左:2020年のネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権で、世界記録を達成したジョーイ・チェスナット。右:ポーズを決める男性部門勝者のチェスナットと、女性部門勝者のミキ・スドー。2020年7月4日、ニューヨークのブルックリンにて。
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- 2020年7月4日、ジョーイ・チェスナットは10分間で75個のホットドッグを食べ、世界記録を達成した。
- 女性部門ではミキ・スドーが48.5個を食べてタイトル防衛に成功し、7度目の優勝を果たした。
- 科学者は、チェスナットやスドーのようなフードファイターの体を調べ、彼らの胃は普通の人のように収縮しないことを明らかにした。
- フードファイターは胃を緩めてより多くの食べ物を取り込むことができる。だがそれは、腎臓や肝臓、心臓の機能に大きな負担をかけることにもなる。
ジョーイ・チェスナット(Joey Chestnut)がまたもややってくれた。36歳のフードファイターは2020年7月4日に行われた「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権」で10分間に75個のホットドッグを飲み込み、これまでの自己記録の74個を超え、優勝した。信じがたいことだが、彼は平均すると10秒弱で1個のホットドッグを食べ、1分間だと7.5個食べたことになる。
女性部門ではミキ・スドー(Miki Sudo)が48.5個を食べてタイトル防衛に成功し、7度目の優勝を果たした。昨年の記録である31個よりも17.5個も多い。今年の4人のライバルが食べた数を合わせた分と同じだけスドーが1人で食べたという圧勝だった。
今年のコンテストは新型コロナ感染防止のため、マスクや手袋、アクリル板の仕切りが用いられ、社会距離を保つ措置が取られる中、無観客で行われた。
男性部門では、フードファイターのジョーイ・チェスナットが75個を食べて世界新記録を達成した。2020年7月4日。
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早食いコンテスト優勝者の多くはホットドッグを食べるというより水で流し込んでいる。ネイサンズのサイトによると、飲み込む時に「ジャンプしたり体をゆすったり」するフードファイターもいる。
「そうすることで彼らはホットドッグをスムーズに飲み込み、胃の中にコンパクトに収めようとしている」とサイトには記載されている。
ジョーイ・チェスナットとミキ・スドーは、2019年も優勝している。
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食べることをスポーツ競技として捉えていない人にとっては、どうすればあれほどまでに食べられるのか(そしてすべてを胃の中に収められるのか)、なかなか理解できない。だが科学者は、胃がどのようにしてそれに対応しているのか、いくつかの要因を明らかにした。
放射線医学の学術雑誌「American Journal of Roentgenology」で2007年に発表された論文では、10分間に36個のホットドッグを食べることができる早食いチャンピオンのティム・ヤヌス(Tim Janus)の体と、健康的で通常の食欲を持つ一般の人の体を比較分析した。それぞれ12分間でできる限り多くのホットドッグを食べてもらったところ、ヤヌスの胃は伸びて拡張したが、収縮することはなかった。一方「普通に」食べている一般の人の胃は、それとはほぼ正反対の動きを見せ、胃はそれほど拡張せず、収縮した。胃の収縮は、消化を促す重要な役割を果たしている。
フードファイターは多くの面で普通の人と違うことが分かっており、胃が収縮しないことはその1つだ。スポーツ競技としての早食いが、人間の脳から血流に至るまでどのような影響を与えるのか、下図に示されている。
2007年に発表された論文では、フードファイターとして早食いを続けていると、胃が収縮しなくなって切除しなくてはならなくなったり、低酸素症や低ナトリウム血症が発生したりと、さまざまな弊害が発生すると警告されている。
“Competitive Speed Eating: Truth and Consequences,” American Journal of Roentgenology (2007)
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)