マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)。
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- マイクロソフトは、クラウドベースの通信ソフトウェア会社メタスイッチ・ネットワークス(Metaswitch Networks)を、少なくとも2億7000万ドル(約300億円)相当の株式で買収した。
- 5Gネットワークの構築を進める通信事業者の関心を惹きつけ、クラウドビジネスでアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)に対抗する戦略の一環とみられる。
メタスイッチは通信事業者向けのソフトウェアソリューション開発を手がける。マイクロソフトはその買収金額の一部を「2億7025万5106ドル」相当の株式で支払った。同社が最近、米証券取引委員会(SEC)に提出した書類から明らかになった。
ただし、それ以外に現金で支払われた部分があるのかどうかは判明していない。マイクロソフトは、メタスイッチと7月14日に締結した契約の定めに従い、本件についてコメントはできないとしている。
アナリストは買収金額について「合理的な金額」
マイクロソフトは数カ月前(2020年3月)に、5Gソフトウェア会社アファーム・ネットワークス(Affirm Networks)を買収したばかり。
買収金額は公表されていないが、ブルームバーグは匿名の情報源への取材から13億5000万ドル(約1485億円)と報じている。また、米CNBCテレビは、アファームのある投資家がこの契約について「ユニコーンの買収」とツイートしたことから、10億ドル(約1100億円)以上の買収金額だったとしている。
フューチュラム・リサーチのアナリスト、ロン・ウェストフォールはここ数カ月間に出したいくつかの調査レポートで、アファームの買収は「通信分野に多様な足がかりをもつ」AWSにクラウドビジネスで対抗する戦略の一環と指摘している。
ウェストフォールによれば、アファームの買収はマイクロソフトにとって「クラウドビジネスのシェア争いにおいて、アジュール(Azure)という競争力をもつ強力な武器庫を(通信事業者の)5Gネットワーク内に組み込んでいくのに役立つ」。
Business Insiderの取材に対し、ウェストフォールは2億7000万ドルという金額について「合理的な数字。マイクロソフトはこれ以上の金額を出す必要はないと思う」と話した。
5G時代のクラウド戦略
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マイクロソフトは現在、プロダクトとサービスを産業に合わせてカスタマイズする新たなアプローチを採用している。例えば、5月には最初の特定産業向けクラウドを、医療事業者向けに提供した。
同社は最近、金融やエネルギーの専門家を採用していることから、次なる特定産業向けクラウドもすでに準備が進んでいる模様だ。
5Gは、マイクロソフトが進める「エッジコンピューティング」戦略のカギを握るとみられる。
エッジコンピューティング戦略……通信事業者が展開する5Gネットワーク内にクラウドコンピューティングを組み込み、ユーザーに近いエッジ(末端)でアプリケーションを実行することにより、遅延をできるだけ低減する手法。
マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は、同社のあらゆるクラウドビジネスをこのエッジコンピューティングを推進することを前提に設計していく方針を明らかにしている。
(翻訳・編集:川村力)