ツイッターCEOのジャック・ドーシー。2017年撮影。
Associated Press
- ツイッターのCEO、ジャック・ドーシーが、アメリカの市長のグループが行うベーシック・インカムの実証実験に資金を提供すると発表した。
- 元大統領候補のアンドリュー・ヤンは、ベーシック・インカムを有名にし、彼自身もテストプログラムに資金を提供している。
- ベーシック・インカムを支持する人はアメリカで広がり続ける貧富の差がなくなると言い、反対勢力は人々が仕事をしなくなるので財政が悪化すると批判している。
ツイッター(Twitter)の共同創業者で億万長者のジャック・ドーシー(Jack Dorsey)は、ユニバーサル・ベーシック・インカムの試験に大金を投じることにした。
ドーシーは7月9日、アメリカの15都市の市長が作る団体、メイヤーズ・フォー・ア・ギャランティード・インカム(Mayors for a Guaranteed Income)に対して300万ドル(約3億2100万円)を提供すると発表した。この団体は、各都市でベーシック・インカムの実証実験プログラムを立ち上げ、連邦レベルでもプログラムを検討するよう働きかけることを計画している。同団体によると、実証実験はロサンゼルス、アトランタ、ニューアーク、ジャクソン(ミシシッピ州)などの都市に住む約700万人が対象になる可能性があるという。彼らは、収入を保証することで人々を貧困から救い出し、コロナウイルスによる経済的打撃や失業の影響を和らげることができると述べている。
75億ドル(約8000億円)の資産を持つドーシーは、自身の非営利団体からこのプログラムに300万ドル(約3億2100万円)を提供するという。ドーシーは4月、コロナウイルス救済活動に10億ドル(約1100億円)を寄付することを発表していた。
支払いの対象者と金額は、明言されていない。同団体の声明によると、ベーシック・インカムは既存の社会保障プログラムを補足するものだとしている。参加する都市のうちの少なくとも2つ(ミシシッピ州ジャクソンとカリフォルニア州ストックトン)では、すでに収入保障の実験に取り組んでおり、シカゴ、ニューアーク、アトランタも、独自のプログラムを検討する特別委員会を設けている、と同団体のウェブサイトは伝えている。
ベーシック・インカムの支持者と過去の研究結果は、収入を保障することはアメリカの貧富の差を埋める最善策となると主張している。格差は、コロナウイルスのパンデミックの中、さらに広がっている。しかし、ベーシック・インカムに反対する人々は、その経済効果は調査が不十分であり、受給者が働かなくなる可能性があると批判している。
アメリカでベーシック・インカムを支援する富裕層は、ドーシーだけではない。起業家で元大統領候補のアンドリュー・ヤン(Andrew Yang)は5月、この政策の効果を検証するため、ニューヨークに住む20人に、自身の非営利団体から5年にわたり毎月500ドル(約5万3000円)を支払うと発表した。
ヤンは選挙戦の目玉政策として、ベーシック・インカムを提案した。フリーダム・ディビデンド(Freedom Dividend)という政策で、アメリカの成人全員に毎月1000ドル(約11万円)を支払うというものだった。
ベーシック・インカムは、かつてはマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)やイーロン・マスク(Elon Musk)のような、シリコンバレーの大富豪だけが支持するあり得ない政策と言われてきたが、ヤンの提案以来、連邦議員からも支持を得ている。
ベーシック・インカムの提案は16世紀まで遡ることができ、トマス・ペイン(Thomas Payne)やマーティン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King, Jr.)など、幅広い指導者によってアメリカの歴史のなかで度々取り上げられている。新型コロナウイルス対策の救済法によってアメリカで給付された1200ドル(約13万円)の小切手も、臨時とは言え、本質的にはベーシック・インカムだ。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)