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コロナ禍でも生き残るシェアビジネスの新法則…「人と接触しない休止資産」は都市に眠っている

ウーバー

Uberは2020年5月に計6700人のレイオフを発表しました。コロナ禍でUberやAirbnbなどの物理的接触が多いシェアエコビジネスは大打撃を受けています。

Getty Images/Justin Sullivan

こんにちは。パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナーの石角友愛です。今日は、ニューノーマル社会で変わりつつあるシェアリングエコノミービジネスについて考察したいと思います。

コロナウイルス感染拡大の影響で打撃を受けたとされるシェアエコビジネスですが、ここで現状をまずおさらいします。

やはり一番打撃を受けているのが、UberやLyft、Limeなどの移動系アプリと(Uberの移動サービスは4月中に80%減少、純損失が190%も増加した)、Airbnb(先日社員の25%を解雇することを発表)に代表される旅行系の会社、そして不特定多数の人が集まるWeWork(1000人以上を解雇する予定との報道)などのコワーキングスペースです。

また、洋服などのシェアも外出が減り需要がなくなってきているだけではなく、衛生面が問題になりつつあります。例えば高級ドレスをレンタルするレントザランウェイなどはリテール事業に関わる全社員を30分のZoomで解雇したりと、コロナウイルスの影響を大きく受けています。

一方で成長しているのが、宅配系(UberEats、DoorDash、Instacart)です。

ウーバーイーツ

反対に、UberEats、DoorDash、Instacartなどの宅配系サービスは、リモートワークの増加や移動規制などが追い風となり、成長しています。

Getty Images/DigiPub

オンラインでの注文が成長している背景もあり、利益こそ出ていないものの、UberEatsは2019年の同時期と比べ54%売り上げが増加し、その勢いで7月には類似サービスを提供するPostmatesを26億ドルで買収することを発表しました。

今後も長く続くコロナウイルスとの戦いの中、リモートワークが一気に増加したことや、移動自体が制限されていることもあり、本業のUberを利用する人の増加は見込めないため、Uberはフードデリバリー強化に軸足を移しました。

同じように人(と、その人がもつ時間やスキル)をシェアする「ギグエコノミー」領域にも変化があります。

例えばThumbtackなどの家具組み立てなどの肉体労働をしてもらう人をクラウドソースあるいはマッチングする会社は、物理的な接触があるため需要が減速しています(コロナの影響で250人の社員を解雇したとの報道)。

しかし、デスクワークをする人をクラウドソースするFiverrなどは、多くの解雇された人がフリーランサーとして登録しており、例えばロサンゼルスエリアではビデオ編集や音楽編集などのフリーランス登録者数が2020年3月に2倍になったと言われています。

しかし、相対的に見てシェアリングエコノミーやギグエコノミーが受けた打撃は大きく、ある調査によると今後1〜2年でシェアリングエコノミーやギグエコノミーの経済が30%は減少するという試算が出ています。

シェア経済の本質は「アイドルエコノミー」

街並み

新型コロナウイルスによって、いろいろな常識が崩れた世界。そんな中シェアリングエコノミーはどう変化していくのでしょうか?

撮影:竹井俊晴

そんな中、ニューノーマルの世界でシェアエコビジネスはどう変わるのでしょうか。今後伸びると考えられるシェアリングエコノミーの領域はどこでしょうか。

以下に、私が作成したニューノーマル・シェアリングエコノミーマトリックスを紹介します。簡略化したものなのであくまで大枠を理解するための参考にしてください。

ニューノーマルシェアリングエコノミーマトリックス

ニューノーマル・シェアリングエコノミーマトリックス。赤丸で囲った領域で今後ビジネスが増えていくことが予想されます。

出典:石角友愛

赤丸で囲った方の領域で今後よりシェアエコビジネスが増えるのではないかと私は考えています。

すなわち、アフターコロナのシェアリングエコノミーは、

  1. デジタル的資産をシェアするプラットフォーム
  2. 非接触で行えるサービス領域

という2つのキーワードが大事になってくると考えています。

シェアリングエコノミーの本質は、「アイドリング(休止)状態にある資産を活用してマネタイズする」というアイドルエコノミーにあります。

例えば、使っていない部屋を他人に貸す、使っていない車や服を貸す、などです。特定の客に貸せば単なるレンタルですが、規模の経済とネットワーク効果により、プラットフォームにすることでシェアリングエコノミーが成り立ちます。

今までは共有されるものが「物理的資産」だったものが、ニューノーマルではより「クラウド化」「オンライン化」「リモート化」が進み、デジタル的資産に移行するのではないかと考えられます。

「クラウド資産をシェア」するサービスの是非

ネットフリックスを見る人

賛否両論であるものの、自分がサブスクしているサービスを他人とシェアするという新しいモデルも存在します。他にも、自分が実は持っている「デジタル資産」を共有するプラットフォームが今後新たに誕生してもおかしくはないでしょう。

Getty Images/wutwhanfoto

その一例が、自分が毎月支払っているサブスクサービスを他人とシェアする、サブスクリプションのシェアリングエコノミーという新しいビジネスモデル。これは言わば、「自分のパスワードをデジタル資産と見なして成り立つ」ビジネスです。

現在、コロナの影響でオンラインコンテンツなどを見る時間が増え、ある報道では2019年を通してアメリカ人は平均640ドルをデジタルコンテンツサービスなどのサブスクリプションに支払ったとされます。

コロナ後はサブスクリプションが増加傾向にあり、消費者としてもいつかは「いろいろなサブスク料を支払い過ぎている」という閾値に到達してもおかしくありません。

また、あるアンケート調査では、13~24才のアメリカ人の80%が、過去に家族以外の人に自分のオンラインサービスのログイン情報を共有した、または他人の情報を使ったことがあると答え、69%が過去にネットフリックスを他人のパスワードで見たことがあると答えています。

スタンフォード大学を中退し、ピーター・ティール氏の運営するティールフェローシップを卒業したジョン・バッカス氏が始めたJamというアプリの会社は、パスワードをリンクに変えて友人と共有するソーシャルネットワークです。

Jamはローカルデバイスで暗号化されているため、データ漏洩のリスクが少ないと言います。パスワードサービスに共有機能が付いていることは珍しくありませんが、JamはSNS的要素が強く、どのアプリのパスワードをどの友人と共有するかを選べたり、将来はサブスク費用を割り勘する機能をつける可能性もあります。

また、それをもっとオープンにした形で、「全く知らない他人に対して、自分のパスワードを暗号化した形でシェアする」というサービスも出てきています(DoNotPayという会社が数カ月前にローンチしました。

ただし、現時点はブラウザー拡張機能がブロックされたため、活発な動きはないと思われます)。

こうした「サービスをシェアするサービス」は、現段階では各サービスの利用規約に反していることや、プライバシーの問題に触れることなど、法的なリスクを伴うほか、消費者の心理的壁も大きいと言えます。

しかし、多くのシェアエコビジネスは、立ち上げ当初は既存サービスではありませんでした。消費者の理解を促し、キャズム(一般的に普及するか、しないかの分水嶺)を超える努力をし、法整備が追いついていない環境で成長を目指してここまで来たのです。

シェアリングエコノミーとは、そもそも「既得権益で守られていた伝統的な縦割りビジネスに対する創造的破壊(ディスラプション)」でもあるので、今まで気づかなかった自分が持っている「デジタル資産」を共有するプラットフォームが生まれてもおかしくないとも言えます。

「自分や会社のコンピューターをシェアする」新たなビジネスの芽

並ぶパソコン

使用されていないPCのコンピューティングパワーを別のユーザーに貸し出す「コンピューティングパワーのマーケットプレース化」をする企業が増えつつあります。

Getty Images/AFROG DESIGN UNIT

デジタル的資産の共有でいうと、もう1つ私が注目しているのが、個人のパソコンのコンピューティング資産のシェアリングエコノミー化です。

例えば、私が寝ている間は私のパソコンはアイドリング状態にあり、価値を生んでいません。けれども、その時に私のパソコンのCPUやストレージスペースを使いたいと思っている人に貸してあげることができれば、お金も稼げて一石二鳥になります。

会社に高価なGPUを搭載したパソコン資産がある企業などでも、同じことが言えます。このような「コンピューティングパワーのマーケットプレース化」をする企業が最近たくさん生まれています。注目すべき特徴は、セキュリティー強化のため、分散型でオープンなネットワークを構築するために暗号化技術を使っていることが挙げられます。

数年前にアンドリーセン・ホロウィッツなどのベンチャーキャピタルから1億200万ドルを調達した、スイスとパロアルトに拠点を持つDfinityというスタートアップは、「インターネットコンピューター」という新しい形のクラウドサービスを開発しています。

Dfinity

Dfinityは、「インターネットコンピューター」というブロックチェーンベースのプラットフォームを開発している。写真はDfinityのウェブサイト。

撮影:伊藤有

クラウド事業はAWSやマイクロソフト、またはグーグルなどの巨大IT企業が独占していますが、ユーザー側としてはコストが高くなることが問題です。

そこで、新しい形のクラウド「クラウド3.0」を打ち出し、世界中のあらゆるパソコンをブロックチェーンを使って安全にネットワーク化し、分散型で非独占的なオープンクラウドデータセンターを作り出そうという壮大なビジョンです。これも、根幹は眠っているときに自分のPCを資産活用をしたいシェアリングエコノミーの一種と取れます。

同じようにStorjというアトランタに拠点を持つスタートアップは、個人が持つPCのストレージスペースをブロックチェーンを使って分散型ストレージネットワークにあげて、スペースを必要としている人とつなげるサービスを提供しています。このように「Airbnbのコンピューター版」とも呼べる面白いスタートアップが登場しています。

今後、これまで存在しなかったような新しいタイプのシェアエコビジネスが生まれニューノーマルならではのディスラプションが起きるかもしれません。

(文・石角友愛

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