Jリーグ再開、無観客試合を盛り上げるテクノロジーに注目。スマホ画面連打で届いた声援に選手も胸アツ

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リモート応援システムのイメージ図。

提供:ヤマハ

新型コロナウイルスによる中断から約4カ月、Jリーグがついに公式戦を再開した。6月27・28日に、J2(2部リーグ)が第2節、J3(3部リーグ)が開幕戦を行った。

公式戦再開にあたって、感染防止など安全対策に慎重を期するため、まずは「リモートマッチ」と呼ばれる、観客をスタジアムに入れない形での試合となった。

各チームとも、どうすればリモートマッチを、スタジアムで応援できないファンやサポーターたちと一緒に盛り上げられるのか、楽しめるのか、多様な工夫を試みた。

例えば、サポーターの顔写真パネルを有料で試合会場の客席に置いたチームがいくつかあった。また、応援の音声データをチームに送り、試合中に流したところもあった。

導入が多かった「リモート応援システム」

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リモート応援システムは上のような画面になっており、ボタンを押すことで試合会場に「応援」「声援」「拍手」が届けられる。

スマホ画面よりキャプチャ

今回の公式戦再開で導入が多かったのが「リモート応援システム」だ。

試合自体はテレビ放送やインターネット動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」で観戦しながら、自分の応援するチームに対し、スマホのブラウザあるいはアプリ画面上にある「歓声」「拍手」「激励」などのボタンを押すと、試合会場のスタジアムのスピーカーから、それぞれ押したボタンに応じた音声が流れる。仕組みはとてもシンプルだ。

サポーター不在で味気ないスタジアムの雰囲気を少しでも盛り上げるという点で、非常に面白い取り組みと感じた。

6月27・28日の試合では約半数がこのシステムを導入。録音されたものとはいえ、サポーターの声援や拍手がスタジアムのフィールド上の選手たち、さらにはテレビやスマホを通じて観戦者たちにも届いていた。

ただし、問題がなかったわけではない。スタジアムから流れる音声はチームごとにまちまちで、あまり響いていなかった音が突然大きくなったり、無音状態から突然大音量で声援が流れたり、システムを運用する側がまだ慣れていない様子が散見された。

東京ヴェルディの井上潮音選手は、6月27日の町田ゼルビアとの試合後、リモート応援システムについて、こう感想を語っている。

「大きい音量だったんで、フィールド上でもよく聞こえました。サポーターがいるような感覚で試合させてもらった。直接生の声ではなかったですが、自分たちの背中を押してくれてるなと感じました。(音声が流れたり流れなかったりしたが)要所で流してくれてたんで、特に気にはならなかった」

このシステムは、ヤマハが開発した『Remote Cheerer powered by SoundUD(リモートチアラー・パワード・バイ・サウンドユーディー)を活用している。新型コロナウイルスの感染拡大に直接関係なく、2年前から開発を進めてきたものだ。

遠隔地にいる人、また病気や寝たきりの人、仕事で忙しくて現場にいけない人など、何らかの事情でスポーツの試合や音楽イベントの現場に行けない人たちが、ライブ会場にいる人たちと同じように楽しめるよう作られた。

当初は2020年秋を目処にローンチする予定だったが、コロナ危機を受けて前倒しで開発。実証実験という形で、Jリーグやプロ野球の千葉ロッテマリーンズで活用している。

6月13日にジュビロ磐田の練習試合をネット生配信するのに合わせ、このシステムの公開実証実験を初めて行ったところ、大好評だった。その後、反響が国内外からあり、「海外ですと、ヨーロッパのサッカーチームやクリケットのチーム、競馬団体からも問い合わせがありました」(ヤマハの担当者)という。

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リモート応援システムは、6月13日のジュビロ磐田とアスルクラロ沼津の練習試合で初めての公開実証実験が行われた。

提供:ヤマハ

リモート応援システムの仕組みも非常に興味深い。

スマホ画面を叩いた応援データはいったんヤマハのクラウドサーバーに集まり、そこに蓄積されたデータ数量に合わせて、応援、声援、拍手など、どの音声を流すかが決められる。

音声はチーム側で自由に作ることができるので、各チームのサポーターの声援を使い、独自色を保った応援を展開できる。

また、スタジアム側にとっても導入しやすいシステムで、音声コントロール室(放送室)でタブレットにつないで使うだけ。「公開実験を行った際、スタジアムにはそもそもある程度しっかりしたスピーカーがあるので、既設のもので十分対応できるとわかりました」(ヤマハの担当者)

チームOBをゲストに副音声のような楽しみ方で

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東京ヴェルディは実況観戦アプリ「GayaR(ガヤール)」を使用し、OB選手をゲストに呼んでトークを楽しみながら、試合を楽しめるようにした。一方のチームが同点に追いつくと、画面上に「いいね」が飛び交った。

スマホ画面よりキャプチャ

他にも、ファンやサポーターたちを楽しませる取り組みが目立った。

例えば、東京ヴェルディは試合前にYouTubeで生配信をしてファンやサポーターたちの気分を盛り上げ、試合中は実況観戦アプリ「GayaR(ガヤール)」を活用。チームOB選手をゲストに呼び、試合の進行状況にリアルタイムで反応しながら、選手の裏話などを紹介してファンたちと交流した。テレビの副音声的な楽しみ方ともいえる。

とはいえ、やはり観客がいない試合については、選手や監督たちも寂しさを感じたり、サポーターの生の声援による後押しがないことが残念との声もあった。

「サポーターの皆さんが試合会場にいなかったのが影響なかったというのはウソになる。ただ、こういった状況の中でも試合を再開できることは私たちにとって幸せなことだと思いました。まずは医療従事者の方々に感謝したい。

いまはこういった形でリモート試合をしないといけませんが、またサポーターの皆さんにスタジアムで応援してもらえる日が、そう遠くないうちに来ると思っています。皆さんの姿は見えないけれども、応援や期待を背負って戦っていきます」(町田ゼルビアのランコ・ポポビッチ監督)

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町田ゼルビアを指揮するランコ・ポポビッチ監督は観客がいない寂しさを語った。

オンライン記者会見のキャプチャ

ふとした瞬間に観客がいないと実感することも。

「リモートマッチはちょっと異常だなという感想を持ちました。試合中は意識しないようにしましたが、給水中など、お客さんは入れないんだよなと、ときどき寂しい思いをしました」(琉球FC・阿部拓馬選手)

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J2公式戦再開のアビスパ福岡との試合で、豪快なミドルシュートを決めた琉球FC・阿部拓馬選手。

オンライン記者会見のキャプチャ

J2琉球FCの阿部拓馬が豪快なゴールを決めるシーン。

YouTubeJリーグ公式チャンネルより

一方で、こういう声も聞かれた。

「我々の仕事(監督)からすると、非常に声が通りますし、指示も直接に伝わります。そこのやりやすさは感じながらやっていました。相手にも指示が筒抜けだったかもしれません。そこは気にはなりますが、あえてそれをわかった上で選手には戦ってほしいと伝えていました。

とはいえ、Jリーグはやはり、サポーターの方々に支えてもらい、実際に見てもらって試合をやるのが選手にとって良い形なのかなとも思いました」(東京ヴェルディの永井秀樹監督)

J1は7月4日に再開する。各チームとも、公式戦を数試合こなした後、7月10日からは観客を入れて試合を行う予定だ。それでも、感染拡大の第二波、第三波も懸念されるなか、今回取り組んだことは今後さまざまな形で生きてくるのではないか。

(文・大塚淳史)

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