食品宅配サービス「ポストメイツ(Postmates)」など有望スタートアップの成長を資金面あるいは経営面で支援してきたスパークキャピタル(Spark Capital)のウェブサイト。早くも「おめでとう、ポストメイツ」のメッセージが。
Screenshot of Spark Capital website
- ウーバー(Uber)がポストメイツ(Postmates)を26億5000万ドルで買収すると発表。そして、ベンチャーキャピタルのスパークキャピタル(Spark Capital)は、この買収劇における「勝者」のひとりだ。
- スパークキャピタルはこれまでスラック(Slack)、プライド(Plaid)、ミラー(Mirror)などの有望株に投資してきた。
- ポストメイツの買収でスパークキャピタルがどれほどのリターンを得たかは不明。
配車サービス大手ウーバーは7月6日、食品宅配サービスのポストメイツを26億5000万ドル(約2915億円)で買収すると発表した。
ベンチャー・キャピタルのスパークキャピタルは、ポストメイツの最初の出資者で、今回の買収劇における最大の「勝者」のひとりだ。
スパークキャピタルは2013年、リードインベスターとしてポストメイトに1600万ドル(約17億6000万円)を出資。その後も数回の出資ラウンドに加わり、いま大きなリターンをあげようとしている。
新型コロナウイルスの感染拡大でウーバーの配車サービスは打撃を受けたが、食品宅配サービスはむしろ急成長。ポストメイツの買収でテコ入れを図るか。
EUTERS/Kim Kyung-Hoon
ちょうど1週間前には、やはりスパークキャピタルが出資するフィットネステック・スタートアップのミラーが、アスレチックウェアブランド大手のルルレモン(lululemon)に5億ドル(約550億円)で買収されている。
スパークキャピタルはここ数カ月で立て続けにいくつかの成功をおさめ、新型コロナウイルスの世界的大流行やその後の景気後退という厳しい状況のなかで著しい輝きを放っている。
ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、2020年上半期、同社はアーリーあるいはグロースステージのスタートアップに総額13億5000万ドル(約1485億円)を出資している。
ボストンとサンフランシスコに拠点を置くスパークキャピタルの設立は15年前。ベンチャーキャピタルとしては新興勢力の部類だ。
ただし、その実力は折り紙つきで、同社の「キャピタル3号ファンド」は2010〜12年に設立されたファンドのなかでベスト10に入るパフォーマンスを記録している。
共同創業者のビジャン・サベ、サント・ポリティ、トッド・ダグレスの3人は、アーリーからミドルステージの成長企業への投資にフォーカスし、ツイッター(Twitter)やタンブラー(Tumblr)、フォースクエア(Foursquare)への出資で成功をおさめてきた。
ウーバーが買収を発表した食品宅配サービス「ポストメイツ(Postmates)」のウェブサイト。
Screenshot of Postmates website
スパークキャピタルのパートナー、ナビール・ハイアットはブログ記事で、ポストメイツのアプリが「ゲット・イット・ナウ」という名で知られていた時代から同社に深い関心を抱いていたと書いている。
ハイアットは当時ポストメイツのボードメンバーとして経営に関与し、現在のバスティアン・レーマン最高経営責任者(CEO)と近くで仕事をしている。
リモートワークシフトを背景に業績を大幅に伸ばしているビジネスチャットアプリのスラックについても、スパークキャピタルは急成長のはるか以前、2015年に1億6000万ドル(約176億円)を集めたシリーズEラウンドで出資している。
以下にスパークキャピタルが近年大きな利益をあげた投資案件をいくつか紹介しよう。
プライド(Plaid)
金融機関向けAPIソフトウェア開発を手がけるPlaid(プライド)のウェブサイト。
Screenshot of Plaid website
2020年1月、Visaが53億ドル(約5830億円)で買収したフィンテック(金融機関向けAPI構築サービス)スタートアップ。スパークキャピタルの共同創業者兼パートナー、サント・ポリティが担当し、2018年12月に2億5000万ドル(約275億円)を調達したシリーズCラウンドに参加している。
ミラー(Mirror)
ルルレモン(Lululemon)が買収したフィットネステック・スタートアップ、ミラー(Mirror)の商品・サービス紹介。
urdesign Official YouTube Channel
新型コロナウイルスの感染拡大によりアメリカ国内のジムがことごとく閉鎖されたため、自宅でできるワークアウトへのニーズが高まっている。ミラーはネット接続された鏡(スマートミラー)を使って自宅でフィットネスレッスンを受けられるサービス。
カナダのアスレチックウェア大手ルルレモン(Lululemon)は6月末、5億ドル(約550億円)でミラーを買収すると発表。2018年に1300万ドル(約14億3000万円)を集めた資金調達ラウンドでは、スパークキャピタルがリードインベスターを務めた。
ソンダー(Sonder)
民泊分野でエアビー(Airbnb)のライバルとみられる1社。6月にシリーズEラウンドの資金調達を行い、評価額は13億ドル(約1430億円)に達したと報じられている。
グラマリー(Grammarly)
英文添削ツール「Grammarly(グラマリー)」のウェブサイト。
Screenshot of Grammaly website
人工知能(AI)を活用して文章スキルを向上させる英文添削ツールを開発。評価額は20億ドル(約2200億円)。スパークキャピタルはシグナルファイアやゼネラルカタリストといった格上のベンチャーキャピタルと共同で、2017年に1億1000万ドル(約121億円)の資金をグラマリーに供給している。
(翻訳・編集:川村力)