アメリカのトランプ大統領とイギリスのジョンソン首相。
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- イギリスのジョンソン政権はアメリカのトランプ大統領が11月の大統領選で民主党のジョー・バイデン候補に負けることをひそかに願っているという。
- バイデン候補の勝利を見込んで、ジョンソン政権はトランプ政権と距離を置こうとしていると、イギリスの政府関係者はサンデー・タイムズに語った。
- トランプ大統領に脅されたくないとして、ジョンソン政権は年内にトランプ大統領と貿易協定を結ぶ計画を捨てたと報じられている。
- イギリスのある上級外交官は、バイデン候補の勝利がトランプ時代の「欲得ずくの腐敗」に終わりをもたらすだろうと、Business Insiderに語った。
英紙サンデー・タイムズの報道によると、イギリス政府はアメリカのトランプ大統領が11月の大統領選で民主党のジョー・バイデン候補に負けることをひそかに願っているという。
イギリスのボリス・ジョンソン首相は、トランプ大統領に最も近い国際的な支持者の1人と見なされている。
ところが、その政権は11月の大統領選でバイデン候補の勝利を見込んで、ひそかにトランプ大統領と距離を置こうとしていると、同紙は報じた。
「トランプが再選しない方が物事は大幅にやりやすくなる」とある閣僚は同紙に語った。「政権内の多くの閣僚がひそかに同じ意見を持っている」という。
イギリスの政府関係者の中にも、バイデン候補の勝利に期待する人々がいる。
ある上級外交官は7月上旬、バイデン大統領の誕生がトランプ時代の「欲得ずくの腐敗」に終わりをもたらすだろうと、Business Insiderに語っている。
「バイデンが勝てば、いろいろなことが変わるだろう」という。
政府関係者は「トランプ一家の欲得ずくの腐敗と、彼の言動の不快なナルシスト的側面は全て、異なるタイプの大統領の誕生とともに消え去るだろう」と話している。
ただ、バイデン候補とジョンソン首相はもともと近い関係にあるわけではない。バイデン候補はジョンソン首相のブレグジット(イギリスのEU離脱)に対する考えに反対で、ジョンソン首相をトランプ大統領の「クローン」だと発言したこともあると伝えられている。
しかし、ジョンソン首相とトランプ政権の関係は、トランプ大統領がイギリス政府に対し、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と手を切るよう迫ってからここ数カ月、 ぎくしゃくしていた。
2月には、次世代の通信規格「5G」の通信網を整備するため、ファーウェイ排除を当初拒否していたジョンソン首相に対し、トランプ大統領が「激怒」し、電話をガチャ切りしたと報じられた。
アメリカのファーウェイに対する制裁を受け、イギリスは最終的に折れたが、ジョンソン政権はトランプ大統領と新たな貿易協定を結ぶ意欲を失っていった。
「ボリスはトランプと距離を置こうとしていた」とイギリスのある政府顧問はサンデー・タイムズに語った。
アメリカとの貿易協定がイギリスの食品規格に及ぼす影響に対するイギリスの有権者の恐怖が、ジョンソン政権に合意を急ぐことへの歯止めをかけたという。
「年内に合意するか? 基本的にはノーだ」とイギリスのある政府関係者はフィナンシャル・タイムズに語った。「わたしたちは脅されて手を打ちたくない」と付け加えた。
ジョンソン政権は、バイデン候補の勝利が痛手を和らげるだろうと考えている。バイデン候補がオバマ前大統領時代の「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」に署名するプランを復活させる可能性が高いからだ。
保守党のある顧問は、「イギリス政府は、バイデンが勝てば二国間の貿易協定をやる必要はなくなると考えている。両国ともCPTTPに行き着くかもしれないからだ。動物の福祉の高い基準ではすでにそれが起きている。問題の一部は取り除かれるだろう」とサンデー・タイムズに語っている。
[原文:Boris Johnson's government is privately 'desperate' for Trump to lose the election to Joe Biden]
(翻訳、編集:山口佳美)