慶應がバイオベンチャーと共同で「新型コロナワクチン」開発開始…国内で進む、多様なワクチン開発

リリース

7月20日に発表されたプレスリリース。

撮影:三ツ村崇志

7月20日、再生医療iPS Gateway Center(RMiC)は、慶應義塾大学医学部の岡野栄之教授の研究グループと、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発を目的に共同研究を行う契約を締結したことを発表した。

RMiCは、遺伝子ベクター技術や再生医療技術を開発するバイオベンチャー。もともと慶應大学の岡野栄之教授らを科学顧問として、再生医療の分野で共同研究を行なっていた。

同社や岡野教授の研究室が持つ「人体に無害なウイルスを遺伝子の運び屋(ベクター)として用い、細胞内に導入する技術」(遺伝子ベクター技術)を活用してワクチンの開発が行えることなどから、今回の共同研究が動き出したという。

国内で並行して走るワクチン開発

コロナウイルス

コロナウイルスのイメージ。

Andrii Vodolazhskyi/Shutterstock.com

RMiCが開発に取り組むワクチンは、人体に無害なウイルスに新型コロナウイルスの遺伝子の一部を組み込んだ上で、体内へと投与するタイプのワクチンだ(使用するウイルスの種類は現段階では不明)。

このウイルスが細胞の中に入り込むと、体内で「新型コロナウイルスの遺伝子由来のタンパク質」が生産され、体の免疫システムがそのタンパク質を排除対象として認識するようになる。その後、新型コロナウイルスが体内に侵入して来ると、コロナウイルスの表面にあるタンパク質が目印となって免疫システムに排除される仕組みだ。

「遺伝子を組み込んだワクチン」といえば、大阪大学のバイオベンチャーであるアンジェスが開発し、現在、大阪市立大学医学部付属病院で治験を行なっている「DNAワクチン」がよく話題にのぼる。

ただし、アンジェスが開発しているDNAワクチンは、大腸菌を培養することで得られる「プラスミド」を利用したもので、今回、RMiCが開発するタイプとは異なる。ウイルスベクターを用いたワクチン開発は、国内だと、つくば市にあるバイオベンチャーのIDファーマが先行して研究を行なっている。

国内のワクチン開発状況

国内のワクチン開発状況。(7月13日付の資料)

出典:厚生労働省

アンジェスは、プラスミドを用いた治療薬開発に技術的な経験値を持っていたことから、プラスミドを用いたワクチンの開発に取り組んでいる。一方、RMiCやIDファーマは、ウイルスベクターを用いた技術に経験値を持っていたことから、ウイルスベクターを用いたワクチンの開発にそれぞれ取り組んでいる。

実際にワクチンとして効果が確認されたものがまだ無いため、どれが最も効果的なワクチンとなりうるのかは、現状ではまだ分からない。

RMiCの担当者は、

「ウイルスベクターを使った場合は、細胞の中に入っていきやすい部分で利点があると思います。

一方、プラスミドを用いたワクチンは大腸菌を培養して大量に製造できるのに対して、ウイルスベクターを用いたワクチンは動物細胞を使って製造しなければならないので、手間とコストはかかります」

と、メリットとデメリットを挙げる。

なお、ウイルスベクターを用いたワクチンを投与することで生じうる副反応は、既存のワクチンと大きく変わらないと考えているという。

試験管

研究開発のイメージ。

motorolka/Shutterstock.com

7月20日の段階では、まだ共同研究を行うことが発表されただけであり、動物実験の開始時期など、具体的な開発計画は調整中だ。

いまだ、新型コロナウイルスは猛威をふるい続けている。

いくつも候補がありながら、まだ特効薬と言えるほど効果的な治療薬は見つかっていない。同じように、現在世界各地で開発されているワクチンも、どれがうまくいくかは分からない状況だ。

仮に海外でワクチンが実用化されても、それが日本にやってくるまでには時間がかかるはず。ワクチンの供給を海外企業に頼ることは、国際社会を生き抜く中でも大きなリスクだ。

だからこそ、国内企業の中でさまざまなアプローチからワクチンの研究開発を進めることは、ウィズコロナ時代に必要不可欠な取り組みだといえる。

文・三ツ村崇志

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