なぜNTTドコモはBリーグ川崎「資本業務提携」に一歩踏み込んだのか?

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川崎ブレイブサンダースはBリーグ屈指の人気チームで、とどろきアリーナは毎試合満席近い。

©KAWASAKI BRAVE THUNDERS

NTTドコモがこの6月、DeNA(ディー・エヌ・エー)が保有するバスケットボールBリーグの強豪「川崎ブレイブサンダース」と資本業務提携を締結した(出資金額は非公表)。

有名企業がオーナーであるスポーツチームに、別の有名企業が出資する……という構図。DeNAが筆頭株主であるのは変わらないが、単に「NTTドコモがバスケットボールチームの経営に参加する」という事実の背景には、当然、企業としての意図がある。

Business Insider JapanではNTTドコモのスポーツ&ライブビジネス推進室の馬場浩史室長に資本提携の意図や今後の展望について聞いた。

スポーツに投資するNTTドコモ

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川崎ブレイブサンダースへの資本業務提携について話した、NTTドコモのスポーツ&ライブビジネス推進室・馬場浩史室長。

提供:NTTドコモ

NTTドコモは、これまでもスポーツチームへの投資を続けてきた。ラグビートップリーグの「NTTドコモレッドハリケーンズ」のほか、サッカーJリーグの「大宮アルディージャ」には、運営母体・NTTスポーツコミュニティの出資社の一つとして関わる。

一方、スポンサーとしてもJリーグや卓球Tリーグのトップパートナー契約を結ぶ。阪神タイガースや鹿島アントラーズとも協業契約を結ぶなど、スポーツとの関わりを一層深めている。

ただ、今回のブレイブサンダースへの出資にはこれまでとは大きく異る点がある。それは「他企業が運営するチームへの出資」ということだ。これまでよりも、一歩踏み込んだ形に見える。

馬場室長は、その意義にこう語る。

「Jリーグ等でデジタルマーケティングに取り組んでいるが、川崎でもデジタルマーケティングの取り組みであったり、5Gを使った観戦の強化を取り組んでいきたい。もうひとつ進めたいのが、アリーナでの体験価値をいかに高めていけるか。(NTTドコモの)これまでの取り組みの集大成ではないが、アリーナのオペレーションを将来的に見据えながら業務提携をしました」(馬場室長)

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川崎ブレイブサンダースのホームゲームには毎試合多くの観客が訪れ、屋外でも楽しめるよう取り組む。

©KAWASAKI BRAVE THUNDERS

川崎ブレイブサンダースは、ホームである「とどろきアリーナ」(神奈川県川崎市)を中心に公式戦を戦っているが、新たなアリーナの建設も発表している。NTTドコモは、この新アリーナ構想も共同で検討するという。

NTTドコモにとって、この新アリーナ構想に関わることは大きな機会となりそうだ。

日本では5Gの商用化が始まったが、対応するエリアや、消費者への活用提案がまだ浸透しているとはいえない。大容量データを高速で通信できる5Gは、高精細な映像を可能にした。

しかし、5Gに必要な基地局はまだ数が限られており、そもそも魅力的な5Gコンテンツもまだ少ない。アリーナスポーツは、5Gの魅力を体験できる場として、NTTドコモなど5Gサービスを提供する大手キャリアが注目している。

「新アリーナに向けた財政基盤の確保、5Gなどテクノロジーの活用に向けて、一気に前進していきたい」(川崎ブレイブサンダース・元沢伸夫社長、7月8日のオンラインセミナーにて

川崎ブレイブサンダースの元沢伸夫社長も、NTTドコモとの資本提携への期待を隠さない。

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NTTドコモは2019年ラグビーワールドカップの会場で5Gプレサービスのひとつとして、マルチアングル視聴を行った。写真は今年2月にあった「スポーツビジネス産業展」の同社ブースで撮影。

撮影:大塚淳史

NTTドコモは2019年のラグビーワールドカップで5Gのプレサービスに取り組んだ。会場を5Gエリア化し、端末を通じて試合映像をリアルタイムで多視点で楽しめる、マルチアングル視聴を行った。

5G基地局の設置など、こういったサービスを展開する環境を整備するには、アリーナの建設計画の時点から関わった方が良いとされる。

こういった背景が、NTTドコモが出資した理由だ。

「これまでの協賛(スポンサー)の立場であれば、できあがった箱(体育館、アリーナ、スタジアム)に対してドコモがどう貢献しますか、というところでした。内部に入ることで、プロスポーツチームの運営への理解を深められる。アリーナ構想についても一緒に企画していくことで、チームの目線で作って、ドコモとしても新しい取り組みの幅が拡がるし、チームやファン、アリーナへ新しい付加価値を高めやすい」(馬場室長)

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川崎ブレイブサンダースは平均観客動員を高めてきた。

出展:7月8日にあった、川崎ブレイブサンダース元沢社長が登壇した法人向けビジネスセミナーより。

ドコモとしても、これまで得意だったネットを通じたコミュニケーションだけではなく、リアルでのコミュニケーションにも取り組みたいという思いがあった。

資本提携でドコモは今後チーム経営にも関わるため、取締役の派遣を検討している。

企業から注目高まるBリーグ

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Bリーグへの注目は、世間からだけでなく企業からも高まっている。

©KAWASAKI BRAVE THUNDERS

日本のプロスポーツへの大手企業の参加は、近年再び活発化している。

プロ野球界では先んじて、ソフトバンク、楽天、DeNAといったIT企業が球団を買収してきた。Jリーグでは、ここ2、3年だけでも、メルカリが鹿島アントラーズ、ジャパネットたかたがV・ファーレン長崎、サイバーエージェントが町田ゼルビア、アカツキが東京ヴェルディを、買収または株式取得による経営参画をしている。

Bリーグも同様の動きが出ている。そもそも川崎ブレイブサンダースは、2017年にDeNAが東芝から買収した。その後も、ミクシィが千葉ジェッツの経営権取得、バンダイナムコエンターテインメントが島根スサノオマジックを買収している。また、ジャパネットたかたが、2021・2022年シーズンからの参入を目指し新チームを立ち上げることを発表している。

川崎ブレイブサンダースはYouTube向けコンテンツの制作も積極的に取り組む。

川崎ブレイブサンダースのYouTube公式チャンネルより

NTTドコモがスポーツチームへの出資にBリーグのチームを選んだのには当然理由がある。

「Bリーグは新しいリーグ。それだけ若いということで、プロ野球やJリーグより新しい取り組みをしやすい。また、川崎ブレイブサンダース自体、YouTubeの活用やSNSを使ったファンとのコミュニケーションやエンゲージメントに取り組んでいる。特に若年層のファンへの施策をきっちりされており、リーチしている。ドコモとしても川崎の若年層へのリーチ力は非常に魅力的です」(馬場室長)

実は、若年層へのリーチというのは、プロスポーツチームが抱える悩みの一つ。プロ野球やJリーグでは観客の平均年齢の高齢化が進んでいる。

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バスケットボールは部活での人気は男女ともに高い。

出展:7月8日にあった、川崎ブレイブサンダース元沢社長が登壇した法人向けビジネスセミナーより。

また、前述したテクノロジーの実践、実装の場としても魅力的に映った。

「とどろきアリーナ自体はまだ5Gが導入されていないので、実験場とはいかないですが、数年前にバスケの試合で、完全な自動撮影、選手追尾という技術を実践しました。屋外だと光の量が変わったり、AIによるデータ解析や映像解析の難易度が比較的高い。屋内スポーツであれば、天井にカメラをつるすなど、新しい技術を試していくにはふさわしいスポーツ」(馬場室長)

もちろんファンが楽しんでもらうのが前提。

「我々がこれを試したいではなく、川崎ブレイブサンダースが5Gをこう使いたいともっていきたい。一緒に取り組み、ファンの体験価値をどう作っていくか。お客様が喜んでくれることが、一番の投資価値だと思っています」(馬場室長)

(DeNA+NTTドコモ)×新アリーナ=eスポーツにも力?

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すでに現状のとどろきアリーナでは観客増は容量の限界も大きく望めない。新アリーナ構想の背景にはこういった面もありそうだ。

©KAWASAKI BRAVE THUNDERS

バスケ以外にも、新アリーナに関わることでeスポーツへの取り組みを行うチャンスがひろがる。

DeNAもNTTドコモもeスポーツに力を入れている。当然視野に入っているはず。そして、eスポーツの大規模イベントを開くには、施設の設備や構造で必要要件が多い。NTTドコモとして、新アリーナに構想段階から関われるのは大きい。

「これから考慮していくと思います。eスポーツのための構造をどうするかという設計の部分など。ただ、箱ができたからといって観客が来るかどうかは別。集客のためのプロモーションや興行主とどうビジネススキームを作るかなど、デザインしていく必要はあるかなと思います」(馬場室長)

スポーツの試合だけでなく、音楽イベント、ビジネス展示会、eスポーツの大会などが行える大規模屋内施設のアリーナに対する注目は年々高まっている。もともと日本でアリーナは多くなかったということもあり、現在各地で、建築されたり、建設計画が出ている。

首都圏でいうと、さいたまスーパーアリーナや横浜アリーナが以前からあるが、オリンピック会場となる有明アリーナが昨年末に竣工し、千葉県ではミクシィが運営する千葉ジェッツが新アリーナを計画している。

ちなみに、有明アリーナには、NTTドコモは企業コンソーシアムの一社として、有明アリーナの運営権を締結している。

川崎ブレイブサンダースが今後どうNTTドコモを活用するのか、また、NTTドコモが川崎ブレイブサンダースを通じて何を実践していくのか、ワクワク感しかない。

(文・大塚淳史

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