Jリーグ・サガン鳥栖「CG活用」生配信番組スタート。スタジアム入場制限による多様な損失をカバー

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7月9日の無料配信ではサガン鳥栖の金明輝監督(左)がゲストに登場した(※画面の一部を加工してあります)。

出典:サガン鳥栖公式ホームページより。

Jリーグ・サガン鳥栖は、動画配信サービス「SAGAN TO STREAM(サガントストリーム)」の有料配信を19日から開始すると発表した。チームの公式ホームページにある配信ページから視聴できる。

Jリーグのリーグ戦、カップ戦の試合翌日に、監督や選手をゲストに呼んで生配信し、視聴者はコメントを送ったり、アンケートに参加することができる。

佐賀県鳥栖市内にあるスタジオでグリーンバック(=CG映像向けに編集しやすいよう背景を緑色にして撮影)を使って制作しており、CGを組み合わせた凝った作りになっている。

第1回の有料配信は19日19時から、サガン鳥栖の人気選手で元日本代表のFW豊田陽平選手が登場する予定となっている。視聴チケットは1枚500円。

Jリーグでは各チーム公式の映像配信が増えている

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7月11日、アルビレックス新潟のPlayer!を用いた生配信応援番組では、試合後に選手たちが飛び入りで参加していた。

出典:Player!のスクリーンショット

サガン鳥栖といえば、2019年度決算で約20億円の赤字を計上するなど経営に苦しんでいる。高年俸選手の放出や第三者割当による増資により、当面の債務超過は回避したものの、苦しい経営状況が続く。

サガントストリームのような取り組みを行うことで、入場者数制限で失われる収入を少しでもカバーできる上に、スタジアムで観戦できないファンやサポーターたちに楽しんでもらう機会を提供できる。

他のJリーグクラブチームでも、InstagramやFacebook、TwitterなどSNSを利用して、それぞれ独自の動画コンテンツの制作や生配信が広がっている。

また、新型コロナウイルスによる無観客試合をきっかけに、ギフティング(投げ銭)などITプラットフォームサービスを活用した新たな応援手法が広がっている。

「Player!(プレイヤー!)」や「Engate(エンゲート)」を用い、試合映像はテレビ中継やネット配信で視聴してもらい、現役を引退したチームOBらが解説する生配信番組が増えている。

ただ、サガン鳥栖のように、現役選手や監督が直接生番組に登場して試合を振り返るものはきわめて珍しい。

筆者が確認した範囲では、J2アルビレックス新潟のプレイヤー!を用いた応援生配信番組で、試合終了後に出場選手が短時間登場したケースは確認できたが、サガントストリームのような凝った映像演出を伴うものではなかった。

出典:アルビレックス新潟YouTube公式チャンネル

試合の振り返りだけでなく、人生相談コーナーまで

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サガンストリームはシンユニティの制作協力により、CGを用いた番組演出がされている。JoinVisualという同社のオリジナルシステムが使われている。(※QRコードの箇所はモザイクをかけました)

出典:サガン鳥栖公式ホームページより。

サガントストリームの有料配信を前に、7月9日と13日には無料で生配信を行った。9日の生配信には、金明輝(キン・ミョンヒ)監督がバーチャルスタジオに登場し、その前日8日に行われたヴィッセル神戸との試合(0対1で敗戦)を振り返った。

画面上に表示される視聴者からのコメントには、チームや選手たちへのエールが書き込まれていた。金監督への質問やアンケート、人生相談といったさまざまなコーナーがあり、単なる試合の振り返りだけではない楽しませる内容となっていた。チーム広報によると、「想定した300人をはるかに超える視聴者数」だったという。

地元テレビ局も応援番組を流しているが、サガントストリームの強みは、佐賀から離れた土地に住むファンやサポーターが、チームからの直接の情報発信を受け取れることだ。

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7月9日の番組では、金監督への人生相談コーナーがあり、コメント欄に多くの書き込みがあった(※画像の一部を加工してあります)。

出典:サガン鳥栖公式ホームページ

サガン鳥栖の竹原稔社長は、新サービスの背景についてこう説明した。

「コロナとの戦いがまだ長く続く中で、このような双方向のコミュニケーションを構築して、新しいファンコミュニティを作りたいという狙いがあった。(番組を通じて)試合の場面だけではない、その裏側にある選手や監督の深層心理を知ることで、リアルな場面がより面白くなる」

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サガントストリームに期待するサガン鳥栖の竹原稔社長。

出典:7月9日に行われたオンライン会見をスクリーンショット。

サガントストリームの映像制作には、バーチャル演出事業を手がける「シンユニティグループ(SYMUNITY GROUP)」が協力している。チームスタッフを含めた約5人で番組作りを行う。

シンユニティはプロジェクションマッピング、バーチャルプラットフォーム「cluster(クラスター)」を使ったバーチャル空間演出、カメラトラッキングの技術を持つ。過去には、太陽の塔や姫路城などでプロジェクションマッピングを行った実績がある。

サガントストリームで使われている、シンユニティグループのオリジナル技術「Join Visual」。

出典:シンユニティグループYouTube公式チャンネル

シンユニティの長崎英樹取締役は、期待を込めた。

「こういった配信映像はJリーグで初めて行う。スタジオのグリーンバックを活用して、背景もドンドン変えられる。今回は話が決まってから実際の制作まで時間がなかったこともあり、2Dがベースの映像となったが、今後は3D空間映像など凝った映像演出も考えていきたい」

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サガントストリームの映像制作に協力するシンユニティグループの長崎英樹取締役。

出典:オンライン会見(7月9日)スクリーンショット

試合に負けても選手や監督は番組出演する?

7月8日にリーグ戦、サガン鳥栖対ヴィッセル神戸が行われ、鳥栖は0対1で敗北。

JリーグのYouTube公式チャンネル

優れた映像演出や番組作りができても、毎試合後に監督や選手が出演するのは大丈夫なのか。勝った時は良いかもしれないが、負けた時、あるいは不甲斐ない試合内容だった時、試合に出場した選手は出演に気が進まないこともあるのではないか。

「万が一、連敗が続いたらどうする、というのはあります。怖いですよね。でも、それを考えたら(ファンやサポーター向けの取り組みが)何もできない。もちろん、サポーターの皆さんとしては、勝った後に番組を見たいと思うのは当然だと思います」(チーム広報)

ただ、サガン鳥栖サポーターは「どこのクラブより温かい」のだという。ここ数年は負け数が多く、残留争いに巻き込まれることが多いにもかかわらず、サポーターたちは温かい声援を送ってくれる。

「負けたから現役選手たちが番組に出ない、というのではなく、負けても皆で励まし合って頑張ろう、となる番組を作れたらと思います」(チーム広報)

とはいえ、生配信で応援コメントが画面上に表示される仕組みだと、選手への誹謗中傷が投稿される可能性もなきにしもあらずだ。

「どうするかという議論はありました。今のところはコメントをダイレクトで画面に流し込んでいますが、(作り手側も)見られるようになっているので、今後の利用状況次第では、取捨選択を行う可能性もあります」(チーム広報)

もちろん、チームが勝てればこういった心配をする必要もない。リーグ戦は4節まで終わり、サガン鳥栖は2分け2敗と未勝利。7月18日に名古屋グランパスと対戦する。

初勝利をあげ、翌19日に行われる有料配信1回目を、ファンやサポーターたちは気分良く見ることができるのか。チームの奮起が期待される。

(文・大塚淳史)

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