Uberのライドシェアの驚きの利益率、競合との差は歴然

Ubernoライドシェア事業のテイクレート・利益率は?

A. Uberのライドシェア事業はEBITDA(税・利息・償却控除前の利益)率が23.5%。コロナ禍においても黒字を維持しています。

今日の記事ではライドシェアで世界最大手のUberの決算を見ていきたいと思います。

最初に結論を書いておくと、Uberのライドシェア事業の利益率の高さに驚きましたので、今日はその辺りを深く見ていきたいと思います。

*Uber Q1 2020 (2020/5/7)

表

Uberの2020年1〜3月期の決算を見ると、四半期の為替変動を考慮した取扱高は前年同期比+10%で$15.8B(約1.58兆円)となっています。前四半期まで前年同期比で30%以上の成長を続けていたことを鑑みると、コロナウイルスの影響で伸び率が減速していることが読み取れます。

グラフ

四半期の売上は四半期あたり$3.3B(約3300億円)で前年同期比+19%で成長しています。Uber全体のテイクレートは1年前が18.8%だったところが、20.6%まで伸びています。

グラフ

EBITDA(税・利息・償却控除前の利益)は-$612M(▲約612億円)で、会社全体としてはまだ赤字です。

ちなみに、中国でライドシェア事業を展開する滴滴出行の株式評価損が大きく響き、$2.9B(約2,900億円)の純損失となっています。

フードデリバリー事業:Uber Eats

Uberには「ライドシェア事業」と「フードデリバリー事業」の2つのセグメントがあるので、まずはフードデリバリー事業である「Uber Eats」から見てみましょう。

グラフ

Uberのフードデリバリー事業の四半期の取扱高は前年同期比+59%で約$4.7B(約4,700億円)まで伸びてきています。

四半期の売上高は$541M(約540億円)、テイクレート(編集部注:ECサイト上の取引額のうち、サイト運営者の取引分)は11.6%、 EBITDAは-$299M(▲約299億円)と大赤字ですが、この四半期決算は、1〜3月までの結果ですので、4月以降コロナの影響でフードデリバリー事業は大きく成長率を加速させているはずです。

それに伴ってまだまだ大きな投資をしている可能性がありますので、しばらくは赤字が続くと思いますが、まだまだ伸び代が大きいのがフードデリバリー事業だと言えるでしょう。

ライドシェア事業:Uber Rides

続いてUberのライドシェア事業を見てみましょう。

グラフ

四半期の取扱高が前年同期比-3%の$10.9B(約1兆900億円)となっています。これ以前は20%以上の成長を続けてきたので、コロナウイルスの影響でライドシェアを利用するユーザーが減ったことが大きく影響していることは間違いありません。

それに伴って売り上げは前年同期比+6%の$2.48B(約2480億円)、EBITDAは$581M(約581億円)となっています。このスライドを見て個人的に一番驚いたのが、ライドシェア事業の利益率が23.5%も出ているという点です。

それも今回の四半期だけではなく、過去4四半期にわたって利益率が20%を超えているので、非常に安定的に利益が出る事業になったことが読み取れます。

Lyftとの比較

Uberのライドシェア事業に関して、競合であるLyftとの比較を簡単に行ってみたいと思います。

*Lyft Q1 2020 (2020/5/6)

グラフ

Lyftの四半期売上は前年同期比+23%の$956M(約956億円)となっています。Uberのライドシェア事業が前年同期比+6%であることと比較すると、Lyftは高成長を維持していると言えるでしょう。

グラフ

Lyftの四半期EBITDAは-$85M(約85億円)で、-9%という数字になっています。前年同期と比較すると赤字幅は縮小しましたが、Lyftはまだまだ赤字が続いています。

これに対して、Uberのライドシェア事業はすでに23%のもの利益が出る構造になっているという点が2社の大きな違いだと言えるでしょう。

グラフ

左側のグラフはLyftの乗客一人当たりの売上を表しています。こちらは1年前と比べて19%増えて四半期当たり45.06ドル(約4,500円)とこちらも順調に成長しています。

一方で右側は乗客数になりますが、こちらは1年前と比べて3%しか伸びていません。これはコロナウイルスの影響をもろに受けていると言えるのではないでしょうか。

グラフ

ちなみに、Uberの主要なKPIを見てみると、月間平均乗客数(MAPC, Monthly Active Platform Consumersというのは、月間のアクティブユーザー数のこと)は、103億人で前年同期比+11%で伸びていますが、月間の乗降回数は1658億回で前年同期比+7%しか伸びなかったということになります。1乗客辺りの乗車回数が1年前が5.5回だったことに対して、今四半期は5.4回に減少しているので、やはりコロナウイルスの影響が大きかったということだと思います。

まとめ

今回比較したUberのライドシェア事業と、Lyftの数字をまとめると以下のようになります。

     Uber Rides(*)         Lyft

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売上   $2.48B(約2,480億円)   $956M(約956億円)

YoY   +6%              +23%

EBITDA $581M(約581億円)     -$85M(▲約85億円)

利益率  23.5%             -9%

(*) インドを除いた数字

両社のライドシェア事業を比べると、売り上げ成長という意味ではLyftの方がまだ高い成長率を維持し続けていますが、利益率という点で見るとUberのライドシェア事業は既に20%超を維持しており、未だに赤字が続いているLyftとは対照的です

Uberとしてはライドシェア事業で稼ぐ利益をフードデリバリー事業に投資をして、両方の事業を黒字に転換していくということを行おうとしていたわけですが、コロナウイルスの影響によってライドシェア事業の利益が当初の予定よりも減っています。

そのため、最大の焦点としてはフードデリバリー事業にどの程度投資をしていくべきなのか、キャッシュをまだ保有しているので、現金と成長スピードと赤字額のトレードオフをどのように取っていくのかがまさに経営陣の腕の見せ所だと言えるのではないでしょうか。


シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中

決算が読めるようになるノートより転載(2020年7月8日公開

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