2020年7月に正式発表した、日産初のクロスオーバーカテゴリーのEV「アリア」。電動車への注力を印象づける一方、足元の業績は非常に厳しい。事業構造改革・日産ネクストによって再びV字回復を遂げられるのか。
出典:日産自動車
決算会見に登壇した経営陣。内田誠社長は「大変厳しい内容」とコメントした。
出典:日産2020年3月期決算会見より
日産自動車は7月28日、2021年3月期の第1四半期決算発表で、通期の業績見通しが6700億円の最終赤字になる見込みだと明らかにした。
2020年度の販売台数の見立ては、新型コロナの状況に大きく左右される。
具体的な影響について、同社の内田誠社長は、アジアは中国、日本ともに、自動車市場全体の需要の変化ほど悪化しないと試算する一方、北米と欧州では全体需要以上の悪化を想定。過度な販売台数の拡大を追わず、質(利益)を高める方針と説明した。
一方で、2019年に続く巨額の最終赤字を見込む状況下ではあるものの、R&D(研究開発)費用については、「5300億円程度(2019年度は5450億円と説明)」(スティーブン・マーCFO)と前年並みの投資を続ける方針を示した。
出典:日産2020年3月期第1四半期決算会見
以下に今回の決算発表の要点をまとめた。
コロナ禍の影響が直撃した1〜6月は、自動車市場全体の需要に大きな影響。1〜3月はおよそ半減、販売台数にも大きな打撃。
1〜3月の販売台数は全世界で64万3000台(シェア5.2%、前年から0.5ポイント減少)、4〜6月はシェア5.4%と前年水準を維持した。
出典:日産2020年3月期第1四半期決算会見
販売台数減の結果、第1四半期は最終赤字2856億円に。
売上高は前年同期比で半減(1兆1742億円)し、営業損失は1539億円(前年同期は16億円の黒字)、最終損失も2856億円(同64億円)と、大幅に悪化した。
出典:日産2020年3月期第1四半期決算会見
直近6月の生産状況は、中国で前年同期を上回る急回復。一方、欧州ではいまだ約2割にとどまる。
欧州ではいまだ前年の約2割、北米でも約5割にとどまるなど、厳しい状況が続いている。
出典:日産2020年3月期第1四半期決算会見
内田社長は日産の状況について、
「本日発表した2020年度の見通しは、(中略)大変厳しい内容だが、私は日産ネクストを着実に実行していくことで、2023年度に営業利益率5%、シェア6%レベルの達成は実現できるものと確信している」
と述べ、決算説明を締め括った。
(文・伊藤有)