BI Daily Newsletter

イベントキャンセル相次ぐ老舗結婚式場の試行錯誤、「家族のための成人式」注目

DSC_2926

7月19日、「八芳園・白鳳館」に置かれた円卓。

撮影:横山耕太郎

新型コロナウイルスの影響で、結婚式場やイベント会場は厳しい経営を迫られている。

東京商工リサーチによると、7月20日現在、コロナによる影響で破綻した式場などブライダル関連企業は4件。同社によると、急激な需要な減少で、今後も破綻するブライダル関連企業は増加が予想されるという。

1952年に創業した「八芳園」(東京都港区)も、例年7月には約100組の結婚式を挙式していたが、2020年7月は約1割程度にまで減少。

今後はオンラインで挙式を中継し、会場と同じ料理を自宅でも食べられるように配送するなどの取り組みも始める予定で、生き残りをかけた試行錯誤が続く。

大型会場に円卓1つ

DSC_2948

「家族のための成人式」に参加した川崎さん一家。

撮影:横山耕太郎

例年の週末であれば、ほぼ挙式の予約で埋まっている八芳園内の式場のひとつ「白鳳館」。

最大114人を収容できる大型の会場だが、2020年7月18日と19日の週末、大広間には、ぽつんと1つの円卓が置かれていた。

この日は「家族のための成人式」というイベントが開かれており、会場内には晴れ着姿の家族3人と、カメラマンら数人のスタッフがいるのみ。

イベントに参加した振袖姿の大学生、川崎ほのかさん(19)は、八芳園自慢の美しい庭園をバックに記念撮影。

「高齢の祖母に見せるために、きれいな写真を撮影してもらいたい」という思いから、このイベントに参加したと話す。

コロナで注目「家族のための成人式」

DSC_3002

「家族のための成人式」で、感謝状などを贈り合う川崎さん一家。

撮影:横山耕太郎

「家族のための成人式」は呉服卸・販売を行う「いつ和」(新潟県十日町市)が主催し、2日間で計19組が参加した。

「コロナの影響で来年1月の(自治体等が主催する)成人式が従来通り行われるか、見通せない状況にあり、『写真を残したい』など家族向け成人イベントの需要が出てきている」

いつ和・アニバーサリー事業部の中西昌文部長はそう話す。

中西氏によると、成人式に参加したいと考える新成人は多いものの、毎年、新成人が暴れて逮捕者が出るなど、従来型の成人式は、時代に合わなくなっているという。

「成人式を『親からの巣立ちの儀式』であり、『子育て卒業式』と捉えると、成人式は家族のためにあるべきとも言えます。

コロナの影響で、『突然生活が困窮するかもしれない』などの意識が生まれたことで、家族が感謝し合う新しい成人式の形がより注目されています。



今回は八芳園という素晴らしい会場を、普段よりも安く会場を借りることができました。今後も『家族のための成人式』が定着するよう、活動していきたいと思います」 (中西氏)

宴会「年内は厳しい」

DSC_3043

「宴会需要はほとんどなくなってしまった」と話す八芳園の市川宏幸マネージャー。

撮影:横山耕太郎

結婚式場やイベント会場では、新型コロナによる予約のキャンセルや延期に対応しようと、新しい会場の利用方法を模索している。

先述の「家族のための成人式」のような新たな取り組みでの会場利用はその一例で、最近ではドラマなどの撮影としての利用も増えているという。

「コロナ以前の売り上げは、結婚式が3分の2、宴会などが3分の1程度。宴会はほぼキャンセルが続いています。


2020年は本来であれば東京オリンピック・パラリンピックも開かれて、インバウンド需要で忙しいはずだったのですが……」

八芳園の市川宏幸マネージャーはそう話す。

DSC_3050

広大な敷地に庭園が広がる「八芳園」。

撮影:横山耕太郎

八芳園は、新型コロナの影響で、4月と5月は営業を停止。6月1日から営業を再開するにあたり、より厳しい衛生基準を定めたという。

席の間隔を十分に空ける配置にするため、収容人数は約半分に制限しているほか、消毒や換気のための「33の取り組み」を掲げている。

例年であれば平日を中心に、企業による宴会や、株主総会などのイベント、国際会議などが開催されていたが、ほぼキャンセル状態が続く。

「まだ感染が広がっていることもあり、宴会に関しては、年内の回復は厳しいのではないかと思っています」(市川氏)

Zoomで中継、料理も宅配

DSC_3142

「八芳園」のHP上には、コロナ対策として実施している「33の取り組み」を掲げている。

撮影:横山耕太郎

一方で、結婚式については、秋以降の予約は順調という。

「結婚式については、紅葉が楽しめる10月~12月上旬のハイシーズンには予約が戻ってきています。

式場として、いかに安心してもらえる環境を作れるか。オペレーションが問われていると思います」(市川氏)

八芳園では、感染を心配する高齢の列席者などを対象に、オンライン会議ツールで挙式の様子を放送する取り組みも開始。

7月中旬に実施した結婚式では、約60人が実際の会場に集まり、約10人がオンラインで参加したという。

今秋以降には、オンラインでの参加者に料理を配送することで、同じ料理を楽しんでもらえる取り組みも始める予定という。

「園内のレストランで定期的に開催していた日本酒のイベントは、すでにオンラインに切り替えています。

Zoomで蔵元とお客様をつなぎ、説明を受けながらお酒を楽しめます。


結婚式についても、会場での参加者とオンラインでの参加者が同じ体験ができるように、会場と同じ料理を食べて、同じ時間を共有できるようにしたいと思っています」(市川氏)

こうしたさまざまの新たな取り組みは、コロナ収束後の結婚式やイベント、関連ビジネスにどんな影響と変化をもたらすのだろうか。

八芳園に限らず、今の試行錯誤は一時的な問題回避策を生み出すだけで終わるのか、それとも長く続いてきたビジネスモデルの発展的解消へとつながっていくのか、今後も注目したい。

(文・横山耕太郎)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

あわせて読みたい

コロナ第2波襲来のイギリス、世代間対立がさらに鮮明に。「合意なきEU離脱」でいいのか?

イギリス若者

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み