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前代未聞の「コロにゃ危機」にネコがZoomでリモートワークする理由

「リモートワーク」に励むねこたちに迫った。

「リモートワーク」に励むネコたちに迫った。

撮影:西山里緒

「ネコもコロにゃショックで、新しい働き方をしにゃいと!?」

“ネコのリモートワーク”を掲げて、Zoomでネコたちの様子を配信しているカフェがある。そのゆるふわなタイトルの裏には、コロナ禍で大きな経済的打撃を受ける「保護猫カフェ」の実情があった。

ネコもZoomで「オンライン会議」!?

ねこが働いている様子。

ネコがリモートワークで働いている様子。

あ〜、自分もこんな風に働きたい……」と思ってしまう“ネコの働き方改革”、「Remote Cats」。その実態はZoomと連携したYouTubeから、ネコの様子がライブ配信されているだけというシンプルなものだが、SNSを覗いてみると、そんな働き方にも一定のニーズはあるようだ。

「スタッフさん(ネコ)が57分頃から消えてしまったのですが、大丈夫でしょうか……」「見ていたら眠くなってきました。布団にゴロンします」

「どこに隠れているのかニャ?」と探すのも、楽しい。

「どこに隠れているのかニャ?」と探すのも、楽しい。

配信の様子を見るため、東京・御茶ノ水にある保護猫カフェ「ネコリパブリック東京お茶の水店」を7月上旬に訪れた。夕方過ぎだったが、カフェ内には何人かの人がまだ残っていて、彼ら/彼女たちの毛づくろいを邪魔しないように抜き足差し足しながら、目を細めてネコたちを眺めている。

そんな中、隣の部屋からは「カメラ位置おかしくない?」「配信準備できてる?」など、スタッフの慌ただしい声が聞こえてくる。むしろ人間たちがネコのためにより一層働く —— それこそがこの“働き方改革”の本質だ。

カメラから離れてしまうねこも。

スタッフの心配をよそに、カメラから離れてしまうネコも。

保護猫の希望者は昨年比10倍に

訪れた時の配信の様子。

動画:Remote Cats #猫もリモートワーク中

なぜ、この突拍子もないプロジェクトが始まったのか?

配信を担う「保護猫カフェ ネコリパブリック(以下ネコリパ)」の目標は、「2022年2月22日までに、現在年間3万頭を超える(環境省データ)日本の猫の殺処分をゼロにする」こと。「ネコリパ首相」こと代表取締役の河瀬麻花さんが2014年に立ち上げ、保護猫カフェの運営を中心に、イベントや譲渡会などを実施してきた。

コロナ禍によって保護猫引き取りの問い合わせは昨年比で10倍にも増えていると、河瀬さんは明かす。リモートワークで寂しい、在宅勤務でやっとネコが飼えるようになった……。その事情は様々だ。

Zoomで取材に応じてくれた、ネコリパブリック代表取締役の河瀬麻花さん。

本社がある岐阜から、Zoomで取材に応じてくれた、ネコリパブリック代表取締役の河瀬麻花さん。

ネコリパでは引き取り希望者に対し、事前の里親アンケートおよび対面でネコが飼える環境なのかを審査し、2週間のトライアル期間を経て初めて「正式譲渡」というプロセスを踏んでいる。その「正式譲渡数」を数えても、2020年は昨年比で3〜4倍にもなるという。

その一方で、運営団体であるネコリパは、コロナで大きな経済的打撃を受けている。

ネコリパは保護猫の譲渡からはほとんど収益を得ておらず、主な収益源はカフェやイベントだ。それらが停止・縮小をせざるを得なくなり、事業存続の危機が一気に現実のものとなってしまったのだ。

放送事故でも「逆にそれがいい」

ねこ

人間と同じようにネコも「リモートシフト」をして、保護猫活動について知ってもらえる機会を作らなければ……。新たな活路を模索していたネコリパに賛同してプロジェクトに協力したのが、Twitterのフォロワー数が14万人を超える、ライターのカツセマサヒコさんだ。

「ぼくのことを嫌いなネコが実家にいる」と話すカツセさんは、数年前にネコリパの取材をしたことがきっかけで保護猫問題を知り、関心を持ってきた。

自身がPRを担う、尿検査でネコの健康状態がわかる砂「しぐにゃる」のクラウドファンディングをクラウドファンディングサービスのMakuake上で実施するとなった時、そのPRの一手法として、「しぐにゃる」の広告をYouTubeに入れる代わりにネコたちの様子を配信する、という仕組みを考案した。

それがコロナで経済的な打撃を受けるネコリパの救済策になる、と考えたからだ。

カツセマサヒコさん

「Remote Cats」の企画を担う、ライターのカツセマサヒコさん。

「元々は『しぐにゃる』を売るためにと始めた企画だったんですが、『保護猫を守ってあげて』という反響が思いの外大きくて、びっくりしています。保護猫の存在を広めるのって、社会的な意義があることなんだな、と」

スタッフが少ないことから、カツセさん自身がカフェに通い、カメラの設営や配信まで自身で担う。

「最初はネコが映らなかったりすると『放送事故じゃん……』と焦っていたんですが、見てくれている方は『癒される、逆にそれがいい』と。これもネコの特性ですよね」(カツセさん)

“バズライター”として知られるカツセさんだが、今回のプロジェクトについては「ネコの殺処分ゼロを2022年までに目指す」という社会課題を伝えることも重要だった、と思いを語る。

拡散の成果もあり、7月15日からスタートした「しぐにゃる」のクラウドファンディングでは、すでに目標金額の6倍を超える約190万円の応援総額を達成している。

ストレス減、生産性向上……の先に

猫

カヨさん(仮名)が飼っている保護猫のきょうだい。

写真:取材者提供

ペットと一緒に仕事をすることのメリットは、科学的にも様々な領域から研究が進んでいる。

Business Insiderの過去の報道によると、職場にペットがいることで「モチベーションが高まり、仕事が好きになる」だけでなく「ストレスが減り、生産性が上がる」効果もあるという。

在宅勤務をしており、2年ほど前から保護猫を飼い始めた30代のカヨさん(仮名)は、ネコがいることで生活の質が劇的に上がったと話す。

猫

今ではカヨさんの前でおなかを出して眠る保護猫たちも、最初はかなり警戒心が強かったという。

写真:取材者提供

「一人でリモートワークをしていた時は、息抜きするタイミングもなくて、生活のリズムがうまくつけられなかった。電気をつけるのも忘れて夜になって、気づいたら真っ暗な中で一人でパソコンをやってたこともあります」

ネコと共に暮らすことで生活に区切りがつき、今では良いペースで仕事ができているという。ネコリパへの問い合わせ件数からもわかるように、ネコをリモートワークのお供に……と考える人は後を絶たないが、やはり「今が寂しいから」と軽い気持ちで飼ってしまうことは危険だ、ともカヨさんは釘を刺す。

前出の河瀬さんは、ネコを迎えたい想いのある人は、ペットショップのネコではなく保護猫を、と訴える。命を商売として売り買いし、最後まで世話する責任を問わないペットショップは、直接的ではないにせよ「動物たちの殺処分に加担していることになる」とまでサイト上で伝えている。

「ネコの一生は、長い子だと20年にもなります。それだけの期間の世話を最後までできる、その覚悟を持った方に、ネコを迎えてもらいたいですね」(河瀬さん)

(文・写真、西山里緒)

編集部より:一部、表記を改めました。 2020年7月21日 9:50
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