マスク着用の義務化は骨抜き?…従業員を暴力から守るためにウォルマートは「アンチマスク」を容認

マスクをしたウォルマートの買い物客。

マスクをしたウォルマートの買い物客。

AP

  • ウォルマートをはじめとする多くの小売店では新しいマスク着用ルールが導入されているが、CNNの報道によると、ウォルマートではフェイスマスクの着用を拒否した人にもサービスを提供するという。
  • ウォルマートは7月20日、アメリカの多くの地域でコロナウイルスの症例が再び急増していることを受けて、全店舗でマスクの着用を義務付けた。
  • しかし、ウォルマートの広報担当者のデリア・ガルシアは、Business Insiderの取材に対し、「身体的な衝突」を避けるため、従業員はマスクを拒否する人々にも対応するように指示されていると述べた。
  • CNNによると、ホームデポ、ロウズ、CVS、ウォルグリーンも、着用を拒否した人にサービスを提供するという。
  • マスク着用は受け入れられてきているが、マスクに反対する顧客からの店舗スタッフへの暴力事件が何件か発生していた

CNNの報道によると、ウォルマート(Walmart)は従業員を「身体的な衝突」から守るため、フェイスマスクの着用を拒否する買い物客にもサービスが提供されるという。

Business Insiderでは、ウォルマートは7月20日から、健康上の理由でマスクが禁止されている人を除き、すべての人にマスクの着用を義務づけると発表したことを報じた。最近では少なくともアメリカの27の小売業者が同じことを要求している。

しかし、CNNが入手した研修ビデオでは、マスクを着用することを拒否した人にも「買い物を続けさせる」ように指示されているという。

CNNによると、ホームデポ(Home Depot)、ロウズ(Lowe's)、CVS、ウォルグリーン(Walgreens)も、マスクなしの客にサービスを提供すると述べているという。

ウォルマートの広報担当、デリア・ガルシア(Delia Garcia)はBusiness Insiderに「誰もが顔を覆うことができない状況があるかもしれない」とし、そうした状況では「店舗での買い物を許可する」と述べた。

さらに、「我々の目標は、従業員が危険な状況に置かれないようにすること。買い物客との摩擦を減らすのに役立つよう、そうした例外事項について訓練を行っている」と彼女は付け加えた。

マスクを強制しないのであれば、着用義務化は「ただの宣伝行為」だという批判も

ウォルマートはどのように「健康アンバサダー」を訓練したかを説明するブログ記事で、マスクルールについて述べた。その仕事は店の入り口に立ち、「マスクをしていない人にウォルマートの新しい要件を思い出させる」ことだ。

同社は、アンバサダーは健康上の理由でマスクを着用できない場合があることを認識しており、着用を拒否した場合にはアンバサダーが解決策を提案するだろうと述べた。

健康アンバサダーは、拒否する顧客を妨害しないようにトレーニングビデオで指示されている。CNNによると、彼らは「次のステップを決定することができるように」マネージャーに連絡するという。

ウォルマートは警察の関与を排除しているわけではない。ウォルマートの広報担当者は次のように語った。「我々はフェイスカバーをしていない顧客のために解決策を見つけようとしているが、時々、そのために警察を呼ぶ必要がある」

小売・卸売・百貨店従業員の労働組合の代表、スチュアート・アッペルバウムは、取締りが強化されていないことを批判した。彼はCNNに対して、「顧客に店内でのマスク着用を義務付けないのであれば、義務付けはないのと同じだ。彼らは宣伝のために煽っただけだ」と語った。

ウォルマートは、Business Insiderによる、この批判に対するコメント要請に答えず、警備員がルールの遵守を求めることの是非についての問い合わせにも答えなかった。

マスクは受け入れられるようになったが、小売店で働く人たちにとってはまだ厳しい状況だ

マスクを着用するウォルマートの従業員。

マスクを着用するウォルマートの従業員。

Walmart

ギャラップが7月6日に発表した世論調査によると、アメリカではマスクが受け入れられつつあり、85%の人がマスクをしたことがあると答えている。まだ着用を検討していないと答えたのは11%に過ぎない。

ウォルマートの広報担当者は「実際には誰もがマスクを持参するか、あるいはその要求に容易に応じるかのどちらかである」と強調した。

しかし、小売店のスタッフは、マスクを拒否する顧客からの暴力の矢面に立たされている。

SNSにアップされた映像には、アンチマスクの買い物客の問題が映し出されている。7月初め、アリゾナ州のターゲットではマスクのディスプレーを壊す女性が撮影され、オレゴン州のコストコではマスク着用に抗議して座り込みを行った。

Business Insiderが報じたように、6月下旬には、カリフォルニア州に住む19歳のマクドナルド従業員が、顧客にマスクを着用するよう求めた際に、身体的な攻撃や人種的虐待を受けた。また、CBSロサンゼルスの報道によると、7月15日、ロサンゼルス中心部にある食料品店の女性従業員は、男性客に対して、顔を覆うものを着用しなければ店から出なければいけないという、ロサンゼルス郡が要求するガイドラインを伝えたという。すると男性は店員にショッピングカートを押しつけたので、彼女は「その男性客に催涙スプレーをかけて警察に通報した」という。

ウォルマートのブログ記事によると、同社の5000店のうち約65%は、すでに州全体でマスクが義務付けられている地域にあるという。さらにウォルマートも加盟している小売業界団体のRetail Industry Leaders Associationは7月6日、アメリカのすべての州でこの規制を導入するよう各知事に書簡を送ったとCNNは報じている。


[原文:Walmart won't enforce its own rules on mask-wearing because it fears staff could be attacked by shoppers angry at being challenged

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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