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韓国発オーディション番組「Nizi Project」が大ヒットした4つの理由 —— プレデビュー曲は初日で1000万回再生突破

出典:NiziU公式サイト©︎2020 Sony Music Entertainment (Japan) Inc./JYP Entertainment.

TWICEや2PMを擁する韓国のエンタテインメント企業・JYPエンターテインメントが、ソニーミュージックと共同で開催したグローバル・オーディション「Nizi Project(虹プロジェクト)」が6月26日、大反響のうちに幕を下ろした。

その過程は、Hulu(国内事業は日本テレビ放送傘下)によって独占配信されていたが、時間差でYouTubeにも配信。

Nizi Project関連のキーワードは連日Twitterでトレンド入りし、番組から誕生したガールズグループ「NiziU(ニジュー)」によるプレデビュー曲『Make you happy』は公開から1日で1000万回再生を突破するなど、その人気ぶりは止まらない。その魅力をあらためて振り返る。

1.「韓国発オーディション番組」の集大成

Nizi Projectから誕生したガールズグループNiziUによる 『Make you happy』は、公開から1日で1000万回再生を突破した。

出典:JYP Entertainment

日本国内とハワイ、ロサンゼルスを含む全10都市でグローバルオーディションを行い、応募1万人の中から選ぶ日本発の「世界的ガールズグループ」 —— 。

そんな謳い文句と、韓国の著名な音楽プロデューサー、J.Y. Parkことパク・ジニョン氏の参加で当初から話題を集めていたNizi Projectだが、最終回に近づくに連れて人気はさらに沸騰。グーグルトレンドの結果からもその様子は見て取れる。

「Nizi」「Nizi Project」のこの1年間のグーグルの検索数。

「Nizi」「Nizi Project」のこの1年間のグーグルの検索数の推移。

出典:グーグルトレンド

Nizi Project人気の背景としてまず、そもそもここ数年、韓国発のオーディション番組が日本でブームになっていたことが挙げられる。

その筆頭が、2019年に日本で放映されたサバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」だろう。視聴者が“国民プロデューサー”となり、視聴者投票のみからデビューメンバーを選ぶという参加型のコンセプトが人気を博し、番組は「日プ」「プデュ」と呼ばれ社会現象を巻き起こした。同番組から生まれた11人組のボーイズグループ「JO1」のデビューシングルは初週で34万枚以上を売り上げている(ビルボード・ジャパンのデータ)。

韓国発オーディション番組の日本版「「PRODUCE 101 JAPAN」から生まれたボーイズグループ、JO1。

韓国発オーディション番組の日本版「「PRODUCE 101 JAPAN」から生まれたボーイズグループ、JO1。

出典:JO1公式サイト/© LAPONE ENTERTAINMENT

さらに遡れば、AKB48メンバーも在籍するグローバルグループ「IZ*ONE」を生んだのも、2018年に日韓で同時放送された公開オーディション番組「PRODUCE 48」だ。なお「NiziU」のお姉さんグループ「TWICE」も2015年、韓国のオーディション番組で誕生した。

BTSやBLACKPINK、TWICEらの人気に代表されるように、ここ数年でK-POPは10〜20代の間でカルチャーとして定着した。こうした流れの中で「Nizi Project」が日本で受け入れられる土壌は、十分にあったといえるだろう。

2. 「プロとして」を問い続ける

Part2で歌を披露したミイヒさんは、J.Y. Park氏から「練習生として評価すべきか、歌手として評価すべきかわからない」とまで言わしめた。

出典: NiziU Official

とはいえ、いくら土壌があっても、番組自体に魅力がなければ視聴者の心は惹きつけられない。筆者も注目したのは、オーディションそのものの内容だ。

まず指摘しておかなければならないのは、参加メンバーのクオリティの高さだろう。

よく語られることではあるが、韓国のアイドルはデビュー前に過酷なトレーニングを積んでダンスやボーカルのスキルを磨く。デビューできるのはその中で勝ち抜いたほんの一握りだ。

こうした特徴は、ハロー!プロジェクトからAKB48にいたるまで日本アイドルのコンセプトの定番だった「ふつうの少女がスターになっていく過程を応援する」構図とは一線を画す。

Nizi Projectでも、最後まで残ったデビューメンバーは、今までにボーカルやダンスの訓練を受けていたか、あるいはオーディションの過程でめざましい成長を遂げたメンバーばかりだった。いずれにしても選ばれる基準は「パフォーマンスの完成形」であり「今は下手だがスターになるかもしれない、ダイヤの原石」ではない。

オーディションの最終課題においてJ.Y. Park氏は、デビューメンバーの選定基準を「アマチュアではなくプロとして目立つかどうか」だったと後に明かしている。この点からも、いかにこのオーディションが「プロらしさ」に重点がおかれているかがわかる。

3.「人柄」という評価

しかしそれ以上に、このオーディション番組が人を惹きつけた理由は、「スター性」「人柄」という評価軸があったことだ、と筆者は思う。

そもそも同番組は、参加メンバーが審査をクリアして「ダンス」「歌」「スター性」「人柄」の4つのキューブを受け取れるかどうか?が大きな見せ場になっている。

プロデューサーのJ.Y. Park氏がキューブを渡す時にいう「来てください」はファンの間では名台詞として知られ、これを「推し」に言ってくれるか?を視聴者は毎回ドキドキしながら見守るのだ。

そこでJ.Y. Park氏から語られる「キューブを渡すか渡さないか」の理由が、番組を格段に面白くする。例えば、ある参加者には「切実さや必死さが見えるのはいいけれど、切実さしかない」と告げる。

「ぼくに良く見られることだけ考えているから、あなたの個性が見えなかった。見えない精神や心を見えるようにすることが芸術です。だから、自分の精神、心、個性が見えなかったら、そのパフォーマンスは、芸術的な価値がないのです」

また、8年間ずっとダンスを習ってきたという別の参加者には、「自分がうまく踊ることだけを考えている」と厳しいコメント。「ダンスや歌は、見てくれている人のためのものです。でも(審査員である)ぼくと心を通い合わせようとしなかった」。

さらに「人柄」評価について、J.Y. Park氏は参加者たちにこう投げかける。

「ダンスや歌に劣らず持っていてほしいのは、立派な人柄です。カメラの前でできない言葉や行動は、カメラがない場所でも絶対にしないでください。気をつけようと考えないで、気をつける必要がない、立派な人になってください」

こうしたフィードバックから少しずつ見えてくるのは、「スターになる人とは、どんな人なのか?」「心動かされるパフォーマンスとはなんなのか?」という問いかけだ。ダンスや歌がうまいだけでは足りない、人を惹きつけるオーラは何によって生まれるのか。J.Y. Park氏の的確なコメントと参加メンバーの成長によって、視聴者はそうしたエンタテインメントの本質に肉迫する。

4. スピード配信で「人気の火を絶やさない」

こうした内容の裏付けがあった上で、Nizi Projectは視聴者への「届け方」も一歩先に行っていた。

先述の通り、同番組はHulu(国内事業は日テレ傘下)によって独占配信されていたが、時間差でYouTubeにも配信。オーディション期間が約半年と長かったことから、YouTubeで同番組を知った後、Huluでリアルタイムに追いついて視聴することができた。

テレビでの発信も人気を後押しした。日テレの深夜帯では「虹のかけ橋」というバラエティ番組で裏側に密着したほか、朝の情報番組「スッキリ」でも連日特集が組まれたことで、最終話に近づくにつれ、SNSでの話題が沸騰。ファンの裾野を大きく広げた。

時間差とはいえ、進行中の番組がYouTubeでそのまま配信されるのは、日本ではまだまだ特殊ケースだと言えるだろう。

さらに特筆すべきは、デビューが決まってからのスピード感と本気度だ。オーディションの最終回が放送された6月26日には、デビューグループ「NiziU」の公式サイトがオープンし、その4日後の6月30日には、“プレデビュー”デジタル・ミニアルバムとして、オーディションでも披露した『Make you happy』を含む4曲をリリース。同アルバムは各音楽配信サイトで1位を総なめした。

Nizi Project

デビューが決まってすぐにファンクラブの開設も発表した。

出典:NiziU公式Twitter

オーディション番組から火がつき、SNSで今これだけ盛り上がっているからこそ、時間をおかずに楽曲を配信することで「人気の火を絶やさない」。あふれる情報の中でファンを惹きつけるのは、多様なチャンネルを活用した総合的な体験なのだと、Nizi Projectは今一度気づかせてくれた。

「特別でなければ、生まれてこなかった」

2020年にヒットする条件をきちんと踏まえ、一大人気番組となった「Nizi Project」。すでにデビュー組への期待も高まっている。

半年間追ってきて感じたのは、今アイドルを目指す少女たちをめぐる、過酷な競争環境だ。

ダンスや歌がうまいことはもはや当然。それに加えてスター性やグローバルで活躍するための語学力まで求められ、その評価は全世界にリアルタイムで配信される。

「人柄評価」に関しても、参加メンバー同士、トレーナー・番組スタッフによる投票、JYPスタッフによる観察、さらには視聴者からの投票もあり、まさに「360度評価」だ。

このご時世ではちょっとした言動がSNSで炎上してしまう恐れもあるため、こうした対応はデビュー後のリスクヘッジとも言えるのだろうが、そもそもオーディションに参加する10代の少女たちがみな人間的に完璧であるはずもない。

実際に放映中、参加メンバーに対する悪質なデマが流れ、番組公式Twitterが「このような行為が繰り返された場合、法的処置を行う」と発表したこともあった。

韓国芸能界は、その華々しい成功の裏側で、悼ましい自死のニュースが相次いで報じられている。手に汗を握り、Niziっ娘たちの応援をした今だからこそ、それが彼女たちを結果として追い詰める構造を作っていないか、自戒しなければならないと思う。

「Nizi Project」スター性テストでJ.Y. Park氏がメンバーに語った言葉が、とりわけ胸を打つ。

「もしここで脱落したとしても、皆さんが特別ではないということではありません。このオーディションはある特定の目的に合う人を探すだけで、皆さんが特別かどうかとは全く関係ありません。みんないつか、この世の中で自分のありのままの姿が特別なんだと、分かる時が来るはずです。一人一人が特別でなかったら、生まれてこなかったはずですから」

(文・西山里緒

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