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運動による脳の活性化効果が、錠剤で得られるようになるかも


運動が脳を若く保つということは、科学的に証明されている。

運動が脳を若く保つということは、科学的に証明されている。

Igor Alecsander/Getty Images

  • 年齢を重ねても脳の健康を維持するには、運動が重要であることを示す研究は数多くある。
  • 新たに発表された論文によると、運動すると肝臓で生成される特殊な酵素が脳の健康に関連していることが分かった。
  • その酵素を取り出すことで、理論的には、運動による脳の活性化効果を錠剤や点滴で得ることができるようになる。

さまざまな研究により、運動は人間の健康に多くの利点があることが示され、老化する脳にも良い影響を与えることが分かっている。

だがいずれ、科学の進歩により、運動で得られるような認知能力を高める効果が、汗をかかなくても錠剤や点滴で得られるかもしれないことが、7月10日に学術誌「サイエンス」に掲載された新たな論文で示唆された。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームは、運動をする老いたマウスと、運動をしない老いたマウスとの比較分析を行った。その結果、運動をする方が肝臓に多く含まれるGpld1という酵素の濃度が高いことが分かった。この酵素は認知機能の向上に関連している。

人間でも同様の比較分析をしたところ、同じ結果となった。つまり活動的な高齢者の方が、そうでない高齢者よりも酵素の濃度が高かったのだ。

研究チームは先行研究を参考に調査を進めることにした。その先行研究とは高齢のマウスに、若く健康なマウスの血液を注入して若返らせるというものだった。ほとんど動き回らないマウスによく運動するマウスから取った血漿を注入するとGpld1の濃度が上昇し、予想通り、マウスの運動量を変えなくても、認知能力は向上した。

最終的な実験では、マウスを遺伝子操作し、肝臓でより多くのGpld1が生成できるようにしたうえで、記憶力と認知能力を検査した。すると驚くべき結果が得られた。3週間で、通常の運動の6週間分に匹敵する効果が表れたのだ。記憶に関係する脳の海馬で新たな神経細胞が成長する様子も見られた。

「これらのデータを見たとき、本当に驚いた」と論文の筆頭著者であり、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の解剖学助教授、ソール・ヴィレーダ(Saul Villeda)はプレスリリースで述べた。

「正直に言うと、運動が脳に与えるこれほど多くの効果を説明できる一つの分子を発見できるとは思わなかった」

この結果を人間にうまく応用するには、さらなる研究が必要ではあるが、体が弱ってきた高齢者や運動ができない人が脳の健康のために運動の効果を取り入れたいという時に大きな恩恵をもたらすだろう。

「もし、運動と同様の効果を脳に与えられる薬があれば、誰もが飲むようになると思う。今回の我々の研究により、少なくともその効果の一部は、いずれ錠剤のような形で提供できるようになるだろうということが示唆された」とヴィレーダはプレスリリースで述べた。

[原文:The memory-boosting effects of working out could be bottled into an 'exercise pill,' a study found

(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)

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