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- このほどビジネスインサイダー・インテリジェンスとeMarketerが統合され、デジタルトランスフォーメーションに焦点を当てた世界有数の調査会社Insider Intelligenceが誕生した。今後この欄では、eMarketerによるレポートも多数掲載していく。
- この記事はeMarketerのレポートのなかでも特に読まれている「TikTokを活用したマーケティング(Marketing on TikTok)」のプレビュー版。レポート完全版(有料)はこちらから
ユーザー層の中心は10代
アメリカの10代に人気のソーシャルメディア。TikTokのシェアは大きくないが、伸長している。
Business Insider Intelligence
TikTok(ティックトック)はインフルエンサーだけでなく、マーケターや広告主にとってもソーシャルメディアの新たなフロンティアとなっている。
このアプリの前身となるのが、2014年にローンチされ、Z世代を中心に熱心なユーザーベースを築いてきたソーシャルメディア・アプリMusical.ly(ミュージカリー)だ。中国のメディア・IT企業のByteDance(バイトダンス)が、2017年11月にこれを10億ドルで買収し、すでに保有していたアプリTikTokと統合した。
そもそもTikTokとは何か? 簡単に説明すると、縦構図の短い動画を作成できる動画共有アプリだ。動画の長さの基本は15秒で、再生が終わると最初に戻りループする。複数の動画をつなげて60秒までの長さにすることも可能だ。音楽、フィルター、カット割り、ステッカーなどで工夫を凝らしながら、短い尺のなかでクリエイティビティを発揮できる。
これまでのところ、このプラットフォームは目覚ましい成長を遂げている。TikTokと中国版のDouyin(ドウイン)を合わせた月間アクティブユーザー(MAU)は、8億人になるというデータもある(2019年10月にマーケティング関連のメディアAd Ageが掲載したTikTokの内部資料の数字)。ちなみに、2018年6月に発表されたインスタグラムのMAUは10億人となっている。
ユーザー層の中心は10代で、アメリカでもこの層の利用が伸びている。市場調査とデータ解析を行うYouGovによる2019年9月の調査では、アメリカの13〜17歳までのティーンエイジャーの2%がTikTokを「最もよく使うソーシャルメディア・プラットフォーム」として挙げている。
この流れは2020年にさらに加速することが予想され、企業によるTikTok活用の機が熟したと言える。今までのTikTokを活用したマーケティングは、かなりの効果を上げている。このプラットフォームをいち早く使った広告主やマーケターが先発者利益を得た形だが、これからでも参入の余地は大いにある。
TikTokマーケティング・広告のトレンド
以下に、2020年におけるTikTokを活用したマーケティングと広告の3つのトレンドを記す。
企業はモバイル機器で閲覧するソーシャルメディア向けの動画広告制作に積極的になっている。
Business Insider Intelligence
1. 広告主はソーシャルメディアにさらに多くの資金を投入する
eMarketerの予想では、アメリカのマーケターが2019年度にデジタル動画広告にかける費用は345.7億ドル(約3.7兆円)で、前年比で27.1%の増加だ。ソーシャルメディアでの広告費の割合も拡大している。
そして、企業はモバイル機器で閲覧するソーシャルメディア向けの動画広告制作に積極的になっている。例えばチョコレート・メーカーのゴディバは、従来の購買層よりも若い2、30代の消費者にリーチするため、正方形や縦構図の短い動画広告に力を入れている。
ショートビデオの人気も急上昇中だ。世界に先駆けて中国でこの傾向が顕著になっており、エンターテイメント系モバイルアプリのなかで、利用時間のシェアを伸ばしている。
2019年度の第2四半期には、中国のビッグデータ分析企業、极光 (オーロラモバイル)社の報告によると、ユーザー1日あたりのモバイル機器利用時間の38.5%がショートビデオの視聴に費やされたという。こうした動画は、ビデオ・オン・デマンド、動画配信サービス、ゲーム、音楽などのコンテンツ利用時間のパイを奪っている。
エンゲージメントの面でもTikTokは目を見張るものがあり、視聴回数が数百万にのぼることも珍しくないことからマーケターの注目を集めている。例えば、コスメブランドのMACは2019年9月に3人のTikTokインフルエンサーと組んで、「#YouOwnIt」というハッシュタグチャレンジを行った。6日間のキャンペーン期間中63万5千本の動画が作られ、総再生数はおおよそ16億回にもなった。
2. クリエイターは、YouTubeから他のソーシャルメディアやライブ動画配信サービスへシフトする
ショートムービー人気の拡大とともに、TikTokアプリのダウンロード数も増加した。
Business Insider Intelligence
Z世代は、今後ますます購買力を伸ばしていく層だ。彼らのコミュニケーション・スタイルに合わせる形で、企業は消費者へのアプローチ方法を変えている。広告主はハッシュタグチャレンジやトップ画面広告など、TikTok特有のフォーマットを活用している。
自己表現のためにデジタルツールを使いこなす若い世代が、存分にクリエイティビティを発揮できるツールのひとつが、TikTokだ。動画を見て「いいね」を押したりコメントをしたりするだけでなく、気軽に動画を作り、共有できる仕掛けに富んでいる。このプラットフォームを活用することで、企業はユーザー生成コンテンツで自社製品をアピールするという、これまでにないアプローチが可能になった。
YouTubeを使った企業キャンペーン動画は3〜5分、または8〜11分程度であることが多い。それに対し、TikTokの動画は15〜60秒。最初の数秒でいかに視聴者の心を捉えるかが重要となってくる。
最近の視聴者、特にZ世代は1つのコンテンツの消費時間をできる限り短くしたいと考えている。YouTubeなど他のプラットフォームと比較して、TikTokでは視聴者が飽きる前に簡潔に自社製品の認知を図ることができる。
3. 今後の新規プラットフォーム登場で試されるTikTok人気
ますます多くの人やブランドが注目するTikTokだが、認知度の高まりは必ずしも利用の増加を意味しない。TikTok動画は、TwitterやFacebookなど他のプラットフォームでも簡単に見ることができるため、わざわざ専用アプリを立ち上げなくてもよいと感じている利用者もいる。
ビジネスインサイダーによる2019年1月の調査では、13〜21歳のZ世代のインターネット・ユーザーのうち、毎日TikTokをチェックすると答えたのはたった11%だった。これはインスタグラム、YouTube、SnapchatそしてFacebookと比べてかなり低い。
また、進化を怠れば、TikTokもVineのような運命を辿るかもしれない。初めのうちこそユーザー・エンゲージメントが高かったVineだが、「新しさ」が薄らぐに従い、他のプラットフォームとの競争から脱落していった。これを避けるためには、利用者を惹きつけるための努力が不可欠となる。
eMarketerによる調査レポート「TikTokを活用したマーケティング(Marketing on TikTok)」では、急伸するこのプラットフォームがブランドや広告主にどのように活用されているのかを解説する。中国発のショートムービー・アプリTikTokの世界各地での成長について論じ、マーケターが押さえるべき情報を提供する。
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[原文:Analyzing Tik Tok user growth and usage patterns in 2020]
(翻訳・野澤朋代、編集・佐藤葉)