AIと会話して注文できる「次世代レジ」。10月から実証実験が始まる。
提供:EGGS 'N THINGS JAPAN
パンケーキなどハワイの朝食メニューで知られる「EGGS 'N THINGS JAPAN(エッグスンシングスジャパン)」は2020年10月から、AIと会話することで商品を注文と決済ができるシステム・非接触型「AIアバターレジ」の実証実験を始める。
エッグスンシングス社長で、タリーズ・ジャパン創業者としても知られる松田公太氏は7月27日に記者会見を開き、「コロナショックで飲食店の効率化が求められている」と話した。ITやAIを活用したデジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させる方針だ。
「飲食店の生産性向上」急務
松田氏は「コロナショックでDXの重要性は高まっている」と指摘する。
撮影:横山耕太郎
記者会見の冒頭で松田氏は、コロナ禍で飲食店が置かれている窮状についてこう述べた。
「6月になってやっと売り上げが回復してきたものの、7月にまた感染拡大が報じられ、その度にどんどん売り上げが悪化しています。
将来的に新型コロナウイルスのワクチンが開発され、経営努力をしても、我々のようなイートインの飲食店の売り上げは以前の水準には戻らないと予想しています。
飲食業では前年の9割の売り上げでも赤字になってしまう店も多い。コロナショックで店を閉めた飲食店の経営者を何十人も見ています」
飲食店が生き延びるために、松田氏が必要性を強調するのが、ITやAIを活用したDXの推進だ。
「売り上げが9割になった場合、残り1割をカバーするには生産性を上げるしかありません。
その意味でDXによるスマートなオーダーや決済の必要性が高まっています」
AIと会話して注文
エッグスンシングスとAIレジを共同開発したウェルヴィルの樽井氏(右)と松田氏(中央)ら。
撮影:横山耕太郎
10月から実証実験が行われる「AIアバターレジ」は、AIを使ったシステム開発を行っているウェルヴィル(東京都港区)とエッグスンシングスが共同開発した。
「AIアバターレジ」では、来店者がモニターの前に立つと、画面上に映ったスタッフ(アバター)が注文を確認するシステムで、タッチパネルのように画面に触ることもない。
会話内容は、AIによって処理される。
例えば、AIから注文を聞かれた客が、「今日は卵料理にしようかな」と話すと、卵料理の一覧が画面に表示される。
また「料理に使うチーズは、チェダーチーズとモッツァレラチーズのどちらがいいですか」とAIに聞かれた時に、「どう違うの?」などと聞き返すことで、チーズの違いについても説明してくれる。
開発を行ったウェルヴィルの樽井俊行・最高技術責任者は次のように話す。
「AIが会話を主導することで注文を確定し、同時に値段も計算できます。
日常会話は、書き言葉と違い、省略される言葉も多い。不完全な文章でも、『目的語』や『動詞』などから文章を組み立てた上で、AIで判断するという作業を行っています」
AIにより客の性別や年齢を推定できるため、対応するアバターを、客によって変更することも考えているという。
DXで「接客の質が上がる」
エッグスンシングスの一部の店舗では、テーブルのQRコードを読み取ることで注文と決済ができる。
提供:EGGS 'N THINGS JAPAN
エッグスンシングスではこれまでも、DXによる業務効率化を進めてきた。
店内のテーブルに座った状態でQRコードを読み取ってオーダーしたりできる仕組みを、6月にオープンしたエッグスンシングス御殿場店などですでに導入している。
支払いもオンラインで処理できるため、これまでスタッフがレジで行っていた作業が削減され、1店舗あたり月250時間の作業削減できたという。
またレジで注文した客に対して、位置情報を把握できるタグを渡す「カスタマートトラッキングシステム」も御殿場店などで導入。
客がどこの席に座ったとしても、店員が迷わずに商品を運べることで、作業の省力化が期待できるという。
「日本の飲食店のすごさはおもてなしにある。DX推進でこれまでの作業が減り、作業を自動化できれば、より質の高い接客につながる。
人間によるおもてなしが飲食店の魅力でもあります。スタッフの業務が効率化できれば、コーヒーを淹れるバリスタや、フードを運ぶスタッフと、来客者とのコミュニケーションが活性化すると期待しています」(松田氏)