テスラが驚異的な株価上昇を続け、時価総額で世界の自動車メーカーの首位に立った。
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- テスラの株価が急騰を続けている。
- モルガン・スタンレーの調査レポートは、1500ドル超でテスラ株を買う人たちは、テスラとその競合企業、経済環境について、疑問の余地のある4つの「賭け」をすることになると指摘する。
- そうした人たちはつまり、アメリカと中国がいまより穏やかな貿易関係に落ち着き、他の自動車メーカーやテクノロジー企業との競合関係が緩和され、テスラの自動運転技術がここ数年のうちに大きな利益を生み出す、と見込んで投資することになる。
テスラの株価は2020年に入ってから半狂乱状態で、3月18日の終値373ドルから7月15日の始値1575ドルへと4倍以上に跳ね上がっている。
しかし、モルガン・スタンレーの調査レポートによれば、1500ドルあるいはそれ以上かけてテスラ株を買う人たちは、テスラとその競合企業、経済環境について、大いに疑わしい4つのシナリオが現実になると想定して投資を行うことになる。以下がその「4つの仮定」だ。
- 米中両大国は、貿易と知的財産権の問題について長期的に良好な関係であり続ける
- レガシー自動車メーカーは競争力のある電気自動車(EV)の開発に失敗する
- アマゾン、グーグル、アップルなどテック大手は競合するEVシステムを開発しないか、開発に失敗するか、あるいはテスラの技術提供を受ける
- テスラの自動運転サービスが、次の3〜5年あるいは5〜10年、相当な利益(ユーザー1人あたり月額50〜100ドル)を生み出す
モルガン・スタンレーは、これら4つのシナリオが同時に実現する可能性について疑念を呈する。
「米中関係は自動車(関連の関税や輸出管理)についての懸念を払拭できない。レガシー自動車メーカーは今後5年間で総額4000億〜5000億ドルをEV開発に投じるだろう。テック大手もEV分野で圧倒的な競争力をもって輸送産業に進出してくる。そして、完全自動運転が次の10年で浸透するパーセンテージについて、われわれはきわめて控えめな見通し(=2030年までに全走行距離の0.3%以下)をもっている」
テスラの株価はここ数年、ゼネラル・モーターズ、フォード、フィアット・クライスラーを上回る額で推移している。7月前半にはトヨタ自動車の時価総額を上回り、自動車メーカー全体で首位に立った。
テスラ株価の推移。コロナ危機で一時沈むも、ここ数週間は1500ドル前後で推移している。
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投資家からの信用がうなぎのぼりの理由は、テスラが創業以来初めて3四半期連続の黒字決算を記録し、当初のスケジュールを数カ月前倒ししてSUV「モデルY」の生産開始に至ったこと、2020年第2四半期の出荷台数がアナリストの予想を上回ったことだ。
それにしても、モルガン・スタンレーはテスラ株がここ数週間で大量に取り引きされたことに当惑している。調査レポートにはこう記されている。
「われわれとしても、これだけの尋常ではない数量のテスラ株をどんな投資家が取り引きしたのか突き止めようと努力したが、残念ながら、どこからこの量が出てきたのかこれまでのところまったくわかっていない」
(翻訳・編集:川村力)