ZHDは2021年3月期第1四半期(2020年4〜6月)決算を発表。翌8月1日から大規模な「3000万ユーザー突破記念!感謝祭」キャンペーンに乗り出す。
Screenshot of PayPay website
ヤフーやZOZOを傘下に置くZホールディングス(以下、ZHD)は7月31日、2021年3月期第1四半期(2020年4月1日〜6月30日)決算を発表した。コロナショックの影響は間違いなくあったが、それをほとんど感じさせない内容だった。
翌8月1日からは「3000万ユーザー突破記念!感謝祭」キャンペーンを開始予定で、1回の決済額最大10万円に対し、2000%を1400本還元。極論だが、仮にすべて10万円の買い物で当選した場合、総額100億円以上の還元になる大盤振る舞いだ。
全体として順調に見えるが、決算説明資料をよく見ると、大きなユーザー基盤を築いたPayPayとそのブランドイメージは定着に向かっていると感じるものの、それをマネタイズにつなげられているのか、さらには4000億円以上を投じたZOZOによる底上げを除いたときに成長の芽はほかにあるのか、という疑念は払拭されない。
同社が決算説明会で使った言葉どおり、「ポートフォリオ(組み合わせ)経営で安定的な収益」を出してコロナショックのピークを乗り切ったようには見えるが、コロナ後のビジネス展開に期待が持てるとまでは言いがたい内容だ。
以下に、今回の決算の要点をまとめた。
決算に先立ち、ジャパンネット銀行など傘下あるいは出資先の金融事業6社の社名・サービス名を「PayPay」ブランドに統一すると発表。当局の許認可を経て、2020年秋以降に。
日本のネット銀行の草分け「ジャパンネット銀行」は、約20年の月日を経て看板を掛けかえることになる。
Screenshot of ZHD press release
売上高は2738億円(前年同期比+14.8%)、営業利益は506億円(同+40.0%)。純利益は227億円(同-16.9%)も、前年にPayPayの持ち分変動利益を計上した影響で、順調そのもの。
出典:Zホールディングス 決算説明会 2020年度第1四半期(4-6月期)
何より、ZOZO買収効果が明確に。今期だけで「73億円」営業利益を積み増し。ほかに、コロナ感染拡大を背景に販促費や固定費を抑制したのも大きかった。
営業利益の増減要因。
出典:Zホールディングス 決算説明会 2020年度第1四半期(4-6月期)
ZOZO買収がなかったら、ZHDの売上高は前年同期からほとんど成長ナシだった。
2020年度第1四半期、ZOZO連結の影響。
出典:Zホールディングス 決算説明会 2020年度第1四半期(4-6月期)
ヤフー、ZOZO、アスクル。巣ごもり需要でECが伸び、ショッピング取扱高は驚きの「86%増」。広告も減収を回避。
2020年度第1四半期KPIの実績。
出典:Zホールディングス 決算説明会 2020年度第1四半期(4-6月期)
外出自粛で店頭利用は減少・成長鈍化も、ユーザー数は3000万突破。金融事業のブランド統一に向けて基盤は整った感がある。
PayPayのKPI実積。
出典:Zホールディングス 決算説明会 2020年度第1四半期(4-6月期)
ただし、ショッピングやPayPayを含むコマース事業は、外出自粛の解除や政府のキャッシュレス施策終了などの影響で、7月に成長減速。
コマース事業の状況と見通し。
出典:Zホールディングス 決算説明会 2020年度第1四半期(4-6月期)
広告需要は、検索型広告はコロナの影響が一段落して回復傾向の一方で、ショッピング広告は政府キャッシュレス施策の終了などに連動して伸びがゆるみ、横ばいの展開か。なお不透明。
広告の状況と見通し。
出典:Zホールディングス 決算説明会 2020年度第1四半期(4-6月期)
最後に、コロナの影響で電子書籍販売のイーブックイニシアティブジャパン(+23億円)、クレジットのワイジェイカード(+22億円)は売上高を伸ばしたが、コマースの太い柱のひとつだった宿泊・レストラン予約の一休は「-35億円」に終わった。
2020年度第1四半期、連結営業利益の増減要因。
出典:Zホールディングス 決算説明会 2020年度第1四半期(4-6月期)
(文:川村力)