内閣副大臣が語る「コロナ接触確認アプリ“COCOA”」をめぐる4つの事実

TOkyo

新型コロナウイルス接触確認アプリCOCOAを巡る疑問に、政府のテックチームを率いる平将明副大臣が答えた。

Reuters/Issei Kato

「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」をリードする、内閣府副大臣の平将明氏はこのほど、接触確認アプリ「COCOA」に関する記者向けのグループインタビューを開いた。平副大臣のインタビューから、特に4つの項目に絞り、接触確認アプリの価値について考えてみよう。

その1:接触確認アプリの導入は「6割」に達しなくても価値は十分にある

取材にこたえる平将明内閣府副大臣

取材にこたえる平将明内閣府副大臣。

撮影:西田宗千佳

「色々言われますが、私は意外と多くの方にインストールしていただけたと思っています」

平副大臣は、インストール数の点についてそう答えた。

7月31日午後5時の段階での、同アプリのダウンロード数は約996万件。「人口の6割」という言葉が先行していたのでいかにも少ないように思われるが、実はそうでもない。

現在広く普及している「LINE」や「PayPay」などのアプリが1000万ダウンロードに到達するには最低数カ月かかっており、ペースはかなり早い。

ヤフーの元社長で、現在は東京都副知事の宮坂学氏も、自身のTwitterアカウントで「COCOAは健闘。40日で(1000万)到達は驚異的」とコメントしている。

一方で「数が少ない」という批判が出るのは、「人口の6割がインストールしないと効果が出ない」という言説が広がったためだ。安倍総理の会見でも「6割」という数字が明示されていた。

「総理が(6割と)発言されたので、僕もびっくりしたんです。6割は国としての目標ではありません。

6割でないと意味がない、ダウンロードが少ないと意味がないわけでもないです。日本大学から先日シミュレーションの発表があったようですね。ありがたいと思います。1人1人が入れることで、少しずつ効果が積みあがる性質のものだと思っています」(平副大臣)

日本大学のシミュレーションとは、7月28日付で日本大学生産工学部から発表された研究結果のことを指す。

この研究では、1000人のうち10人を感染者と仮定し、アプリ利用率とアプリの通知で外出を控える割合を掛け合わせ、感染者数増加をシミュレーションしたものだ。下のグラフを見ればわかるように、アプリの利用率も重要だが、同時に、アプリによって「行動を変える人」が多いことが重要だ。

日本大学生産工学部が発表

7月28日付で日本大学生産工学部が発表した研究結果より抜粋。アプリの利用者数だけでなく、アプリによって「行動を変える人」が増えることが大きな意味を持っていることがわかる。

日本大学生産工学部が発表した研究結果より

その2:導入時の混乱はなぜ起こったのか、実用性と「縦割り」の関係

接触確認アプリ「COCOA」

接触確認アプリ「COCOA」のiOS版。起動させておく電池消費は、アプリ構造上非常に少なく、プライバシー上の問題も拝領された設計になっている。今、インストールしない理由はほとんどないと言える。

撮影:伊藤有

接触確認アプリについては、3月から日本でも複数の企業・団体で開発が始まっていた。その中で、政府のテックチームが設立され、取りまとめられた。

当初、アプリは“民間にやってもらいたい”と思っていました。国はその相互運用も含めた取りまとめ、という役割です。というのは、国がアプリを作るとダサくなるので……(苦笑)。

グーグル・アップル共同での動きが出てきて、我々としてはそれに乗ろう、という判断をしました。その中で“1国1アプリ、公衆衛生に関する機関が運営”という話が出てきたので、流れが変わったのですが。

政治的に言うと“早く実装を”というプレッシャーはありました。当初の流れなら早く公開できるが、グーグル・アップルに乗ると1カ月遅くなります。

グーグル・アップルの方式であれば、OSとの兼ね合いで、バッテリー消費などの問題が出づらい。独自開発を検討した各国も、そこで苦労したようです。

時間を取るのか、実用性を採るのか。

結局、5月の中旬には落ち着いてきたこともあり、“次の感染に備えて実用性に優れたものを”という政治判断をした、ということです」(平副大臣)

結果的にアプリ開発は厚生労働省が運営主体となった。

アプリ開発元選定の経緯が不透明だ、という批判もある。

厚生労働省に開発が移管した理由は、感染者情報を一元化する国のシステムである「HER-SYS」を厚生労働省が運営しており、そことの連携が必要であるためだ。

ただ結果として、テックチームから厚生労働省へと移管されていく流れがスムーズに機能していたか、というと「そうではない」と筆者は感じている。組織の縦割りの問題があるのではないだろうか。

不具合への即応性やアナウンス体制について、即応性に欠けた、という反省はあります。厚生労働省は手一杯ですので、テックチームとしてコミュニケーション含めて、何ができるか、検討していきたいです。

予算についても、本来はもうちょっと政府全体で見るべきなのは事実です。すでに総理からも、改善のためのロードマップが指示されています」(平副大臣)

その3:あくまで「プライバシー重視」、中国的なやり方は「真っ平御免」

接触確認アプリ「COCOA」

過去14日間の陽性者との接触した可能性があるかどうかをいつでも確認できる。

撮影:伊藤有

日本の接触確認アプリの特徴は、プライバシー面に強く配慮している点だ。名前や電話、位置情報や行動履歴などのビッグデータは「一切記録されていないし、残らない」(平副大臣)仕組みだ。

一方、中国などではより個人情報を集める形でのアプリが使われている。そのほうが即効性があるのは事実だ。

日本はあえてプライバシーに配慮した仕組みを採用している。その背景はどのようなものなのだろうか?

privacy

各国が採用しているアプリとプライバシーポリシーの関係。日本やドイツはかなりプライバシー重視だ。

出典:内閣府 新型コロナウイルス感染症対策テックチーム

「 個人情報をどう捉えるかによって、世界経済のルールが分かれ、ブロック経済化する懸念があります。日本は信頼感のもとに、できるだけデータを自由に流通させようという考え方です。

完全に中国と我々ではフィロソフィーが違い過ぎていてですね……。

新型コロナの脅威にあっても、どうやって自由主義や民主主義、プライバシーの配慮を維持するのか。そういう大きな命題を背負いながら、アプリの開発を進めました。

私は“この仕組みでやりたい”と決めた事務方の責任者です。

今は政府の一員ですが、コロナがあったからといって中国のような社会になるのは、国民のひとりとしても真っ平御免なので、この仕組みにしました。

その一方で、中国にはいろんな知見が貯まるでしょう。それは、国際社会へ、しっかりフィードバックをしてくださることをお願いしたいです」(平副大臣)

その4:「ITでの感染防止策」は他にも、企業での積極的利用を期待

「6割必須」が誤解であるとはいうものの、普及をさらに加速させ、陽性者登録をスムーズにする必要があるのも事実だ。

政府はこれから告知を本格化させ、「よく知られた人」(平副大臣)を起用したテレビCMや、インストール方法などを告知する動画の公開なども行う。

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今後予定されている国からのPRと、各企業との連携。COCOAの周知はここからが本番となる。

出典:内閣府 新型コロナウイルス感染症対策テックチーム

それ以外にどのような策をとっていくのだろうか?

「政府から直接インストールのインテンティブを、ということはありません。間接的に期待できるのは“経済活動”と“新型コロナ封じ込め”をどう両立させるか、という点です。

たとえば一部の宿泊施設では、COCOAをインストールすれば宿泊代を割引する、という報道がありました。“キャッシュレスとCOCOAのインストール促進を連携させる”という話も聞いています。インストールした方にポイント還元、というやり方もあるでしょう。

みなさんインストールすれば、安心が広がりますし、リスクもコントロールできるようになります。“みんな入れてるんだ”となれば、お店などに入りやすくなりますよね(平副大臣)

もうひとつ、平副大臣が期待するのが「企業での一括インストール促進」だ。

「企業の場合、会社全体で(COCOAを)入れてくれた方が全体運営には有効だと思います。私が経営者ならば(社員に)“これを入れて”と言います。

そういう活動が広がれば、ダウンロード数もさらにまとまって増えてくるものと思います」(平副大臣)

一方で、「インストールするなら、通知がきた時に検査を優先に受けられるようにしてほしい」という声もある。

「現状の制度では、PCR検査受けるかどうかは、ドクターか保健所が判断します。

その一方で、各地の医師会を通じてCOCOAを判断に生かしていただくよう、お伝えしています。

最近ようやく事例が出てきましたが、“発熱した際に、アプリから濃厚接触者の通知があった”ということであれば、お医者さんも判断しやすい。結果として、PCR検査を受けやすい、という生態系になるよう制度設計しているんです。

しかし、PCR検査数には限りがあります。症状が出てすぐ受けられる、という状況を維持できるのか。ここに課題があります。

西村大臣(経済再生担当相)も、加藤大臣(厚生労働相)も、“通知が来たら不安になる。できるだけPCR検査を受けられる仕組みを作りたい”と考えています。ですから将来的に、そういうメッセージを出せるよう体制を整備していきたいです」(平副大臣)

またアプリでの対策については「COCOAだけではない」との考えも持っている。

「店舗などでの通知アプリもありますし、JRからは駅に来る電車の混雑状況がわかるアプリを提供されています。

ただ、そういう情報がバラバラでは使いづらい。たとえば飲食店のガイドラインがあったとして、それを守っているお店を飲食店検索サイトで見つけられるとか、経路検索でも、時間や安さだけではなく、空いているルートを案内するとか」(平副大臣)

そういった形で、COCOA以外のITの力も含めて対策していくのが、これからの日本の新型コロナウイルス対策、ということになるのだろう。

(文・西田宗千佳

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