REUTERS/Denis Balibouse
- ノーベル経済学賞を受賞した経済学者で、イエール大学の教授でもあるロバート・シラー氏は、新型コロナウイルスの感染第2波が第1波よりも人々の心理により大きなダメージを与える可能性があると言う。
- シラー氏は「2度目の方が心理的反応が悪い可能性がある」と、CNBCに語った。
- アメリカでは7月8日、新型コロナウイルスの1日あたりの新規感染者数が6万人にのぼり、これまでで最多となった。
- シラー氏はまた、連邦準備制度理事会(FRB)が景気刺激策の手を緩めれば、アメリカ経済は苦戦する可能性があると警鐘を鳴らした。
投資家たちは、アメリカ経済が新型コロナウイルスの感染第2波を第1波の時よりうまく乗り切れるかどうか、議論している。
ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のロバート・シラー氏は、感染第2波は第1波よりもアメリカ市民の心理に悪影響を及ぼす可能性があると主張している。ウイルスのせいで経済活動の再開が滞ればなおさらだという。
7月7日にCNBCの番組「トレーディング・ネイション(Trading Nation)」のインタビューに応じたシラー氏は、「どうやらわたしたちは第2段階に入ったようだ。もう一度、閉鎖しなければならないかもしれない」と語った。
そして「2度目の方が心理的反応が悪い可能性がある」と付け加えた。
アメリカでは、ジョージア州、フロリダ州、テキサス州など複数の州で新型コロナウイルスの感染者数が急増している。8日には6万人の新規感染が確認され、1日あたりの感染者数としてはこれまでで最多となった。
シラー氏は、感染第2波が人々をより慎重にさせ、周りの人々のライフスタイルに合わせなければという意識を薄めるだろうと指摘する。
「わたしたちはもう流行に乗り遅れまいとする必要はない」とシラー氏は言う。
「最新ファッションを見せびらかしたり、ピカピカの新車に乗らなくていい、これまでとは異なるカルチャーが生まれ、それが何年も続く可能性がある。わたしたちは力を抜いていいと学んだ。だが、これは経済にとっては悪いことだ」
同じインタビューで、シラー氏はにわかに景気が上向いた株式市場 —— パンデミックを受け、 財務省と連邦準備制度理事会(FRB)が取った積極的な景気刺激策によって株価が上昇した —— が経済回復につながると自動的に思い込むことに対しても警鐘を鳴らした。
FRBは、一般家庭や雇用主、金融市場、州政府、自治体に対する総額2兆3000億ドルの支援策を打ち出したり、金利をほぼゼロまで切り下げるなどの措置を取ってきた。
コカ・コーラやAT&T、バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)といった個別企業の4億2800万ドル相当の社債も購入している。
こうした対策がS&P 500種を3月23日の安値から40%超上昇させることに貢献し、多くの人々がアメリカ経済はV字回復に向かっているのではないかと考えている。
シラー氏は政府の支援策について「人々は、これは経済にとって不可欠でない、すぐに終わるだろうと考える可能性がある。しかし、わたしはそれ以上のことだと考えている」と語った。
同様の考えをビリオネアの投資家ハワード・マークス(Howard Marks)氏も示していて、FRBが市場を「浮揚させる」のを止めてしまったら、株価が心配だと語っていた。
「1つ非常に印象的だったのは、2月に市場がピークに達した直後まで、全てに無関心だったことだ」とシラー氏は言う。
「しばらくの間、人々は急に怖がっていたように見えたが、その後、すぐ元に戻った。これは話がどう展開したかに関係があるのではないかと思っている —— 当初は、世界大恐慌の再来と言われていた」
(翻訳、編集:山口佳美)