メルカリ内や実店舗、ネットの加盟店で使える「メルペイ」に、新たな支払い方法が追加された。
撮影:小林優多郎
メルカリのスマホ決済サービス「メルペイ」は7月7日、後払い式「メルペイスマート払い」の新しい支払い方法「定額払い」の提供を開始した。
通常のメルペイスマート払いは、購入月の翌月中に一括して代金を支払う必要があるが、メルペイスマート払い(定額払い)では翌月以降、月ごとに自ら指定した金額で精算できる。
仕組みとしては“メルペイ版リボ払い”
出典:メルペイ
この定額払いは、いわゆるクレジットカードのリボルビング払い(以下、リボ払い)と同様の仕組み。リボ払いでは、毎月の支払金額を一定の規模に抑えられるが、所定の手数料が上乗せされるため、一括や回数の少ない分割払いに比べて累計の支出額が上回る。
メルペイの定額払いの手数料は年率15%で、一般的なクレジットカードのリボ払いも15%前後とされており、ほぼ同様のサービスと言える側面がある。
また、定額払いは割賦販売法の対象となるため、銀行口座の登録もしくは本人確認(eKYC)というメルペイスマート払いの利用条件に加え、20歳未満は利用不可、指定信用情報機関(CIC)の照会が発生するといった定額払い向けの審査基準を通過する必要がある。
当然、支払い状況(完済、滞納など)もCICに登録されるため、メルペイ定額払いの利用が、ユーザーの今後のクレジットカードの契約可否やローンなどの与信枠などに影響することになる。
従来のリボ払いとは違う取り組みもあり
メルペイスマート払い(定額払い)の特徴。
出典:メルペイ
こうした特徴があるため、メルペイの定額払いを含めリボ払いを利用する際は慎重になる必要がある。
その点はメルペイも織り込み済みで、定額払いには前述の信用機関の情報に基づいた審査に加え、以下に挙げるような独自の安全利用の機能が盛り込まれている。
- 精算金額の変更……余裕のある月に多めに精算することで早めに完済できる(結果的に支払う手数料が少なくてすむ)。
- 標準は一括払い……定額払いにする決済は、必ずユーザーが指定して変更をする。
- 定額払いにできる決済は3回分まで……3回分の決済しか「定額払い」の対象にできない。
決済手数料以外の収益は黒字化の“布石”
メルペイ利用者は2020年1月、600万人を超えた。
出典:メルカリ
メルペイはなぜ、定額払いの提供に乗り出すのか。同社は、従来から「お金がなくても使えるサービス」の実現をビジョンの1つに掲げており、その一環と位置づけることができる。
また、ビジネスとして見たとき、定額払いには手数料分の収益が発生する点も重要なポイントと言えるだろう。
メルペイは従来、加盟店から徴収する決済手数料(通常時2.6%)をおもな収入源としてきたが、この手数料はクレジットカードなどと比べて低廉であることや、キャッシュレス普及を狙った無料施策(2021年6月末まで)を行っていることもあって、現時点では大きな収益を見込めるものになっていない。
メルペイ事業は、2021年6月期での収益化が目標となっている。
出典:メルカリ
そこに定額払いの手数料が加わることは間違いなくプラスになる。ただ、それがすぐさま同社の収益改善に寄与するインパクトがあるかと言われれば、それは違う。
前述の自主規制的な機能に加え、そもそもメルカリ内での利用実績などに基づいたメルペイスマート払い自体の利用上限は20万円となっている。しかも、メルペイ広報によると「20万円の枠を持っている方はそこまで多くはない」という。
したがって、手数料で大幅な収益増を狙うには、利用者を増やすのはもちろんのこと、20万円以上の金額を扱える信用情報のノウハウや、高額な製品を購入するサービスとしての“空気感”の醸成も必要になってくる。
メルペイは2020年1月時点で利用者が600万人を超え、4月30日の決算会見では700万人に到達する見込みを明らかにしており、順調にユーザー数を伸ばしている。
2021年6月期(2020年7月1日~2021年6月30日)以降の収益化を目指しており、今回の定額払いサービスの開始が、そのマイルストーンの1つになることは間違いないだろう。
(文・小林優多郎)