自動運転業界ではレガシー自動車メーカー、スタートアップを問わず、急速な統合が進んでいる。
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- 自動運転業界に大きな資金が流れ込んでいる。
- 技術開発が進むほど、資金の行き先はしぼられてくる。
- 新型コロナウイルスの世界的大流行は、業界内の統合の動きを加速しそうだ。
自動運転業界で統合の動きが進んでいる。巨額の投資が注ぎ込まれて泡立つほどの市場だったが、いまは静かにぐつぐつと煮え、来るべきときに向かっている状況だ。
自動運転を開発する企業はこれまでのところ多くが収益化に至っておらず、投資家たちは資金の投入先を慎重に見きわめるようになっている。
業界に流れ込む「投資額」は過去7年間増え続け、2020年もそうなるとみられるものの、その資金を受け取れる「企業の数」はすでにピークを超えている。
2018年に資金調達に成功した自動運転開発企業は163社。2019年には150社に減り、2020年についてはこれまでのところ72社。新型コロナウイルスの大流行によってもたらされた大きな経済損失のために、取捨選択はさらに加速するだろう。
金融情報サービス「ピッチブック(Pitchbook)」のデータにもとづき、ここまで最も大きな資金を調達してきた自動運転スタートアップ10社を、他の競合との差別化ポイントとともに紹介しよう。投資家がなぜその企業に資金を投じたのかもわかるはずだ。
【第10位】プラスAI(PlusAI)
サニングドットコム(Suning.com)とプラスAI(PlusAI)が開発した自動運転トラック。2018年、中国・上海にて。
Visual China Group via Getty Images/Visual China Group via Getty Images
資金調達総額:2億ドル
最新の評価額:10億ドル
大型商用車両向けの自動運転技術を開発。人工知能、コンピュータービジョン、センシング技術、機械学習などのテクノロジーを用いることで、トラックの輸送効率と収益率向上を進めている。
【第9位】ダイナミック・マップ・プラットフォーム(Dynamic Map Platform)
ダイナミック・マップ・プラットフォーム(Dynamic Map Platform)の技術紹介動画より。
Dynamic Map Platform YouTube Official Channel
資金調達総額:2億1850万ドル
最新の評価額:不明
自動運転向け高精度3Dマップのデータマネジメント技術を開発。同社の3Dマップを自動運転あるいは先進運転支援システムに組み込むことで、交通事故の削減、(身体機能など)移動制約のある人へのサポート、自動運転の社会実装時の渋滞緩和による環境負荷低減が可能になる。
【第8位】ウィーライド(WeRide)
WeRide(ウィーライド)の自動運転タクシー。中国広東省・広州市内にて。7月10日に公道試験の許可を受けている。
Yilei Sun/Reuters
資金調達総額:2億3700万ドル
最新の評価額:5億9300万ドル
安全かつ安定的、しかも使い勝手のいいモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)向けの完全自動運転車両を開発中。機械学習を使って、人間による介入を必要としない自動運転オペレーションを実現する。LiDAR(ライダー)、光学カメラ、レーダーと人工知能を組み合わせて走行環境を認識し、目的地まで最短かつ最も安全な経路をナビゲートする。
【第7位】イノビズ・テクノロジーズ(Innoviz Technologies)
イノビズ・テクノロジーズ(Innoviz Technologies)のソリッドステート型LiDARセンサー「InnovizOne(イノビズワン)」。
Daviud Mcnew/AFP via Getty Images
資金調達総額:2億6400万ドル
最新の評価額:5億7500万ドル
正確なマッピングと位置特定を実現するリモートセンサーおよびシステムを開発。完全自動運転車両向けに、スマート3Dリモートセンシングと車両周囲のリアルタイム3Dイメージを提供する。同システムを実装すれば、どんな車両でもセンサーシステムをシームレスに統合運用することで正確なマッピングが可能になる。
【第6位】クアナジー(Quanergy)
Quanergy(クアナジー)の技術解説シーン。
Robert Lever/AFP via Getty Images
資金調達総額:3億2510万ドル
最新の評価額:23億ドル
自動運転車両にスマートセンシングを提供するソリッドステート型センサーを開発。高精度マッピングデータをリアルタイムで取得・処理し、物体の検出・追跡・分類を行える。先進的な人工知能を活用した認知ソフトウェアを用いるセンシングシステムを実装することで、自動運転の安全性と効率性を改善できる。
【第5位】トゥーシンプル(TuSimple)
TuSimple(トゥーシンプル)の自動運転トラック。
Courtesy of TuSimple
資金調達総額:4億790万ドル
最新の評価額:12億ドル
トラック業界の安全性と効率性を向上させる自動運転技術を開発。高精度のヴィジュアル・ポジショニング(=画像を通じた位置特定)技術と複数のセンサーを統合したシステムを用いて走行ルートの周辺環境をスキャンするカメラ群を搭載した同社の自動運転トラックは、安全性の向上や輸送コストの削減に加え、CO2排出量の削減にも寄与する。
【第4位】ポニー.ai(Pony.ai)
Pony.ai(ポニーAI)の自動運転テスト車両。2018年、中国・上海にて。
STR/AFP via Getty Images
資金調達総額:7億2600万ドル
最新の評価額:30億ドル
自動車メーカー向けの自動運転技術を開発。同社の自動運転プラットフォームは、人工知能とアルゴリズムを活用して車両の周辺環境を正確に認識し、変化を予測。ドライバーはそれに応じて車両を操作できるようになる。そのため、自動車メーカーは効率的に自社製車両の機能と安全性を改善できる。
【第3位】オーロラ・イノベーション(Aurora Innovation)
Aurora Innovation(オーロラ・イノベーション)の自動運転技術を実装したテスト車両。
Aurora Innovation
資金調達総額:7億6560万ドル
最新の評価額:31億ドル
自動車メーカー向けの自動運転技術を開発。先進的な機械学習ソフトウェアとハードウェア、カメラとレーダー、LiDARの組み合わせを活用して自動運転を実現することで、公道の安全性を向上させ、モビリティへのアクセスを改善する。
【第2位】ニューロ(Nuro)
物資宅配サービスに使用されるNuro(ニューロ)の第2世代テスト車両「R2」。
Nuro
資金調達総額:10億ドル
最新の評価額:27億ドル
生活の利便性を向上させる一連のロボティクスを開発。物資を迅速安全に、なおかつ安価な利用料金で配送する自動運転車両もラインナップに含まれる。
【第1位】アルゴAI(Argo AI)
フォードとArgo AI(アルゴAI)の自動運転テスト車両。2019年、米デトロイトにて。
Jeff Kowalsky/AFP via Getty Images
資金調達総額:26億ドル
最新の評価額:73億ドル
自動運転技術向けの人工知能ソフトウェアを開発。同社の人工知能テクノロジーはロボティクス開発や自動運転車両向けの人工知能開発に使われ、効率的な自動運転技術の開発に役立つ。
[原文:Investors are placing their biggest bets on these 10 self-driving car startups]
(翻訳・編集:川村力)