チェコ・プラハの工場に導入されたロボアーム。センシング技術や自動運転まで活用したインテリジェント・オートメーションの大波が押し寄せようとしている。
REUTERS/David W Cerny
- ラックス・キャピタル(Lux Capital)のシャヒーン・ファルシュチによれば、思考能力を備えた知能ロボットなどによる自動化の新たな波がサプライチェーンを変えようとしている。
- 工場や倉庫、物流関連の企業は、人件費を抑えて生産性を向上させるため、遠からず新たなテクノロジーを導入することになる。
- 先日アマゾンが買収を決め、ラックス・キャピタルも出資する自動運転開発ベンチャー、ズークス(Zoox)もそうしたトレンドの例外ではない。
ラックス・キャピタルのシャヒーン・ファルシュチは、サプライチェーンのロボット化が一気に広まる日がすぐそこまで来ているとみる。
ここ数年のうちに、次世代産業用ロボットや自動運転車両などのインテリジェントマシンを活用した自動化の波が、工場や倉庫、物流企業に押し寄せるという。
こうしたインテリジェント・オートメーションは、コンセプト構想のフェーズを脱し、すでに企業の事業計画のなかで具体的に実行すべきフェーズに移行している。
「もはや可能性のひとつではなく、多くの企業にとって差し迫った問題です。インテリジェント・オートメーションの導入はできることとか、すべきことではなく、もはや既定路線であって、あとは適切なパートナーを探すだけなのです」
ファルシュチによれば、アマゾンが物流倉庫向けロボット開発企業のキバ・システムズ(Kiva Systems)を8年前に買収したのが、来たるべきオートメーションの大波の最初の兆しだったという。
ECプラットフォーム大手Shopify(ショッピファイ)が2019年に物流倉庫オートメーション企業のシックスリバー・システムズ(6 River Systems)を買収したこと、あるいはラックス・キャピタルの出資先でもあるコバリアント(Covariant)などオートメーション関連スタートアップ数社が大規模な資金調達に成功したことも、波が大きくなってきている証左だとファルシュチは語る。
これまでのところ、先進的なオートメーション企業に大きな投資を行ってきたのは数社にとどまる。しかし、以前から似たようなことはあった。クラウドコンピューティングもそうだし、サブスク契約のソフトウェアも、モバイルアプリケーションもそうだ。
「クラウドやソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)、モバイルも最初はニッチな存在でしたが、その後メインストリームに躍り出たのは皆さんがご存知の通りです。そして、オートメーションもそうなります」(ファルシュチ)
物流倉庫オートメーションの開発現場
いまたくさんの新しい企業が物流倉庫のオペレーションや商品の梱包発送業務を効率化しようとロボットの開発に取り組んでいる。
ラックス・キャピタルの出資先のひとつ、コバリアント(Covariant)。
Screenshot of Lux Capital website
例えば、前述のコバリアントは、産業用ロボットが荷箱の中やベルトコンベアの上にある特定の品物を識別し、分類したり箱詰めしたりする作業を円滑化する人工知能ソフトウェアを開発している。
同じく前述のシックスリバー・システムズは、従業員が倉庫内で商品を集めたり、別の場所に移動して梱包したり、移動を効率化する自動運転カートなど、各種デバイスを開発してきた。
ラックス・キャピタルもこうしたトレンドに沿う投資を行ってきた。
すでに紹介したコバリアント以外だと、ベオ・ロボティクス(Veo Robotics)は産業用ロボットと人間が安全に共同作業を行えるようにするコンピュータービジョンやセンシング技術を開発している。
ラックス・キャピタルの出資先のひとつ、Veo Robotics(ベオ・ロボティクス)。
Screenshot of Lux Capital website
また、エヴァ(Aeva)はレーダーやカメラ、LiDAR(ライダー)など数種類のセンサーをまるごとリプレースできる自動運転車両向けのセンサーを開発している。
ラックス・キャピタルの出資先のひとつ、車載センサー開発のAeva(エヴァ)。
Screenshot of Lux Capital website
さらに、ラックス・キャピタルはアマゾンが買収することで合意(2020年6月末)した自動運転スタートアップのズークス(Zoox)にも投資している。専門家たちは、アマゾンがズークスのテクノロジーを最終的に物流オペレーションにも活用すると予測している。
ラックス・キャピタルの出資先のひとつ、自動運転ベンチャーZoox(ズークス)。
Screenshot of Lux Capital website
ファルシュチはズークスとアマゾンの買収合意に直接触れるのは避けたものの、両社の合意がより大きなトレンドの一部であるとみている。
「(この買収は)より広いオートメーション化の動きの典型で、この流れはもはや不可避なのです」
ファルシュチはこの先まだまだ大きなビジネスチャンスがあると指摘する。
大量の労働者を必要とする産業や、離職率が高くて働きたがる人の少ない職種では、人間に代わって仕事をこなすロボットや自動システムがこれから必要とされる。また、企業は既存の物流倉庫や工場を大きな手間なく統合できるテクノロジーを必要としている。
(翻訳・編集:川村力)