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- グーグルでは、自分が正しい方向に進んでいるか分かるように、ラフの段階からアイデアを共有するよう社員に促している。
- こうすることで、アイデアの核心部分について貴重なフィードバックが得られるほか、自分と同様の取り組みをしている人や手を貸してくれそうな人も分かる。そう語るのは、同社Office of the CTOのグループウェア「G Suite」担当リーダー、ダイアン・チャレフ(Diane Chaleff)だ。
- こうした習慣的なアイデア交換は、グーグルが重んじる「心理的安全性」(完全には自信が持てないうちでも躊躇せずにアイデアを出せる状態のこと)の一環だ。
- 科学者らによると、心理的安全性の高いチームほど高い成果を挙げる傾向があるという。
グーグルでは、アイデアを自分の内にしまっておくというのは最悪の選択とされる。それよりも、生煮えのアイデアを社員同士がぶつけ合う習慣をつけてほしいとマネジャーたちは考えている。
ダイアン・チャレフは、グーグルOffice of the CTOのG Suiteリーダー。
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「グーグルの社内では通常、アイデアを素早く頻繁に共有することを重視しています」と語るのは、同社Office of the CTO[編集部注:パートナー企業のIT活用をサポートする組織]のグループウェア「G Suite」担当リーダーのダイアン・チャレフだ。
「何かアイデアがあるなら、仲の良い同僚にパッと合図を送ったり、何人かにショートメールを飛ばしたり、文書にメモを箇条書きしてコラボレーションを始めてほしいと思っています。そうすればすぐにフィードバックをもらえますから」
チャレフが言うようなこうした習慣的なアイデア交換は、グーグルが重んじる「心理的安全性」(完全には自信を持てないうちでも躊躇せずにアイデアを出せる状態のこと)の一環だ。
科学者らによると、心理的安全性とチームパフォーマンスの高さはリンクしており、グーグルの独自調査でも、最高の結果を出すチームは心理的安全性が最も高いことが分かっている。
社員が思う存分クリエイティビティを満たすよう促すのがグーグル流だ。GmailやGoogleニュースといったイノベーションは、社員が本来業務とは別にアイデアに取り組むことのできる「20%ルール」の産物だ(Business Insiderは以前、20%ルールが今も存在するかは不明と報じたことがある)。
チャレフは、同僚に話す前に「黙々と20時間かけて」せっせとアイデアを磨く、というような時間の使い方はしてほしくないと言う。それが「ものすごく役立つということはありません」
早い段階でフィードバックをもらおう
グーグルの社内はクリエイティブで楽しめる仕掛けが施されている(写真はイスラエルにあるグーグルオフィスの内部)。
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ファーストカンパニーの記事の中で、グーグルにはアイデアがどれだけ完成に近づいているかを表す独自の言い回しがあるとチャレフは書いている。文書は「試案(DRAFT)」、「仕掛かり中(WIP)」または「最終案(FINAL)」と表示される(WIPは「仕掛品」の意味)。
試案文書は単に箇条書きリストということもある。こういう文書を受け取った人は「大局的なフィードバックを提供すべきであり」、「今は細部について話すべき時期ではないことを理解」している、とチャレフは書いている。
チャレフによると、試案やラフ段階のアイデアを共有するメリットは2つあるという。1つ目は、自分が進んでいる方向が正しいか即座にフィードバックがもらえる点だ。
スタートアップの業界用語では、アイデアというのは「実用最小限の製品(MVP)」である。例えば新しいアプリを制作しているとして、そのアプリの最も基本的なイテレーション(繰り返し処理)を作るのに、時間やお金やエネルギーはなるべく抑えようとするはずだ。
そのうえで、ユーザーを何人か見つけ、アプリを使ってもらい、そもそもそのアプリに興味があるか探ろうとするだろう。大切なのは、誰も興味を持たない製品のために貴重な資源を空費する愚を避けることだ。
チームでコラボレーションする場合、ラフ段階のアイデアというのは自分にとってのMVPと言える。アイデアを共有する同僚たちは最初のユーザー。彼らのフィードバックによって、これから先も進めていくべきか感覚がつかめる。
チャレフは「アイデアの核心部分について、早い段階でフィードバックが得られます」と言い、それこそがカギだと続ける。なぜなら、「アイデアの核心部分こそが制作物に形を与える」からだ。そうなると、実行の前段階からアイデアは大正解にしておきたい。
点と点をつなぐ
天気のいい日は屋外で仕事をする社員も(マウンテンビューのグーグル本社)。
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早い段階でアイデアを共有する2つ目のメリットは、手を貸してくれる人が見つかるかもしれない点だ。
チャレフは「◯◯さんに話してごらん、あの人も同じことを考えているから」といったフィードバックをもらえることがあると語る。チャレフは最近、似通った機能に独自に取り組んでいた2つのチームを引き合わせたそうだ。これによって、お互いのチームの専門知識が大いに役立ったという。
だが早い段階からアイデアを共有することの最大のメリットは、マネジャーがチーム内の若手の声により耳を傾けるようになることだろう。
若手メンバーは、せっかくフレッシュで貴重な視点を持っていても、意見を言う勇気がない場合があるものだ。そんなとき、生煮えのアイデアでもかまわないし、社内にはアイデアの実現に手を貸してくれる人たちがいるのだと分かれば、きっと助かるだろう。
「私たちマネジャーは、スピードを上げて点と点を結びつける手助けをしているのです」とチャレフは結んだ。
(翻訳・印田知実、編集・常盤亜由子)