ロブ・ジェンセンと妻のダイアナ。
Rob Jensen
- ロブ・ジェンセンは、1990年代にシリコンバレーでソフトウェア・セールスエンジニアとしてキャリアをスタートし、そこで現在の妻であり、ビジネス・パートナーであるダイアナと出会った。
- 多くの新興企業と同様に、テスタロッサ・ワイナリーは1993年にカリフォルニア州ロスガトスのジェンセン宅のガレージから始まった。
- ビジネスの成功に向けて何十年も働いた後、パンデミックによって収益が50%も減少し、テスタロッサはスタッフの85%を解雇せざるを得なくなる。
- シリコンバレーから学んだスキルを活用して、ジェンセン夫妻は、ビジネスを存続させるために戦っている。
- ロブがライターのモーリー・オブライエンに語った物語を紹介しよう。
私の夢は、顧客に思われているような楽な生活をすることだ。生活を楽に見せるためには、大変な努力が必要だが、幸いなことに25年以上もワイン造りをしていると、忍耐力が身についてきた。
2019年12月には、記録的な収益とこれまでで最高の評価を得たワインで1年を締めくくることができ、2020年1月には、カリフォルニアの「Connoisseurs' Guide」で「ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」として表彰された。
もちろん、これほどよいことが長く続くはずがない。わずか数週間後の3月には、我々はビジネスを存続させるために戦っていた。コロナウイルスのパンデミックで直面した最大の困難は、テイスティング・ルームと接客のチャンネルをすべてシャットダウンし、状況がよくなるのをただ待っていることだった。
テイスティングをするワイン醸造責任者のビル・ブロッソー。
Rob Jensen
だからこそ、特に今考えるべき最も重要なことは「時間」だ。「時間」と言っても、「分」「時」の単位ではなく、「数十年」のスパンの話だ。何かを本当に価値のあるものにするための「時間」は、適切な敬意を払われていない。時間は投資だ。
ワイン作りでは、土地を取得した後、1年ほど土地の整備に費やし、ブドウの木を植え、ブドウが育つまでに最低でも約3年かかり、ブドウを摘んでワインを仕込んだ後も少なくとも9カ月は樽で熟成させなければいけない。最初のボトルを販売できるようになるまで5年から6年はかかるだろう。
カリフォルニアにあるテスタロッサ・ワイナリーのエントランス。
Rob Jensen
率直に言うと、あなたが事業計画を立てたとしたら、とにかく予想される費用を3倍にし、利益が出るまでの期間を3倍にしたほうがいいだろう。ワインビジネスのロマンは媚薬だ。今のことを考えるのではなく、将来どうなるかを意識する必要がある。自分で作ったワインをどうやって売るのかも考えなければいけない。多くの人が、意図もなく、利益を上げることを期待もせず、「楽しみ」のためにワインビジネスを始める。残念ながら、適切な計画を立てずに、心、魂、そしてこれまでの人生の貯金をこのビジネスに注ぎ込む人があまりにも多いのを私は見てきた。
テスタロッサのワインタンクと樽。
Rob Jensen
我々は常にワインの品質向上を目指している。チームのメンバーは全員、ヴィンテージにふさわしいワインを作るためのアイデアを提出しなければいけない。醸造責任者と私は、その中からいくつかのアイデアを選んで試してみる。成功すれば、新しいワインとして継続な製品になる。思いついたことを試してみると、ワインの風味が新鮮で楽しいものになることがある。
収穫期、我々はブドウ園で早朝に収穫する。なぜなら、ブドウ園からワイナリーまで100マイル以上も移動する間、ブドウは可能な限り低温である必要があるからだ。ワイナリーに着いたら、ワインを作る作業を始める。ブドウの中から、熟しすぎた実や熟していない実を選別し、虫や携帯電話、ブリトーなどを探す(それらは本当に収穫箱に入っていたことがある)。
ブドウの選別作業。
Rob Jensen
そう、ブリトーだ。インターンがブリトーを見つけた時、彼は自分のことをとても誇りに思っていました。私は厳しい目で彼に近づき、「市場を席巻するようなチポトレ(メキシコ料理に使う香辛料)風味のシャルドネを開発できたのに、ブリトーを捨てたのか」と言った。彼は取り乱したような顔をしていましたが、私は冗談だと伝えた。その品種は他の誰かに任せよう。
テスラロッサのワインボトル。
Rob Jensen
この20年間、ワイン業界で学んできたことを締めくくるために、私のお気に入りの、よいワインを顧客と共有したいと思っている。成功のための準備を整え、予期せぬ事態に備えることができている限り、ワインを作ることも含めた、どんなベンチャーにも取り組む価値がある。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)