【ココナラ社長・南章行1】コロナで出品数急増。個人が生きるチカラ獲得するスキルシェアの草分け

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撮影:竹井俊晴

個人が「得意なこと」「好きなこと」をネット上で直接売り買いする。

スキルシェアサービスは、私たちの日常にすっかり浸透しつつある。その先駆けとして、8年前にサービスを開始したのがオンラインスキルマーケット「ココナラ」だ。

サイトを覗いてみると、WEBデザイン、イラスト、動画制作、作曲、マーケティング相談、恋愛相談など、多種多様なスキルサービスが自由に値付けされ、売られている。

登録会員数は150万人を突破し、出品数は200種以上のジャンルから30万点を超えるという。これまでに成立した取引件数は420万件以上にも上る。さらに、新型コロナウイルスの影響が深刻化した2020年4〜5月には、出品数が前年比2倍に急増した。

外出自粛や在宅勤務で家で過ごす人が増え時間に余裕ができたことに加え、休業などで減った収入を補う新たな財源を確保したいというニーズの高まり。そして、この未曾有の危機を受けて「会社に頼らなくても稼げる力を身に付けたい」と考える個人が増えたという表れだろう。

一方で、マーケットの中身には、時世を反映した“顔ぶれの変化”も見られる。人気を集めていた「結婚式の動画編集」の売買はほぼゼロになり、「オンライン秘書」など非対面型のビジネスサポート代行の出品は増えているという。

こういった動向について、「特別な対応をする予定はない」とココナラ社長の南章行(45)は語る。

「創業以来やってきたことと、今やるべきことは、何も変わるはずがないから」

「個人の“生きるチカラ獲得”を応援したい」

ココナラ創業メンバー

ココナラの創業は2012年。創業メンバーは3人だった。

提供:ココナラ

その言葉どおり、南がココナラを創業したのは「個人の“生きるチカラ獲得”を応援したい」という思いからだった。

今では「個人がネットでスキルを売る」というフレーズは違和感なく受け入れられるようになったが、南がココナラをリリースした当時は違った。

「モノではなく、サービスの受発注を非対面で行う」という提案は斬新とされ、資金調達にも苦労したという。預金口座の数字をにらみ、倒産の危機を何度も味わったとは、にわかに信じがたい。なぜなら、南はいつも心底楽しそうに笑い、明るいからだ。

周りを照らす太陽のような、自他ともに認める「ポジティブ人間」。では、その明るさの源は何かと問えば、自らの“個の力”を信じて決断した経験の蓄積なのだという。

好きなことなら本気で努力できる

慶應義塾大学経済学部を卒業後、日本長期信用銀行や北海道拓殖銀行など日本の銀行が相次いで経営破綻した後の1999年、住友銀行(当時)に就職。当時、日本の銀行はどこも不良債権の処理に追われていた。

5年勤めた後、企業再生ファンドの先駆け的存在だったアドバンテッジパートナーズに転職。M&A案件に携わりながら、英オックスフォード大学経営大学院でMBA取得。帰国した2年後に起業——。

オックスフォード時代の南

オックスフォード時代の南。

提供:ココナラ

経歴を表面的に見るとキラキラと輝く「王道」を歩んできたような印象を受けるが、南は都度「自分はどうしたいか」を見つめて選択してきた結果だと語る。

例えば、高校3年までラグビー部の活動を全うするために志望大学を一つに絞ったり、アルバイトでお金を貯めてアメリカに留学したり。留学先で出会った恋人とは大学卒業前に結婚した。

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一つひとつはささやかなことかもしれないが、社会に出る前から、「世間の大多数のやり方に合わせる」ことよりも自分なりの価値観を大事に、進む方向を決めてきた。

「僕は自分で自分の人生を決める連続で今ここにいて、とても幸せを感じられている。みんなが僕みたいに、“自分で決める人生”を歩めたらいいと本気で思っている。

企業に人生を委ねる時代はもう終わり。これからは個人が“自分にとって何が幸せか”を、自然体で求められる時代であってほしい。好きなことであれば本気で努力できるし、仕事にすることもできる。その入り口になりたいという思いで、僕はココナラを立ち上げた」

たくましさとしなやかさ。

「個で生きる時代に必要な資質」として、南はこの二つを挙げた。

どんな場所でも精一杯努力して力を出し切るたくましさ。同時に、「ここじゃなくてもやっていける」といつでも飛び出すことができるしなやかさ。

世間や組織のルールに縛られず、かといってそれを毛嫌いするわけでもなくニュートラルに。自分の判断軸で次の一歩を決めていく。そんな精神的自立に、南はこだわって生きていた。

朗らかな笑顔の裏には影もある。しかし、「自分で決めて生きてきた」という確信があるから、すべての出来事を受け入れ、肯定している。

南がココナラというマーケットプレイスで売っているのは、「モノ」や「サービス」という概念を超えた「生き方」なのだ。

南の生き方の原点であり、「どんなに頑張っても敵わない」と仰ぐ人物の話から始めよう。

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撮影:竹井俊晴

(敬称略、明日に続く)

(文・宮本恵理子、写真・竹井俊晴、デザイン・星野美緒)


宮本恵理子:1978年福岡県生まれ。筑波大学国際総合学類卒業後、日経ホーム出版社(現・日経BP社)に入社し、「日経WOMAN」などを担当。2009年末にフリーランスに。主に「働き方」「生き方」「夫婦・家族関係」のテーマで人物インタビューを中心に執筆。主な著書に『大人はどうして働くの?』『子育て経営学』など。家族のための本づくりプロジェクト「家族製本」主宰。

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