増える「Twitter就活」の功罪、不安あおる匿名情報の氾濫や高額セミナーの勧誘も

twitermain

多くの就活生が情報収集にTwitterを使用している。

今村拓馬撮影/shutterstock

就活生がTwitterを利用して、就活情報を集めたり、情報共有を行う「Twitter就活」。

就活のための専用アカウントを作る大学生も多く、Twitter上には2021年卒業予定の就活生のアカウント「〇〇@21卒」などが大量に見つかる。

Twitter就活では、就活生仲間などから生の情報が収集できたり、就活生側が企業に直接アプローチできたりすることから、就活生の間に浸透。

2020年は新型コロナウイルスの影響で、対面でのイベントが制限されるなど、例年通りの情報収集が難しかったこともあり、Twitter就活への注目がさらに高まった。

一方で、人事担当を名乗る匿名アカウントが、無責任な就活相談を行っていたり、就活生の不安をあおったりする例も少なくない。

数年前からTwitter就活に関わり、Twitter上で就活相談などを行ってきた人材業界の女性は、「Twitter就活を取り巻く環境は激変している。Twitterだけに頼る就活は危険だ」と注意を呼び掛けている。

就活生「高額なセミナーの誘いばかり」

_IMA8476

就活のために専用アカウントを作成する就活生も多い。

撮影:今村拓馬

Twitterで就活情報を収集していた職活中の都内私立大学3年生のシュンスケさん(仮名)も、就活用に新しいアカウントを作成した。

「就活を始めた2020年の4月にアカウントを作り、就活のティップス(コツ、裏技)をつぶやいている匿名の社会人や、同じ2022卒の就活生をフォローしていました。

でもほとんどのアカウントは、『絶対に受かる志望動機』とか、情報商材や高額なセミナーへの勧誘ばかりでした」

つぶやきの中には、「webテスト代行します!」や、「すごくいい情報仕入れたので、聞きたい人いますか?」など怪しい投稿も多く、それに対し何百件ものリプライがあったのも目にした。

シュンスケさんは約3カ月後、Twitter就活のアカウントを閉鎖したという。

「Twitter上ではいくらでも経歴詐称ができるし、信用できなかった。今は部活の先輩から聞く情報が一番有効だと感じています」

2019年秋から一気に広まる

TIMA3341-1

「Twitter就活」を行う大学生が増え、匿名のアカウントでの無責任な投稿も増えたという。

撮影:今村拓馬

そもそもTwitter就活はいつ頃から始まったのか?

「Twitter就活は2020年卒業の就活生が広めた文化で、2019年の秋頃から増えました。

2017年頃は、外資系のコンサルや投資銀行を志望する学生が、匿名で企業情報を探るのが主なTwitter利用で、東大生や早慶生が中心でした。

2019年頃になって、日系の大手企業を志望する学生に利用が広がり、就活用のアカウントを作る学生が急増。怪しいアカウントや、不安をあおるような無責任な投稿も増えてしまいました」

Twitter上で、就活情報の発信や就活生の相談に乗っていた会社員のマリさん(仮名)はそう語る。

マリさんは就職支援を行う企業で、TwitterなどSNSの運用を担当。

マリさんのアカウントには5000人を超えるフォロワーがいたこともあり、Twitter就活が脚光を浴びる前から、就活生に対して、就活でのTwitter利用を呼び掛けてきた立場でもある。

ただ、企業と学生の距離を縮められる一方で、採用担当者が社名を名乗って自由に発言することは、企業にとってリスクでもあるという。

「選考がだめだった時、Twitterでつながっている採用担当を、就活生はどう感じるのか。企業側の対応も課題と言えます」(マリさん)

「元人事」など匿名アカウントが増加

shutterstock_1654994521

マリさんは「Twitterだけに頼る就活は危険がある」と話す。

shutterstock

Twitter就活が本格化したことで、「元人事」や「採用担当者」など匿名で就活相談に乗るアカウントが増えたという。

「匿名人事アカウントによる過激な投稿が、だんだんと目に付くようになりました。

例えば、学生が投稿した圧迫面接などの愚痴について、匿名の採用担当が『そんなのは当たり前だ』などと、強い言い方で学生を批判したり、あげつらって冷笑したり。その意見が賞賛されて、拡散される。

その人が採用担当かも分からないと理解する学生もいる一方で、本当に人事の意見だと感じ傷ついてしまう就活生もいます」(マリさん)

人事アカウントの中には、就活生に有益な情報を発信するために、あえて匿名を選ぶこともある。Twitter上の就活情報は玉石混交なのが実情だ。

「知り合いの人事の方は、現実に即したアドバイスをするため、就活生から特定されないよう、あえて匿名で発信している人事もいます。企業名を明かしてしまうと、実際受けた学生が『自分のことだ』と思ってしまうからです。

その方は就活を成功させてほしいという思いから、企業の人事担当として有益な情報を発信していました」(マリさん)

情報格差を埋めたTwitter

_IMA0784

Twitterは就職活動における情報格差を埋める役割も果たしている。

撮影:今村拓馬

一方で、学生側から見たTwitter就活にももちろん功罪がある。

「企業数が少ない地方の学生にとっては、就活を経験した先輩や、OB・OGが近くにいないということもあります。

情報収集や他の就活生との交流先として、Twitterは特に地方の就活生にとっては、よりどころになったと思っています。情報格差を埋めるという面で、Twitterの果たす役割は大きい」(マリさん)

情報格差を埋められる一方で、その情報の見極めには慎重さがが求められているという。

「Twitter就活に関係している大人は、人によって志やモチベーションがまったく違います。

そこを見極めないと、Twitter上で就活相談をしたことで、逆に深く傷ついてしまうこともあります。

Twitterを唯一のよりどころとするのではなく、いい距離感を保つこと。

例えば大学のキャリアセンターでも解決できることかもしれないし、複数の手段を持って就活に臨んでほしいと思います」(マリさん)

新型コロナでTwitter就活に限界感じる

_IMA5749

撮影:今村拓馬

これまで数年間、Twitterでの就活相談に乗ってきたマリさんだったが、新型コロナをきっかけに、アカウントの閉鎖を考えるようになったという。

「就活相談ではこれまでも『選考に落ち続けて死にたい』とか『パニックになり外に出られなくなった』など、追い込まれた就活生からSOSの声が届くこともありました。

コロナ禍の就活生からは、『オンライン面接で何を見られているか分からない』『航空系の企業が採用を中止したが、今後どうしたらいいか』など、私自身、体験したことのない相談も増え、応じることが難しくなってきました」

これまでマリさんは、就活相談に答える時には、自身の就活の経験だけでなく、就活生から意見を聞いたり、採用の現状について取材したりした上で、Twitterを運用してきた。

ただ現状では、十分な準備時間が確保できなくなったこともあり、アカウントの閉鎖を考えているという。

「無責任なアドバイスは絶対にできません。就活相談は、人生を左右することもありますから」

(文・横山耕太郎)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

あわせて読みたい

新着記事

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み