新疆ウイグル自治区の達坂城区にある収容施設。フェンスで囲われている。
Reuters
- 中国当局は少数民族ウイグル族の女性たちを強制的に避妊させたり、妊娠中絶を行っていることが、AP通信の取材で分かった。
- 中国政府がウイグル族の人々の文化や民族性を消し去ろうとする中、2016年以降、少なくとも100万人のウイグル族の人々が収容施設に送り込まれている。
- AP通信は、ウイグル族の女性たちが定期的に妊娠検査を受けさせられ、妊娠が分かると強制的に中絶させられると報じている。
- また、子宮内避妊用具(IUD)を装着させられるなど、避妊を強いられるケースもあるとAP通信は報じた。
- こうした措置は「数十万人」のウイグル族の女性たちに影響を及ぼしていると、AP通信は伝えた。
中国では、ウイグル族の女性たちを迫害するため、当局が強制的な中絶、避妊、産児制限といった戦術を用いているようだ。
AP通信が元拘留者やその家族、収容施設の元教官ら30人の証言と政府の統計や当局の文書をもとに6月29日に報じた。
2016年以降、中国は少なくとも100万人のウイグル族の人々を500以上の収容施設 —— 婉曲的に「再教育施設」または「職業訓練・教育施設」などと呼ばれている —— に抑留してきた。実際はウイグル族の人々を思想改造し、その伝統や信仰を捨てさせるための強制収容施設だ。
AP通信によると、収容施設や新疆ウイグル自治区では次の措置によって、出産を厳しく制限しているという。
- 定期的に女性に妊娠検査を受けさせる
- 検査で妊娠が分かった女性は強制的に中絶させる
- 女性に子宮内避妊用具(IUD)の装着を強いる
- それが何であるかを伝えずに、女性に避妊薬を飲ませたり注射する
強制的な中絶や避妊に関する報道は過去にもあったが、AP通信の今回の報道は、強制的な産児制限がこれまで考えられていた以上に広まっていることを示している。こうした措置は「数十万人」のウイグル族の女性たちに影響を及ぼしていると、AP通信は伝えた。
また、ウイグル族の人々が収容施設に送られる主な理由の1つが、"子どもの数が多すぎる"ことだとも報じている。
政府は、ある中国生まれのカザフ族の女性に対し、3人目の子どもが生まれた後、IUDを装着するよう命じたとAP通信は報じた。その後、女性は2人以上の子どもを持ったことを理由に罰金2685ドル(約28万9000円)を払うよう言われたという。
AP通信は、子どもの数が多すぎるとして収容施設に入れられた人を知っているという15人のウイグル族やカザフ族の人々から話を聞いたとしている。
ハーグにある中国大使館の前で抗議の声を上げる人権NGO(3月5日、オランダ)。
Pierre Crom/Getty Images
加えて、複数の元拘留者が「女性たちは強制的にIUDを装着させられたり、避妊薬と思われる注射を打たれていた」と話しているという。
「多くの女性たちがめまいや倦怠感、体調不良を感じ、生理が止まった」とAP通信は報じた。「(収容施設から)解放され、中国を出た後に受けた健康診断で不妊になっていることが分かった人もいる」という。
2016年から2018年で、新疆ウイグル自治区で不妊の人の数は7倍になったとAP通信は報じた。
こうした措置が大きな原因となって、新疆ウイグル自治区の出生率は近年、大幅に下がっている —— 2019年には24%近く低下したという。
12月、香港ではウイグル族の人々を支援する集会が開かれた。
REUTERS/Lucy Nicholson
「3人以上の子を持つ親たち」は「高額な罰金を支払えない限り、家族から引き離される」とAP通信は伝えている。「警察が自宅を捜索し、子どもを隠していないか調べて、親たちを怖がらせている」という。
"ウイグル族の文化を消し去る"というミッション
中国政府は、非漢民族の文化を消し去ろうとしている。Business Insider Japanでも報じたように、政府は「ウイグル族の人々を全員テロリストと見なし」て、しばしば宗教的な過激思想を理由に弾圧してきた。
政府は、ウイグル族の人々の携帯電話にスパイウェアをインストールしたり、ファイル共有アプリを通じて個人を特定したり、新疆ウイグル自治区のいたる所に何十万台もの顔認証カメラを設置するなど、テクノロジーを駆使してウイグル族の人々を監視している。
新疆ウイグル自治区にある家の壁に掲げられたQRコードをスキャンする中国の政府職員。これで住民の個人情報にアクセスできるという。
Xinjiang state radio via Human Rights Watch
他にも、ウイグル族の人々は、自宅を伝統的な中国風の見た目に模様替えするよう強制されたり、収容施設では食べ物を手に入れるためにプロパガンダの歌を歌わされるなどしている。
収容施設に拘留されている人たちは、医学的な実験の対象にもされている。中国はウイグル族の一部から臓器をとっていると非難されている。ただ、中国はこれを否定している。
中国のウイグル族の人々の扱いは先週、アメリカの元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)ジョン・ボルトン氏がその暴露本の中で、トランプ大統領が習近平国家主席に「収容施設の建設を進めるべき」と語り、「まさに正しいことだ」と思うと伝えたと書いたことで、改めて大きな注目を集めた。
ボルトン氏の暴露本に関する報道が出た直後、トランプ大統領は中国によるウイグル族への弾圧に制裁を科す法案に署名した。
(翻訳、編集:山口佳美)