2020年第2四半期決算を発表した、IBMのアービンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)。
IBM
- IBMが第2四半期決算を発表。アナリスト予想を上回る内容に、同社の株価は上昇した。
- ただし、アービンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)は新型コロナウイルスの世界的大流行による経済の不確定性が高いとして、2020年の新たな業績見通しについては明らかにしなかった。
新型コロナウイルス感染拡大の影響にもかかわらず、市場予想を超える第2四半期(2020年4〜6月)の業績を発表したことで、IBMの株価は7月20日に急上昇した。
しかし、アービンド・クリシュナCEOは2020年業績見通しの発表については先送りし、経済の回復にはまだ時間がかかるとの見方を示した。
「(現時点で)見通しを示すのは簡単なことではない。ただし、少なくともわれわれが3月時点で期待していたより、経済回復には時間がかかるとみている」(アナリスト向け説明会での発言)
IBMの第2四半期(2020年4〜6月)決算は、純利益が13億6100万ドル(調整後の1株あたり利益で2.18ドル)。前年同期の25億ドル(同2.81ドル)からおよそ半減した。売上高は前年同期比5.4%減の181億ドルだった。
アナリストの事前予想は、売上高で177億2000万ドル、調整後の1株あたり利益で2.07ドル。いずれもIBMの発表業績のほうが上回った。
Red Hat(レッドハット)を含むクラウドソフトウェア部門の売上高は悪くなかった(前年同期比3.3%増)ものの、売上高の半分以上を占めるコンサルティングサービス(ビジネスおよびテクノロジー)部門が減った。
2019年にIBMがクラウドビジネス拡大のカギを握るとして340億ドルで買収したRed Hatは、単体で17%の売上増を記録した。
なぜ年間業績見通しを発表できないのか
REUTERS/Brendan McDermid
IBMと規模感で近しいオラクルやアクセンチュアが最近、2020年の業績見通しを発表したことに触れ、モルガン・スタンレーのアナリストからは(決算説明会で)こんな質問が出た。
「業績見通しの発表を延期したままなのは、御社のビジネスやリスク環境、あるいは市場の先行きに何か問題があるということか」
質問への答えとして、クリシュナCEOは「世界の経済環境の不確実性」をあげた。IBMは第1四半期に2020年の年間業績見通しをとり下げ、パンデミックの影響を踏まえて再精査を行うとしていた。
「感染状況は徐々に安定し、感染者数のカーブは数カ月でフラットになっていく(=感染拡大がおさまっていく)という、多少楽観的な見方をもっていた。しかし、いまやその見立ては完全に間違っていたことが明らかになった」
ただし、クリシュナは就任当初に打ち出した戦略については、現時点ではとり下げる考えがないことを強調している。
5月のCEO就任時、クリシュナは最大1.2兆ドルまで成長すると想定するハイブリッド・クラウド市場で過半数シェアを獲得する計画をぶち上げたが、その路線に変更はない。
また、同じく就任時に明らかにした、成長中の人工知能(AI)市場にフォーカスする戦略について、IBMは6月に汎用顔認証テクノロジーと分析ソフトウェアの販売を(人権等への配慮から)中止することを発表しているが、他用途での活用可能性を検討しているという。
「厳しい状況が続くが、前進のための好機ととらえて邁進している」
IBMの株価は決算発表の7月20日、一時4.5%程度上昇している。
(翻訳・編集:川村力)