【女性初】NASAの有人宇宙飛行責任者に就任したキャシー・リーダース…「女性の代表と見られることは光栄」

キャシー・リーダース

ケネディ宇宙センターでの会見に臨むNASAのキャシー・リーダース。2020年5月30日、スペースXの有人飛行ミッションの打ち上げ後に。

Kim Shiflett/NASA

  • アメリカ航空宇宙局(NASA)は6月12日、キャシー・リーダースを有人宇宙飛行部門の責任者に任命した。リーダースは、スペースXが民間企業として史上初の有人宇宙飛行を実現させたプログラムの指揮にあたった技術者だ。
  • リーダースは女性として初めて、この部門のトップを務める。今後は宇宙飛行士を宇宙に送り込む、あるいは宇宙から帰還させるNASAの全プロジェクトを統括する。
  • リーダースはこれまで、国際宇宙ステーション(ISS)関連の業務に従事し、NASAとスペースXやボーイングとの共同事業で中心的な役割を担ってきた。こうした実績から見ても、有人宇宙飛行の新時代の課題に取り組むのに適した人物と言える。

アメリカ航空宇宙局(NASA)は6月12日、有人宇宙飛行部門の責任者にキャシー・リーダース(Kathy Lueders)を任命した。リーダースは、先ごろ史上初の民間企業による有人宇宙飛行を実現させたプログラムの指揮にあたった女性技術者だ。

彼女は今後、アメリカにおける有人宇宙飛行再開に向けたNASAの取り組みを統括する。そのプログラムの1つに、アルテミス(Artemis)計画がある。アポロ計画の後継として、再び人類を月に送り、将来的には月面基地の建設を目指す計画だ。

NASAのジム・ブライデンスタイン(Jim Bridenstine)長官は、今回の人事に関する電話会見で、「我々は多くのNASA職員に意見を聞き、この役職に適任と思われる人物を推薦するよう依頼した。すると、キャシー・リーダースの名前が繰り返し挙げられた」と述べた。

「彼女はNASAの中で並外れた尊敬を集める人物だ」

リーダースは2014年以降、NASAの「商業クルー輸送計画(Commercial Crew Program)」を率いてきた。これは、約80億ドル(約8650奥円)の予算規模を持つ計画で、スペースX(Space X)およびボーイング(Boeing)が、民間企業の所有・運営による宇宙船を開発する契機となった。この計画は、2011年のスペースシャトル計画終了とともにアメリカが失っていた、有人宇宙飛行の遂行能力を取り戻すことを目的としていた。

この計画は5月30日、最初の成果を挙げた。この日スペースXが、同社の宇宙船クルードラゴン(Crew Dragon)に宇宙飛行士を乗せ、打ち上げに成功したのだ。

Demo2と呼ばれるこのミッションは、NASAの宇宙飛行士、ボブ・ベーンケン(Bob Behnken)とダグ・ハーレー(Doug Hurley)の2名を、国際宇宙ステーション(ISS)に無事送り込んだ。

この打ち上げの1週間前には、スペースXのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が「私はキャシー・リーダースの大ファンだ!」とツイートしていた

スペースX「Demo-2」ミッション打ち上げ

スペースX「Demo-2」ミッション打ち上げの様子。NASAの宇宙飛行士、ボブ・ベーンケンとダグ・ハーレーの2名を乗せた有人宇宙船クルードラゴンは5月30日、「ファルコン9」ロケットで宇宙へと旅立った。

Tony Gray and Tim Powers/NASA

リーダース氏は、5月の就任からわずか6カ月で辞任したダグ・ロヴェロ(Doug Loverro)の後任となる。ロヴェロは、辞任の理由について、リスクテイキングに関する「誤り」を犯したためと述べているが、それ以上の詳細を明かしていない。だが、ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、彼は月面着陸機の開発を請け負う企業の選定でボーイングを不当に後押ししたとの嫌疑をかけられ、調査を受けたという。

リーダースは、NASAの有人宇宙飛行部門を率いる初の女性となったが、彼女自身は当初、この事実に気づいていなかったという。

キャシー・ルーダース

2020年1月19日、フロリダ州にあるNASAのケネディ宇宙センターで、スペースXによる飛行中脱出試験の終了後に行われた記者会見に臨むキャシー・リーダース。

NASA/Kim Shiflett

「ジム(・ブライデンスタイン長官)から、この役職を引き受けるつもりはあるかと打診された時、そのことは頭になかった」と、リーダースは記者会見で語った。

「むしろ、私が今後担うことになる任務の大きさに圧倒される思いだった。その点については、夫と話している時に指摘されて気づいたというのが本当のところだ」

リーダース氏はさらに、今後自らが直面する、複数の実務的な課題に言及した。こうした課題には、新型コロナウイルスのパンデミックにより、NASAが一部の施設を閉鎖し、従業員や請負業者を立ち入り禁止にする中で、タイトなスケジュールをいかに遂行するか、という問題も含まれている。

これは、男女2人の宇宙飛行士を月面に送り込むという壮大な計画を達成する上で、カギとなる課題だ。男性はアポロ計画ですでに月面を訪れているが、この計画が達成されれば、女性にとっては史上初の月面到達となる。

ブライデンスタイン長官は、記者会見の席上、「これは、アメリカでも最も難易度が高い仕事の1つに違いない。しかし、最もやりがいがある仕事でもある」と述べ、でリーダースを激励した。

「理想の仕事」に就くまでの歩み

実はリーダースは、当初から宇宙飛行に関わりたいという志を抱いていたわけではない。在学していたニューメキシコ大学で当初取得したのは、経営学の学士号だった。

「私はウォール街で働きたいと考えていたが、大学4年生の時に、ルームメイトが専攻していた工学に専攻を変えた」と、リーダースは2017年に行われたヴォーグのインタビューで、当時を振り返っている。

その後、結婚と出産を経て、リーダースは工学を学ぶために復学し、生産工学の分野で2つの学位を取得した。この学位も後押しになり、1992年にNASAで職を得る。最初の仕事は、ニューメキシコ州にあるホワイトサンズ試験場の推進技術者だった。

「この推進研究所で働く女性は、私で2人目だった。最初の女性は、たしか1週間ほどで辞めてしまったはずだ」と、リーダースはヴォーグに語っている。

この試験場で、彼女はスペースシャトル計画に携わり、宇宙飛行士をISSに運ぶ軌道操作および制御システムの調整を担当した。貨物補給ミッションを率いたほか、ISSにやってくるEU、日本、ロシアの宇宙船へのNASAによる監督業務を担った。

スペースシャトルの退役後、アメリカは、ISSとの人員や物資のやりとりに関して、ロシアの宇宙船打ち上げシステムへの依存度を高めていたが、その費用は高かった。そのためNASAは、商業クルー輸送計画を通して、ロシアとは別の、自前の輸送システムの開発を目指すことになった。

キャシー・リーダースと、スペースXの製造・飛行品質保証担当バイスプレジデントのハンス・ケーニヒスマン(右)。2020年5月31日、フロリダ州にあるNASAケネディ宇宙センターからスペースXのクルードラゴンが国際宇宙センターにドッキングする様子を見守っている。

キャシー・リーダースと、スペースXの製造・飛行品質保証担当バイスプレジデントのハンス・ケーニヒスマン(右)。2020年5月31日、フロリダ州にあるNASAケネディ宇宙センターからスペースXのクルードラゴンが国際宇宙センターにドッキングする様子を見守っている。

NASA/Joel Kowsky

リーダースは2013年、フロリダ州にあるNASAケネディ宇宙センターで、輸送システム開発計画の副責任者に就任した。さらに翌2014年には、この計画のトップに任命された。

「技術者というものは、設計と開発、そしてすばらしいプロジェクトとハードワークが大好きだ」と、リーダースはヴォーグに語っている。

「そしてうれしいことに、この職場にはそうした要素がすべてそろっている。まるで、お菓子屋さんで働くような、理想の仕事だ」

彼女が挑むのは「有人月面着陸」

スペースXによる有人宇宙船の打ち上げ成功は、民間宇宙飛行の新時代の幕開けを告げる節目となったが、それだけではない。これによりNASAは、宇宙飛行士を再び月に送り込むという野心的な計画の実現に一歩近づいた。実現すれば、実に50年以上の時を経た有人月面着陸の復活となる。

リーダースは今後、商業クルー輸送計画と、この計画でボーイングとスペースXが開発した有人飛行が可能な宇宙船を用いて、2024年の末までにNASAの宇宙飛行士を月に再び送り込むという目標の達成を目指す。

ただし、これは最初のステップにすぎない。アルテミス計画の最終的な目標は、恒久的な月面基地の建設だ。その基地は、ISSと同様に、宇宙飛行士が居住し、科学研究を行う空間になる。NASAとスペースXのイーロン・マスクは、この月面基地を足がかりとして、さらに火星への有人飛行を行いたいと考えている。

スペースXの宇宙船、クルードラゴンがISSへのドッキングに成功し、喜びの表情を見せるキャシー・リーダース。2020年5月31日撮影。

スペースXの宇宙船、クルードラゴンがISSへのドッキングに成功し、喜びの表情を見せるキャシー・リーダース。2020年5月31日撮影。

Joel Kowsky/NASA

リーダースには、大仕事が待ち受けているが、彼女の昇進自体が、NASAにとっては画期的な一歩と言える。

「ここ数日、私にとってすばらしい驚きだったのは、ツイッターやスナップチャット、インスタグラムなどの投稿を通じて、世界各国の女性から送られてきた多くのメッセージを目にしたことだった」とリーダースは述べている。

「そうしたメッセージを見ることで、私が女性初の役職に就任したことの影響力を改めて実感することができた。彼女たちにとってその意味は大きいし、彼女たちは私を女性の代表と見てくれている。それをとても光栄に感じる。私は彼女たちのためにも大きなことを成し遂げようと思っているし、彼女たちにも大いに期待している。さあ、さっそく仕事を始めよう」


[原文:Meet NASA's first female head of human spaceflight, who oversaw SpaceX's astronaut launch and will lead the US return to the moon

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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