地方企業が募集する副業求人の募集が、コロナショック後に増加している。
撮影:今村拓馬
地方の企業による、副業の求人数が増えている。
SNSによる転職マッチングサービスWantedly(ウォンテッドリー)は6月25日、新型コロナウイルスの求人への影響に関する調査結果を発表した。
調査では東京・神奈川・埼玉・千葉以外を「地方企業」と定義。このうち「副業」というキーワードを含んだ地方企業の求人は、2020年1月と比べ、5月に3.9倍に急増した。
具体的には、北海道、福岡、名古屋などのITベンチャー企業によるエンジニアやWEBディレクターなどの募集が多いという。
企業と求職者のニーズが一致
コロナショック後に、副業関連の募集が急増した。
提供:Wantedly
「もともと地方の企業にとって、高い能力を持っている首都圏の人材獲得ニーズは高かったのですが、コロナで応募する側の意識も変わりました。
特に若い世代では、密集が避けられない都会を敬遠したり、フルリモートでの仕事や副業を希望したりする人も増えています。
コロナによって、お互いのニーズが合致し、企業側も採用に本腰を入れ始めています」
Wantedly広報担当・奈良英史氏はそう話す。
副業の募集職種としてはエンジニアが多いものの、ウェブマーケティング企業の採用スタッフ(北海道)、アプリ事業会社の営業(福岡)、AIシステム販売企業のプロジェクトマネージャー(愛知)など、募集職種は多岐にわたる。
地方企業の副業求人へのエントリー数も、1月と比べ5月は約2倍に増加しており、副業への関心が高まっている。
「地方に貢献してみたいと考える人も増えています。フルリモートの副業募集も多く、移住せずに挑戦できる副業が注目されているのだと思います」(奈良氏)
週10件の応募が、1日10件に急増
Wantedlyに掲載されているBULBのページを撮影。エンジニアを中心に募集を続けている。
撮影:横山耕太郎
「コロナ前までは週に10件ほどの応募だったのが、6月は1日に10件の応募が来ることもある。3月以降に約10人採用が決まりましたが、全員副業としての採用で、鎌倉や大阪、福岡など全国から働いてもらっています」
札幌市にオフィスを置くベンチャー企業、BULB(バルブ)の阿部友暁社長(39)はそう話す。
同社は新規事業の立ち上げを支援しており、従業員は約30人。全員がリモート体制で勤務し、半数は兼業や副業の形で関わっているという。
札幌にオフィスを構えてはいるが、出社義務はない。2020年5月までは顧客対応のため、都内でシェアオフィス(WeWork)を借りていたが、5月に解約したという。
「週2~3日だけうちで働いたり、フルタイムで働きながら別の会社と兼業したり、それぞれが自由なスタイルで働いています」
エンジニア採用「潮目が変わった」
撮影:今村拓馬
BULBでは、2015年頃からWantedlyへの掲載を行っていたが、新型コロナの影響が広まった4月以降には、特に応募が急増したという。
「都内の観光や飲食関連企業でシステム関係の仕事をしていて、失職して応募してきたエンジニアもいます。現状では、そういった方々の受け皿にもなっていると感じます」
応募者が増加したことで、優秀な人材を獲得しやすくなっているといい、採用の面では追い風の状態が続いているという。
「日本のカルチャーと言うか、潮目が変わったと感じます。これまではリモートワークや副業は難しいと考えていた人も、周りに説明しやすくなった。
採用の面ではアクセルを踏んでいる状態です。これからは経営層やリーダー経験者など、より上流工程の仕事をしていた人材も獲得していきたいと思います」
コロナショックは、これまでの働き方や、働く場所を、あらためて見つめ直す機会にもなっている。
これまで当然だった「都心のオフィスへの通勤」。それだけではない働き方への注目は、今後も高まりそうだ。