- 太陽系の星は、目に見えない一点を中心に回っている。それは太陽系の「共通重心」で、その点を中心に太陽系全体の質量が均一に分布していることになる。
- もちろん太陽も例外ではない。そのため、太陽系の中心が、常に太陽であるとは限らない。
- 惑星科学者のジェームズ・オドノヒューは、太陽系の共通重心の周りで起こっている、太陽、土星、木星の綱引きをするような動きを表すアニメーションを作成した。
太陽が太陽系の中心であることは誰でも知っている。太陽の周りを惑星が回り、さらに分厚いベルト状に集まった小惑星帯やいくつかの流星群、時々はるか遠くからやってくる彗星も一緒に回転している。
だが、話はこれですべてではない。
「太陽系のすべての星は、太陽系の『質量中心』の周りを回っている。太陽でさえも」と、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の惑星科学者、ジェームズ・オドノヒュー(James O'Donoghue)はツイートした。
「質量中心」とは、物体が完全にバランスを取ることができ、その質量がすべての方向に均等に分布している点のことで、重心とも言う。宇宙の2つ以上の物質の間にも重心が存在し、それを共通重心という。太陽系では、共通重心が太陽の中心に重なることはほとんどない。
これを分かりやすく示すために、オドノヒューはアニメーションを作成し、太陽、土星、木星がお互いの位置に応じて共通重心の周りで綱引きをするように回転する様子を描いた。
オドノヒューは自由な時間があると、惑星や星や光速などについての物理学を分かりやすく説明したアニメーションを作成している。
「惑星は太陽を中心に回っていると思われがちだ」とオドノヒューは言う。
「実際には、太陽系の共通重心が太陽の中心に重なることはほとんどない」
アニメーションでは太陽の動きは分かりやすいように誇張されているが、太陽は不規則な螺旋を描いて、重心の周りを時には数百万kmも離れたりしながら回っている。
この動きはほとんどが木星の重力による影響だ。太陽は太陽系全体の質量の99.8%を占め、0.2%を木星が占める。この木星の質量が、太陽を緩やかに引き寄せているのだ。
「実際、太陽は木星の軌道にわずかながら影響を受けている」とオドノヒューは言う。
惑星と衛星も、その共通重心を持っている。地球と月の場合、地球の内部に共通重心があるため、単純な動きになっている。オドノヒューはそのアニメーションも作成した。
アニメーションでは、地球と月が今後3年に渡って動く様子も3Dで示されている(地球と月の距離は、縮尺通りではない)。
冥王星とその衛星カロンの動きも似ているが、こちらは共通重心が常に冥王星の外側にあり、若干違った動きとなっている。
このように、あらゆる星系は、見えない点を中心に回っている。中心にあるように見える恒星や惑星もそうだ。共通重心は他の恒星系で惑星を発見するのに役立つことがある。天文学者が共通重心を調べることで、全体の質量を推計し、見えない惑星の存在がわかるのだ。
「もちろん、惑星は太陽の周りを回っている」とオドノヒューは言う。
「ただ、学者ぶった言い方をするのであれば、そうではないという話だ」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)