2020年度第1四半期の決算会見でNTTドコモ社長の吉澤和弘氏は直近の新型コロナウイルスの影響と今後の業績見通しについて語った(写真は2020年1月撮影)。
撮影:小林優多郎
NTTドコモは8月3日、2020年度第1四半期決算を発表した。営業収益は前年同期比で5.3%減となる1兆982億円、営業利益は0.7%増となる2805億円と、減収増益決算となった。
NTTドコモの第1四半期決算概要。
出典:NTTドコモ
営業利益のおもな増減要因は、
増加要因:
- 光通信サービスの収入などが120億円増
- 光通信サービス関連の販売関連費用が849億円減(=結果的に利益が増加)
減少要因:
- 海外ローミング使用料を含むモバイル通信サービスが187億円減
- 端末販売数の減少による収入が777億円減
となっている。「海外旅行者の利用と端末販売の利益が落ちた分、固定回線契約と端末販売コスト減によってカバー」した形だ。
営業利益の増減要因。
出典:NTTドコモ
これは7月31日にKDDIが発表した決算でも同様の構造があった。
KDDIのau端末販売台数(個人向け)は、前年同期比で約23%減となる150万台、NTTドコモの端末総販売数(個人・法人向け)は約32%減となる400万8000台となっている。NTTドコモ社長の吉澤和弘氏は、新型コロナウイルス感染症拡大によって「来店者数が少なかった」ことと「(端末の)売り方を変えた」ことを主な原因としている。
5G契約数は「想定通り」
NTTドコモは2020年3月から個人向け5Gサービスを展開している。
撮影:小林優多郎
一方で、NTTドコモとKDDIで異なる主張となったのが2020年3月にそれぞれが始めた個人向け5Gサービスの展開についてだ。
KDDI社長の髙橋誠氏は新型コロナにより「出鼻をくじかれた」と表現したが、対する吉澤氏は「想定通りに推移している」と話している。NTTドコモは2020年6月末時点の5G契約者数を15万契約、さらに吉澤氏によると「直近では24万契約に達している」と発表している。
NTTドコモは現在まで6機種の5G対応スマートフォンをリリースしているが、いずれも高価格なハイエンド端末となっている。吉澤氏は、今後より多くのユーザーにアプローチするため普及価格帯の端末を「今年度下期、早いうちに出したい」と話しており、当初の計画通り2020年度内に250万契約の達成を目指していく。
2020年度業績予想はほぼ横ばい
NTTドコモの2020年度業績予想。
出典:NTTドコモ
今回の会見では、2019年度通期決算(4月28日開催)で発表を見送っていた2020年度の業績予想も合わせて発表された。
売上高にあたる営業収益は前年度比約1.7%減となる4兆5700億円、営業利益は2.9%増となる8800億円といずれもほぼ横ばいの目標に据えた。
吉澤氏はこの予測について、これまでの新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえつつも「緊急事態宣言の再発令は織り込んでいる。徐々に経済活動が復活していくと見込んでおり、(国内の)感染拡大も欧米よりゆるやか」と同社が想定している前提条件を語った。
端末販売については、今後さらに積極的に営業活動を行い前年度以上を目指す。新型iPhoneの発売が例年より遅れる見通しも報じられているが、「想定に対して、大きな影響を与えないのではないか」(吉澤氏)としている。
通信以外のスマートライフ領域は堅調に成長している。
出典:NTTドコモ
また、同社でコロナ禍でも好調な業績という「dアニメストア」「Disney+」「dキッズ」などのコンテンツ・ライフスタイル系サービス、「dカード」「d払い」といった金融・決済系サービスのさらなる成長にも期待感を示している。
(文・小林優多郎)