レジ袋は有料化したけど、ペットボトルは?国内主要飲料メーカーが思い描く、ペットボトルの行く末

ペットボトル

ペットボトルは、プラスチック製品の中でも再利用しやすい素材だ。

Teerasak Ladnongkhun/Shutterstock.com

7月1日、世界的な脱プラスチックの機運の高まりから、レジ袋の有料化が始まった。

脱プラスチックの試みが、海のプラスチックごみや、地球温暖化、資源の持続可能性といった観点から進められていることを考えると、消費者にとってレジ袋と同じくらい身近なプラスチック製品であるペットボトルも、本来であれば消費の削減を試みるべき対象ではないのだろうか?

しかし、政府が定めた「プラスチック資源循環戦略」には、ペットボトルに関する個別具体的の目標は記載されていない。

そこでBusiness Insider Japanは、国内の飲料メーカー5社(サントリー、コカ・コーラ、アサヒ、伊藤園、キリン)に、ペットボトル削減やリサイクルに向けた取り組みについて、アンケートを実施した。

基準は2030年。ペットボトルの100%有効利用へ

レジ袋有料化

経済産業省によると、レジ袋の有料化は「普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考え、ライフスタイルを見直すきっかけとすること」を目的としているという。

出典:経済産業省

各社のペットボトルの取り扱いについて前提となるのが、国内の飲料メーカーでつくる全国清涼飲料連合会が2018年に打ち出した「プラスチック資源循環宣言」だ。

この宣言では、「2030年までにペットボトルの100%を有効利用すること」や「2020年度にリサイクル85%以上、リデュース25%(2004年度比)」が目標として掲げられている。

ただし、ここでいう「有効利用」とは、汚れた(飲みかけやタバコの吸い殻が入れられた状態の)ペットボトルなどを火力発電所の燃料として使用する「サーマルリカバリー」も含まれている点に注意したい。

では、この宣言を前提に、各社の取り組みを見てみよう。

何を、いつまでに、どれくらいやるのか?

リサイクルの取り組み

各社のペットボトルリサイクルに対する取り組みをまとめた。このほかにもペットボトルに使用するプラスチック量を削減する取り組みなど、プラスチック問題解消に向けて各社さまざまな取り組みを行っている。

出典:各社の情報を元に編集部が作成 企業ロゴは各社提供

環境に対する取り組みで重要となるのは、具体的な数値目標。

上図に示した各社の取り組みを見ると、2030年を一つの区切りとして、再生ペットボトルや植物性ペットボトルの使用率に関する目標を掲げていることがよく分かる。

2020年代に中間目標として具体的な数字をあげているのは、サントリー、コカ・コーラ、キリンの3社。

とりわけコカ・コーラは、2022年までに再生ペットボトルの使用割合を50%にするというスピード感のある対応を目指している。

2030年までに再生ペットボトルの比率を90%以上(残り10%は植物性ペットボトル)という目標からも分かる通り、ペットボトルを(ほかの製品として再利用するのではなく)ペットボトルとして持続的に利用する方針を中心に、新たな石油資源の消費を抑える方針であることが伺える。

一方、サントリーは、2025年までに国内における再生ペットボトルの使用割合を50%以上にすることを目標としている。さらに世界的には、2030年までに全てのペットボトルを再生ペットボトルと植物性ペットボトルに代替することを目指している。

ペットボトルの再利用を進めながらも、植物由来のペットボトルを開発して、石油資源の消費抑制や二酸化炭素の抑制に向けた取り組みを進める方針だ。

キリンは、2027年までに再生ペットボトルの利用を50%以上にするという目標を掲げてはいるものの、最終的な目標設定が「2050年」と、他社に比べてかなり先送りされている点が気になるところ。

2050年という時期は、ペットボトルに限らず広い意味でのサステイナブル(持続可能)な方針が示されているキリンの長期戦略「キリングループ環境ビジョン2050」で設定されたものだ。

環境への取り組みに、「いくらかけるのか」

金と植物

お金をかけるほど良いというわけではないが、投資金額は取り組みの本気度を知るための一つの指標にはなる。

Romolo Tavani/Shutterstock.com

具体的な方針が定まっていれば、ある程度予算規模を見積もることが可能なはず。

そこで、各社にペットボトルに対する取り組みにかける投資金額を問い合わせたところ、唯一、サントリーから、

「プラスチック基本方針で掲げた目標達成にむけては、2030年までに500億円規模の投資を見込んでいます」

との回答が得られた。

10年で500億円。1年あたりに換算すると、50億円程度の投資規模になる。

サントリーの2019年度決算における売上は約1兆3000億円。投資金額は売上高の1%にも満たない。営業利益1139億円に対しても、4.5%程度だ。

他のメーカーがそれぞれの理由から基本的に「公表していない」という立場だったため、サントリーの投資金額が多いのか少ないのかは判断が難しい。

サントリー広報は、10年で500億円の資金の使途について、詳細は不確定な部分が多いとしながらも、

「FtoPダイレクトリサイクル技術(ペットボトルの新リサイクル技術)の導入拡大、植物由来原料100%のPETボトル開発・商業化、より効率的なリサイクル技術の開発、生分解性プラスチックの研究などを想定しています」

と、基本的には2030年までの目標に向けた設備投資に充てる考えを明らかにしている。

最終的には消費してしまう日本のペットボトルリサイクルの現状

リサイクル率

ペットボトルのリサイクル率を日欧米で比較すると、日本のリサイクル率が非常に高い結果となる。

出典:PETボトルリサイクル年次報告書2019

実は、日本ではすでに、販売されているペットボトルの8割以上がリサイクルされている(ペットボトルリサイクル推進協議会)。

これは欧米と比べても高い値で、一見すると、非常によくやっているようにも見える。しかし、日本のリサイクル方法には少し問題がある。

少なくとも、リサイクルされたペットボトルのうち、再びペットボトルになるのは2018年の段階で全体の4分の1程度でしかない。

リサイクルペットボトルの使用例

リサイクルされたペットボトルの具体的な再利用例(サーマルリサイクルは除く)。右下の円グラフにある通り、4分の1程度しかペットボトルとして再利用されていない。

出典:PETボトルリサイクル年次報告書2019

それ以外のペットボトルは、火力発電所の燃料として活用(サーマルリサイクル)されたり、細かく粉砕されたあとにペットボトルではない製品として再利用されている(主な用途は別製品としての再利用)。

これでは、たとえ「ペットボトルをリサイクルしている」といっても、最終的に資源は減り続けてしまううえ、海のプラスチックごみとして流出する可能性も残る

だからこそ、ペットボトルをペットボトルとして再利用することや、植物由来の代替プラスチックの開発といった、資源消費を抑えるための取り組みが求められているわけだ。

環境配慮なしには、世界から見向きもされない時代へ

街

撮影:竹井俊晴

日本国内で把握されている廃棄プラスチック量は約900万トン。そのうち、再利用されたペットボトルは、2018年の実績で約53万トン程度。廃棄されるプラスチック全体の1割にも満たない。実は、レジ袋の廃棄量も、約20万トン程度といわれている

正直なところ、レジ袋を有料化して使用量を減らしたり、ペットボトルを100%リサイクルできたところで、プラスチックごみの問題や、資源枯渇の問題に与える影響は微々たるものだ。

ではなぜ、各社そろってリサイクルやプラスチック量の削減といった対策を進めるのか。

あらためて企業活動として「ESG投資(※)」を行う理由を問いかけたところ、すでに世界でビジネスを行う上で、必要不可欠な要素になっていることが分かってきた。

※EGS投資:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の課題に対する取り組み。

以下に、各社からのコメントを一部抜粋して紹介する。

「EUを中心にワンウェイプラスチックを規制する動きが強まっており、地球環境にやさしくない素材を使う企業は、市場から退場を迫れられるような規制や法制度が強化されることが想定される中、ペットボトル容器を使用する当社事業の存続のためには、プラスチック問題への対応は欠かせません」(サントリー)


「限りある資源を有効に活用することは企業責任であるとともに、コカ・コーラシステムの今後の事業継続に欠かせない要素です。また、消費者の皆さまの環境への意識の変化も感じております。『より環境負荷の少ないもの』を選ばれるお客様も増えているとの認識です」(コカ・コーラ)


「これまでは、企業価値を財務的価値と社会的価値の総和と捉え、サステナビリティへの取り組みはその社会的価値の向上に寄与するという考え方がありましたが、今やサステナビリティは経営そのものと捉えるべき時代です。ESGリスクは、もはや経営そのものを揺るがしかねない重要な経営課題であり、また人々の健康・エシカル志向はBtoC企業であるアサヒグループにとって大きなビジネスチャンスとなります」(アサヒ)


「『環境活動をビジネスにする』のではなく、現在はESGやSDGsといった考え方に代表されるように、持続可能な企業活動の前提として、持続可能な社会の構築が求められているものと考えます。そしてそれは自社のメリット・デメリットを基準に考えているものではありません。当社は以前からこの考え方に基づき、企業活動を行っており、今後も継続していきます」(伊藤園)


「プラスチック問題に関する対応は、われわれ飲料業界での事業継続の必須条件と認識しています。(同社が策定した2050年環境ビジョンは)非常に高い目標ですが、投資家含め関心も高まっていることから、取り組み内容や進捗状況を積極的に開示していきます」(キリン)

「環境投資」と聞くと、どうしてもCSR的な活動の一環だと思われがちだ。

しかし、世界のビジネスの現場では、「持続的であること」や「地球環境への配慮が行き届いていること」なしには、企業として信頼されない時代がやってきている現状が垣間見えた

「ペットボトルをやめる」という選択肢はなくて良いのか?

ペットボトル

Quinn Martin/Shutterstock.com

一方で気になったのは、今回アンケートに答えた飲料メーカーが、結果的に「ペットボトル」という形態を捨てきれていない点。

上場企業の中でも、ミドリムシ(ユーグレナ)を使った健康食品やバイオ燃料などの製造で知られるユーグレナは、6月29日に、2020年9月以降、自社製品からペットボトルを全廃することを発表している。

今回アンケートを取った飲料メーカーと比較すると売り上げに対する規模は小さいとはいえ、その決断には、同社が持つ環境配慮への意識の並々ならぬ高さが垣間見えるのも事実だ。

本気でプラスチックの使用に問題意識を感じているのであれば、いっそのこと長期的な目標として、特定の商品についてだけでも「ペットボトルの使用をやめる」という選択肢を設けても良いように思う。

地球への環境負荷がここまで高まってきた要因の一つは、経済性を求め、小さな悪影響の積み重ねを許容してしまったことにあるのは間違いない。

現代は逆に、たとえ影響が小さかったとしても、環境負荷を和らげるような取り組みの積み重ねが推奨される時代になってきている。

各メーカーがすでに小さな努力を積み重ね続けていることは言うまでもないが、消費者の目に見えやすい業界であるからこそ、あらためてはっきりとした取り組みを見せつけなければならないタイミングなのかもしれない。

文・三ツ村崇志

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