本語を含む11言語に対応するアップル純正の翻訳アプリも登場した。端末を横にすると切り替わる「Conversation mode」には、集音開始をするマイクボタンが1つしかなく、アプリは自動的に話しかけられた言語が何か判断し、事前に指定している言語に翻訳する。
また、「On‑device mode」もサポートしており、事前に言語データをインストールしておけば、オフラインでも(インターネットへの接続不要で)翻訳が行える。
6. アップル版ミニアプリ「App Clip」
さまざまな方法でアプリを“インスタント使用”できるApp Clip。
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消費者としては便利で、またビジネス的な広がりを見せそうな新機能が「App Clip」だ。App Clipはアプリをインストールすることなく、限定した機能を瞬時に実行する仕組み。
アップルのデモでは駐車場やカフェ、キックボードなどのライドシェア利用時に、NFCによるタッチもしくはアップル独自の2次元コードを現実世界で読み取り、その場所に応じたアプリを実行する様子が示された。ほかにも、Safariで表示したウェブページ、マップアプリからの起動などにも対応している。
App Clip上でもApple Payなどが利用できる。
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加えて、App Clip上ではApple Payのアプリ内決済やサービスログインが簡単にできる「Sign in with Apple」をサポートしているため、前述の例で言えば、駐車代金などの支払い、ライドシェアサービスへの簡易登録といったことが可能になる。
また、App Clip実行後にフル機能を持ったアプリのインストールを促すこともできるため、サービスの会員獲得も効率化も期待できる。
7. iPadでは手書き入力機能を強化
iPadのテキストフィールド上に直接文字が書き込めるScribble。例えば、英語と中国語など言語が混ざってしまってもOK。
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iPadOS 14限定機能にはなるが、Apple Pencilに関わる機能強化も行われる。
とくに「Scribble(走り書き)」機能は、Apple Pencilでの手書き文字入力を実現するものだ。既に一部メーカーのAndroidタブレットやiPadOSでも一部アプリ内で手描き文字入力は実現されているが、Scribbleを有効にすれば、任意のテキストボックスにそのままApple Pencilで文字を書き込むだけで自動でテキストに変換される。
今までは何かを描くためにApple Pencilを使い、テキストを入力するためにはバーチャルキーボードや外付けキーボードを使う…といった作業の中断が発生していたが、それが解消される。
ただし、どのぐらい正確に平仮名や漢字を認識できるかは未知数だ。
8. 財布の次は、iPhoneが車のカギになる
対応する車のカギをiPhoneで開けられるようになる。
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iPhoneのウォレットアプリには既にポイントカードやクレジットカードなど、まさにウォレット(財布)と言えるような情報が保存されているが、iOS 14ではそこに“車のカギ”が追加される。
基調講演でのデモでは、iPhoneのNFC機能を使いタッチで車を解錠。その後、車内のワイヤレス充電台にiPhoneを置き、車のエンジンをかけるとそのまま車載システムと連携する「CarPlay」がシームレスに起動する様子が紹介された。
デジタルキーになることで、家族などへの共有、利用制限などが柔軟に行える。
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また、デジタルキーはApple Payなどと同じくiCloud経由で無効化したり、iMessageでカギのデータを家族に送り、一時的に車をシェアするのに使うといったことも可能。
対応する車は2021年製のBMW 5シリーズからで、iOS 14だけではなく13でも利用可能になる見通し。加えて、2019年発売のiPhone 11/11 Pro/11 Pro Maxに搭載された超高域帯無線チップ「U1」を活用することで、タッチレス解錠の実現も予定されている。
9. カメラ・マイクの利用状態がわかりやすく
カメラやマイクを利用している際には、このような“お知らせ”が出る。
出典:アップル
アップルは自社製品におけるプライバシー情報の厳しい管理徹底をうたっている。
その一環としてiOS 14/iPadOS 14ではアプリがカメラやマイクを使用している際、画面右上付近にオレンジ色のドットが表示されるようになる。
これによりユーザーの意図しない状態で、アプリやサービスがユーザーのプライバシー情報を取得することを防げる。また、コントロールセンター画面では、直近でどんなアプリがカメラやマイクを利用したかわかるようになる。
10. アプリのインストール前にプライバシーポリシーが確認可能に
App Storeでインストール前に、プライバシーポリシーを確認できる。
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また、アプリを導入する前にもそのアプリの安全性や信頼度を確かめる手段を充実させる。iOS 14/iPadOS 14以降ではApp Storeでトラッキング(追跡)に使われるデータの種類やどんなデータが取得されるかが、わかりやすいアイコンとテキストで確認できるようになる。
11. Safariもプライバシー保護機能をより強化
Safariに新しく搭載される「Privacy Report」。
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標準ブラウザーである「Safari」もプライバシーに関する大幅なアップデートが加えられた。
新機能の「Privacy Report」では、ユーザーがアクセスしたサイトのうちトラッキング技術を利用しているページの割合などが表示できる。加えて、Safariに保存されているウェブサービスのパスワードが、他のサービスで漏れてしまった場合警告をする機能も搭載される。
また、ベータ版にはなるが前述の翻訳機能をSafariに内蔵するため、7つの言語を対象としたウェブページの翻訳も可能になる。
12. メッセージは痒いところに手が届くように
より機能が増えたメッセージアプリ。
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プリインストールアプリもいくつか大幅なアップデートが行われている。そのうちの1つのメッセージアプリでは、重要な相手との会話を画面上部に固定する“ピン留め”機能、「MeMoji」のカスタム性の拡充、グループ会話時のスレッド作成やメンション機能の追加が行われた。
13. マップは自転車や電気自動車のルート案内に対応
アップルのマップアプリも機能強化。
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純正の「マップ」アプリでは、自転車や電気自動車に最適なルートの提案が可能になる。自転車向けのルートでは高低差や階段の有無などを調節可能。電気自動車向けのルート案内では途中に充電スタンドを経由したり、バッテリー残量を意識したルート提案が行われる。
なお、自転車向けルート案内は開始当初、ニューヨークやロサンゼルス、サンフランシスコのベイエリア、上海、北京でのローンチとなる。日本は含まれていないが、対象地域は順次拡大していく方針だ。
14. スマート家電操作の「ホーム」アプリは自動化機能を強化
よく使うスマート家電のルーティンは、iPhoneが提案してくれる。
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宅内のスマート家電を操る「ホーム」アプリもアップデート。家の中の温度や家電やシステムの状態がひと目でわかるようになる。
そのほかにも、よく使う家電の操作を行うと自動化の提案を行ったり、照明器具を時間帯に合わせて自動で色温度などを変える「Adaptive Lighting」機能を搭載するなど、ユーザー主体の操作からより自動操作に特化した機能強化が行われる。
(文・小林優多郎)