丸山珈琲・丸山健太郎さんに聞く「日本のサードウェーブ系コーヒーは生き残れるのか?」

丸山珈琲渋谷店

2019年にオープンした丸山珈琲 エキュートエディション渋谷店。 コーヒーバッグを専門に扱う。

提供:丸山珈琲

大量消費・大量生産に対抗し、一杯ずつ、産地や焙煎、淹れ方にこだわるコーヒーの飲み方は「サードウェーブ」とも呼ばれ、新たなライフスタイルとして一気に広まった。

そんなサードウェーブ・コーヒーの日本の先駆者として知られるのが、1991年に軽井沢から始まった「丸山珈琲」だ。

コロナでほとんどの飲食店が大きな打撃を受ける中、カフェ業界のビジネスモデルはどのように変わっていくのか?コーヒー豆の買い付けで産地を飛び回る創業者・丸山健太郎さんに「コーヒービジネスのアフターコロナ」を聞いた。

5月のEC売り上げは「2.3倍増」

7月上旬に訪れた丸山珈琲 尾山台店。店内はソーシャルディスタンスに配慮したレイアウトになっていた。

7月上旬に訪れた丸山珈琲 尾山台店。店内はソーシャル・ディスタンスに配慮したレイアウトになっていた。

撮影:西山里緒

7月上旬の午後3時。小雨が降るなか、丸山珈琲 尾山台店に行ってみた。ログハウスの中のような温かみのある店内は、ソーシャル・ディスタンスに配慮した座席の配置となり、対面席がなくなっていた。

「夏のスペシャルブレンド」とキャラメル・バナーヌを注文すると、しばらくしてフレンチプレスのガラスポットにたっぷり2杯分入ったコーヒーが運ばれてくる。

ポットからコーヒーを注いで息を吸い込むと、柔らかいナッツのような香りがふうっと鼻を突く。コーヒーを飲みながらつややかなキャラメリゼがかかったケーキを食べていると、お客さんが一人、また一人とまるで雨宿りをするように訪れて、カプチーノやコーヒーを頼んでゆく。

丸山珈琲

丸山珈琲は1991年、長野・軽井沢から始まった。

提供:丸山珈琲

1991年、丸山珈琲は、軽井沢で自家焙煎コーヒー店として始まった。コーヒー豆の生産地、農園、品種などにこだわった「スペシャルティコーヒー」を専門に扱い、日本でも2010年代に起こった高品質なコーヒーのサードウェーブ・ブームを先取りした。

2012年には世田谷・尾山台を足がかりに東京にも進出し、現在、東京の5店舗を含む全12店舗を展開している。2019年には、渋谷・スクランブルスクエアに初めての「コーヒーバッグ専門店」を出店した。

コロナ禍の緊急事態宣言中は東京と神奈川・鎌倉にある計6店舗のカフェ営業を停止。「普段は2月から6月は中米のニカラグアやコスタリカといった国々で豆を買い付けていて、日本には数日しかいないくらい」という丸山さんも、日本に「長期滞在」せざるを得なくなったという。

「私はすごく悩みやすい人間。大切な決断をしないといけない時に『コーヒーのテイスティングがあります』と言われると、本能的についそっちに逃げてしまったりも。コロナで良かったことがあったとすれば『NOW or NEVER』で決断ができたこと。Zoom会議だとムダ口も減って、ダジャレも的確なものしか言わなくなりましたしね(笑)」(丸山さん)

Zoom上で対面した丸山さんは、そう茶目っ気たっぷりに笑った。

丸山健太郎氏

コーヒーの焙煎機を背景に取材に応じてくれた丸山健太郎さん。

提供:丸山珈琲

丸山さんは、コロナはコーヒー市場のビジネスモデルの大きな転換のきっかけをつくったと見ている。

店舗売り上げが落ち込んだ一方で、いわゆる「巣ごもり消費」の需要を受け、オンラインストア(EC)の売り上げは、4月には前年比191%、5月には227%、6月は189%と、激増した。特に大袋のコーヒー豆や、送料無料でポストに届く「Quick Coffee Package」、50〜100個入りの大袋ドリップパックなどが伸びたという。

カフェ成功の鍵は“豆”にあり

豆やドリップパック、紅茶のように飲める「コーヒーバッグ」にも力を入れる。

豆やドリップパック、紅茶のように飲める「コーヒーバッグ」にも力を入れる。

撮影:西山里緒

ここ数年拡大を続けてきたカフェブームは今後どうなるのだろうか? カフェビジネスが成功するかどうかは「豆」が売れるかどうかだ、と丸山さんは語る。

その例として丸山さんがあげたのが、都内のとある“独立系の有名カフェ店”。「行けば喫茶店だけれども、豆の販売にすごく力を入れている」。同じように丸山珈琲でも、店舗の売り上げの半分をコーヒー豆の販売が生み出しているという。

「コーヒーって、はずれた時にすごく悔しい商品なんですよ。豆を100グラム買って、一杯目で『外れたな』と思っても、あと一週間ぐらいは『なんでこんなの買っちゃったんだろう……』って思いながら飲まなきゃいけないじゃないですか。結構シビアなビジネスなんです」(丸山さん)

「豆の販売」がビジネスのカギだと指摘する一方で、日本が欧米から輸入したサードウェーブ・コーヒーの文化は、多くの場合、そのビジネスモデルまでは輸入しなかった、ともいう。

丸山さんによると、欧米で流行したサードウェーブ系コーヒーは、そのブランド力を活かして、ホテルやスーパーマーケットに卸して利益を得るという構図があった。特に欧米では「どんなにヒップ(イケてる)な店をやっていようと、スーパーの棚を取りに行くのは忘れません。スーパーやホテルへ卸すと、何百キロやトンの単位で豆が売れますから」(丸山さん)。

しかし、日本に上陸したサードウェーブ系コーヒー店でスーパーへ卸している店は稀だ。

丸山珈琲

丸山珈琲が何より重視するのは、豆へのこだわりだ。丸山さん自身が産地へ赴き、買い付けを行う。

提供:丸山珈琲

「テイクアウトで1日何百人とこなすカフェはやっていけるかもしれない。けれど、コロナで客足がこれから戻ったとしても7割が限度ではないでしょうか」

2020年からは丸山珈琲も、首都圏の郊外型低価格スーパー「ロピア」で豆の卸販売を始めた。

それを「なぜブランドを安売りするのか」と指摘する業界関係者もいるが、前述のビジネスモデルを熟知しているからこそ、丸山さんは一向に意に介さない。

「不特定多数のお客さんが集まるキラキラの店は繁盛はしますが、お客さんが根無し草になってしまう。一方、豆を売るのは時間がかかるけれども、生涯顧客化するんです。コーヒーブランドは、そこを目指さなければいけない

カフェはこれから「ショールーム」としての役目が大きくなり、豆というリカーリング型商品で、繰り返し訪れてくれる生涯顧客をつくる。この構図をいかに早く作れるかが、ニューノーマル時代に成功する「カフェの方程式」ではないか。

後編へ続く)

(文・西山里緒


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