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志望動機もESもいらない「新しい就活様式」。大学生とカジュアル面談をする企業の狙い

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コロナショックで就活の形も大きく変化している。

撮影:今村拓馬

新型コロナウイルスにより、面接がオンラインに切り替わったり、SNSなどオンラインでの情報収集が主流になったりと、就職活動にも変化が起きている。

そんなウィズコロナ時代に、これまでの就職活動にとらわれない、「新しい就活様式」も生まれつつある。

SNSによる転職マッチングサービスWantedly(ウォンテッドリー)は、新しい就活様式として、「カジュアル面談」や「エントリーシート、志望動機の必要がないマッチング」などを企業に提言。この取り組みには72社が賛同している(7月10日現在)。

コロナで変化を迫られている就職活動だが、新たな取り組みは浸透するか?

新しい就活様式を実践している、企業の採用担当者に聞いた。

「会ってやるからエントリーシート出せ」ではない

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「できる限り多くの学生とカジュアル面談を行っている」と話すグッドパッチの小山清和氏。

撮影:横山耕太郎

「就職活動では企業側が上というヒエラルキーを感じがち。会ってやるから、エントリーシートを出せ、事前に調べて、志望動機をまとめて来い、と。

でも本来はもっと学生と企業はフラットであるべきだし、企業側も学生から試されていると思っています」

グッドパッチで、2016年10月から人事を務める小山清和氏はそう話す。

グッドパッチは2011年設立の、家計簿アプリの「マネーフォワード」などのUI(ユーザー・インターフェース)、UX(ユーザー・エクスピリエンス)デザインを手がけたデザイン会社。

2020年6月30日に東証マザーズに上場を果たしたばかりだ。

毎年、新卒の大学生は10人前後を採用。現在は、2021年に卒業する大学生の採用活動や、2022年卒向けのインターンの準備をしている。

学生にカジュアル面談、通年で実施

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グッドパッチのカジュアル面談では、志望動機などは基本的に質問しないという。

撮影:今村拓馬

グッドパッチの採用活動では、時期を定めた正式な面接だけでなく、希望者には通年でカジュアル面談を実施している。

「中途採用の希望者はもちろん、私個人のTwitterに連絡をくれた学生とも会っています。匿名のTwitterアカウントで、素性の分からない学生と会うこともあります」(小山氏)

グッドパッチがカジュアル面談に取り組む目的は、まずは志望者を増やすことにある。そのため、面談や面接では会社を知ってもらうことを重視するという。

「面談を通じていかに意欲を上げるかを重視しているので、一方的な会社説明は行わないようにしています。もっと会社のことを知りたいと思ってもらえるかがカギです。

志望動機は選考を受ける中で決まったり、変わったりすることもあるので、いきなり最初の面談では聞きません」(小山氏)

課題だった高い離職率

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グッドパッチでは、高い離職率が課題だったという。

撮影:今村拓馬

上場も果たしたグッドパッチだが、一時は離職率が40%を超えていたこともあり、社員の定着が課題だった。

「就活では残業時間とか、離職率を聞いてはいけないという話も聞きますが、そのような質問をしても全く構いません。

学生からは、『こんなフラットに話してくれるんですね』と言われることがありますが、フラットに話をして、違和感があったら辞退した方が、ミスマッチも防げます。


今は離職率も減って8%ほどです。就活はあくまで入口。入ってから活躍することを大事に考えています」(小山氏)

問われるのは「企業のブランド」

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土屋鞄製造所で採用担当を務める西島悠蔵氏。パイロット出身という変わった経歴を持っている。

撮影:横山耕太郎

新型コロナウイルスにより、対面での企業説明会が中止になったことで、Twitterや企業の採用HPなど、オンラインでの情報収集が増え、企業側にも変化が求められている。

「就活に関する情報が氾濫している今だからこそ、企業のブランドが問われるようになっています。

個人のSNSやオフラインイベントなど、どこを切っても、その会社の大事にしていることが感じられる状態にしたいと思っています」

2019年から、土屋鞄製造所で採用担当を務める西島悠蔵氏は、変わる就活についてそう話す。

土屋鞄製造所は1965年創業の老舗メーカーで、社員数は651人(2020年4月現在)。

西島氏は、ANAパイロットからリクルートキャリアへ転職、その後、ベンチャー企業・ベルフェイスで人事担当を務めるなど、異色の経歴を持つ。

Twitterではあえて「しょうもないこと」も

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Twitterは、企業側にとっても就活情報の重要な発信ツールになっている。

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これまで土屋鞄製造所は、中途採用の社員が多く、新卒の比率は約10%。

新卒採用は毎年、数人のみだったが、2021年卒の学生は数十人規模で採用を行う予定という。

これまでは中途採用に頼っていた部分も多いが、新卒採用を増やし人材育成を行うことで、より社内の実情を理解した人材が、事業や運営に関わることを目指している。

西島氏は採用ツールとして、Twitterを使用。フォロワーは1万1000人を超えている。西島氏も大学生からの面談希望には、できる限り応じているといい、月に十数人とカジュアル面談することもある。

「Twitterではあえて『しょうもないこと』もつぶやいています。

人事のアカウントはの多くは『いいこと』ばかりつぶやいていることも多い。ですが、私は人間味を感じられるように、なるべく自然体での発信を心がけています」

西島氏のTwitterには、最近見たドラマや好きな音楽についてなど、プライベートに関する投稿も多い。

オンラインとオフライン両面で

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撮影:今村拓馬

オンラインでの情報発信は、これまでは届きにくかった地方の学生にも届けやすいというメリットを感じているという。

2021年卒の現状の入社予定者を見てみると、関東に住む学生は1~2割で、残りは地方や海外の大学に通う学生だという。

現代の就職活動では、オンラインとオフライン両面でのアピールが必要だと、西島氏は考えている。

「企業は、オンラインコミュニケーションでSNS強化をするだけでなく、リアルの場でちゃんと会った時にも、学生を感動させる必要性が増しています。

オフラインでの接点として、カジュアル面談もそうですし、今後は社内の転職経験者が登壇する就活イベントや、大学生と一緒になって企画するイベントも進めていきたいと思っています」

「新しい就活様式」が求められている背景には、就職氷河期以降、企業が採用に有利な「買い手市場」が続き、「企業本位」の採用活動が行われてきたことへの反動がある。

就活生は「企業が求める就活生像」に近づくために、エントリーシートの書き方、面接対策、過去問題とありとあらゆる対策マニュアルに頼るようになり、面接の様子もSNSを通じた口コミで可視化されるようになった。

「自己分析」と「志望動機」がマストとされるような、紋切り型の就活は「形骸化している」(人材サービス業界関係者)との指摘は少なくない。

ただ採用目標を満たす、内定を取ることが目的化しては、その先の本当の仕事もキャリアも続かない。

「新しい就活様式」に限らず、企業と学生がよりフラットにコミュニケーションをとれるような就活の形が求められている。

(文・横山耕太郎)

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