頼みの新型iPhoneは遅れ、5Gも不発……通信キャリア社長たちの泣き・笑い

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左から、NTTドコモの吉澤和弘社長、KDDIの髙橋誠社長、ソフトバンクの宮内謙社長。

編集部

2020年3月にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクで相次いで始まった5Gサービス。

「高速大容量」「超低遅延」「多数端末接続」がウリとされているが、身の回りで5Gスマホを持ったユーザーに出くわすことがない。鳴り物入りで始まったように見える5Gだが、通信業界の期待は「肩透かし」に終わったように見える。

「(5G普及に)焦り感じる」キャリアトップが本音

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作成:小林優多郎

実際、KDDIの髙橋誠社長は5Gサービスに対して決算会見で「3月から力を入れていくつもりだったが、その出鼻を挫かれた」と悔しがる。3月26日からサービスを始めたものの、コロナ禍によって3月、4月の5Gイベントは全て中止。盛り上げたくても盛り上げられない状態に陥ったからだ。

髙橋社長は「5Gへの移行を進めていかなければならない中、これが計画通りに進捗していない。少々、焦りを感じている」と本音を漏らした。

ソフトバンクの宮内謙社長は「今の台数は言えない。計画通りではあるが、そもそも低い計画しか立てていない」と余裕の表情を見せる。

一方「計画を上回る」と好調ぶりを語るのはNTTドコモの吉澤和弘社長だ。

NTTドコモは決算会見で5Gプランの契約数が8月1日時点で24万件に達したと発表した。

吉澤社長は「24万件は計画を上回っている。今の5Gスマホは10万円前後で、5Gに興味のある方が購入していると思う」と語った。

NTTドコモの5Gギガホプラン

NTTドコモの5Gギガホプラン。

撮影:伊藤有

NTTドコモの「5Gギガホ」は、料金プラン上は100GBまでという容量制限があるが、キャンペーン期間中で容量無制限となっている。もちろん、5Gエリアだけでなく、4Gエリアでも無制限に使える。スマホのみならずテザリングでパソコンにつないでも無制限であるため、ヘビーユーザーがこぞって5Gスマホに乗り換えている感がある。

ちなみにKDDI、ソフトバンクともに5Gスマホの料金プランは4Gとほとんど変わらないため、5Gスマホに乗り換える理由が見つからない。そのため、5Gユーザーも相当、少ないようでKDDI、ソフトバンクともに契約者数を発表できていないのだ。

「コロナ影響だけではない」5Gスマホが売れない2つの理由

KDDIの5G端末

5Gの販売状況はキャリアによって温度差が大きい(写真はKDDIの5G端末。2020年3月撮影)。

撮影:小林優多郎

また、5Gスマホが「売れなかった」理由が2つある。

1つはコロナによる外出自粛によってキャリアショップの営業時間が短縮された。宮内社長は「本来なら会社帰りにショップに寄ってスマホを買うのが、営業短縮によって11時から16時までの営業時間になった。これでは半分以下にならざるを得ない」と愚痴をこぼす。

もう一つの要因が2019年10月の電気通信事業法の改正だ。端末割引に2万円の上限が設定されたことで、ハイエンド機種ばかりの5Gスマホが売れなくなってしまった。

「コロナの影響は一番大きいが、事業法改正の影響がなかったといえば嘘になる」(髙橋社長)。

実際、2020年度第1四半期において、スマホの売れ行きは相当落ちた。KDDIは前年同期と比べて45万台、NTTドコモに至っては130万台も販売台数が落ちた。ソフトバンクは「ワイモバイルとソフトバンクのスマホデビュープランが堅調」(宮内社長)で、18万台減に止まった。

とはいえ、コロナと事業法改正でスマホ業界に「感染不況&官製不況」が起きているのは明らかだ。

トップが語る「新型iPhoneの発表遅れ」の業績影響

ティム・クック社長

6月に開催した世界開発者会議WWDC2020に登壇するアップルのティム・クック社長。最新のiOS14の登場は秋だとしたが、例年より端末発売は遅れる見通しだ。

出典:アップル

例年、各キャリアは9月に発売されるアップル・iPhoneに勝負をかける。

決算の第2四半期は7月から9月まで対象となっているため、9月のiPhoneの売れ行きが決算の数字に大きく影響するのだ。

ただ、今年はアップルが先日の決算会見で「今年のiPhoneは数週間、遅れる」と異例のアナウンスをした。

これにより、iPhoneは第2四半期には間に合わないことがほぼ確定した。その影響についてKDDI髙橋社長は「iPhoneが5Gに対応するかどうかは憶測の域を出ないが、そうなった場合、かなり力を入れていかなければならない」とコメント。

一方のNTTドコモ吉澤社長は「数週間程度の遅れであれば、その後の期間で巻き返せる。(iPhoneの発売)遅れが(業績に)大きな影響を与えることはないと思う」と語った。

現在、低空飛行を続ける5Gだが、やはり今年のiPhoneが5Gに対応。各キャリアとも、iPhoneの登場を待って、一気に5Gを展開していくようだ。

吉澤社長は「エントリーモデルをできるだけ早くに投入し、現在3Gや4Gを利用しているユーザーの方にアピールしたい」とコメント。

ソフトバンク宮内社長は「晩秋から来年にかけて5G祭りが始まる」と宣言。さらに「今は5Gスマホを4機種しか出していないが、これはある意味ショーケース的な世界。今はネットワークが全国的につながっていない。これが本格的に動き出すのは今年の秋以降。Googleも5Gスマホを出すし、OPPOや、最終的にはiPhoneも出てくる。私にはわからないが。ネットワークをしっかりと整備していきたい」と胸を張る。

それでも2021年は「機種変したら5G」の世界になる?

5G

出典:Samsung/YouTube

ソフトバンクでは2021年度末までに5Gの人口カバー率90%を目指す。自社で基地局を立てるだけでなく、地方ではKDDIと基地局を共有してエリアを拡大。また、4Gネットワークに5Gを混ぜることで、一気にエリアを広げていく計画だ。

ソフトバンクでは「2023年度末までにソフトバンクスマホの6割は5G対応になる」(宮内社長)とした。

6割という数字は一見、かなり攻めた数字のように感じる。しかし、メーカー関係者によると、「もはや、5Gのチップセットもアンテナも4G向けとコスト的にはたいして変わらない。今後のラインナップは全て5G対応になると思う」という。

シャープも、今年2月の段階で「2021年には全てのAQUOSスマホを5G対応にする」と明言。つまり、MVNO市場向けのコストパフォーマンスに優れたAQUOS senseシリーズなども5Gになるということだ。

つまり、2021年には「4Gか5Gか」の選択ではなく「機種変更しようとしたら、どれを選んでも5Gスマホ」ということになりそうだ。

3月のスタートにつまずき、早くも失速しているように見える5G。ではあるが、実は春の種まきに過ぎず、秋から来年にかけて「5G収穫祭」で盛り上がることになりそうだ。

(文・石川温

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