ソフトバンクは2020年度第1四半期決算を発表。コロナ禍においても、堅調な歩みであるとアピールした。
出典:ソフトバンク
通信事業などを手がけるソフトバンクは8月4日、2020年度第1四半期決算を発表。売上高は前年同期比で1%増となる1兆1726億円、営業利益は4%増となる2799億円の増収増益で着地した(最終利益は8%減)。
ライバルであるNTTドコモは8月3日、KDDIは7月31日に決算を発表したが、いずれも減収増益。その理由は共通して「客足は減って端末の販売は減ったが、販売奨励金などの販促費が抑えられた」というものだ。
では、なぜ同じコロナ禍でもソフトバンクは現状維持の姿勢を保てたのか?
端末の売上減をヤフー・法人事業がカバー
事業セグメント別の売上金。
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各社が公開している当期の端末の販売台数を見てみると、NTTドコモが前年同期比で約32%減(法人・個人)、KDDIが約23%減(個人のみ)となっているのに対し、ソフトバンクの端末出荷数(法人・個人)は約8%減となる182万件に留まっている。
ソフトバンク社長の宮内謙氏は「4月、5月と(実店舗の営業自粛などで販売が)落ちたが、6月にはもち返した。(テレワーク需要で)法人の販売も増えた」と語る。
事業セグメント別の営業利益。
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営業利益のセグメント別構成比を見ても、ZOZOの買収・巣ごもり消費でECが好調なヤフー(Zホールディングス)事業が前年同期比で144億円増、法人事業が32億円増と、コンシューマー事業の163億円減をカバーしている。
宮内氏は第1四半期の総括として「うまくのりきれた。パンデミックはまだまだ続くが、そんな中でも事業を伸ばすことができる」と今回の結果がコロナ禍における同社のビジネスの堅調さにつながっていく旨をアピールした。
「2022年度までに営業利益1兆円」のカギはスマホとPayPay
「1兆円の利益が出る企業にする」と具体的な計画を掲げた宮内氏。
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会見の最後に宮内氏は、「2022年度通期決算までに営業利益1兆円を目指す」などの中期目標も公表した。
ポイントはおもに4つあるが、ビジネスの柱となるのはユーザー数や加盟店数・機能を着々と広げている“PayPayのプラットフォーム化”や“スマホ拡大と法人のデジタル化戦略”の2点だ。
PayPayをプラットフォーム化できるかが、大きなポイントになってくる。
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PayPayのプラットフォーム化は既にPayPay自身も共同出資しているZホールディングスの決算でも言及したように、モバイル決済アプリを入口としたスーパーアプリ化のことを指す。
PayPayはソフトバンク陣営のキャッシュレス決済アプリではあるが、すでに多くのユーザーがキャリアに関係なく利用・認知が進んでいる。
Zホールディングスやソフトバンク傘下のフィンテック分野のサービス名がすべてPayPayブランドに統一されることは既に発表済みだが、今後もPayPayブランドの確立、連携を深めていくことでグループシナジーを追求する方針だ
スマートフォンの累計契約者数および5G端末の構成比も増やしていく。
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また、スマートフォンに関しては2023年度までに累計契約数を3000万台(2019年度時点では2413万台)、その内6割を5Gスマホが占める状況にすると具体的な内容を宣言。5Gに関しては、現在は局所的に展開している5Gエリアを2022年3月までに累計5万局の基地局設置によって人口カバー率90%超まで拡大することや、低価格から高価格帯まで幅広いレンジの5G対応スマホを用意することで普及を促す。
ヤフーLINE経営統合には期待感示すも詳細はまだ
ヤフーとLINEは経営統合し、新生Zホールディングスとして活動予定(写真は2019年11月撮影)。
撮影:小林優多郎
一方、ソフトバンク傘下のZホールディングスには、目下ヤフーとLINEの経営統合という大仕事が控えている。この統合は本来2020年10月までに実施される予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で規制当局の認可が遅れ、2021年3月にずれ込む旨が公表されている。
ちょうどソフトバンクが決算会見を開いた同日には、公正取引委員会が両社統合の審査結果について公表し、「当事会社グループが申し出た措置を講じることを前提とすれば,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとはいえないと認められた」と、条件付きの認可を出した。
ソフトバンクの成長戦略のスライド。ヤフーの隣にLINEロゴが配置された。
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これに対し宮内氏は、従来から使っていた同社の成長戦略示すスライドにLINEロゴを掲出するなど期待感をあらわにし、営業赤字を出し続けているLINEの財務状況については「ヤフーも(ソフトバンクとのシナジーで)赤字から脱した。グループを効果を上げていけば、アドオンできる」とコメントした。
だが、PayPayのプラットフォーム化が進めば当然すでに利用者数や機能的に“スーパーアプリ”の様相を見せているLINEと社内競合を起こす可能性は十分に考えられる。
これについて宮内氏は「細かいことは先々でお話ししたい」「Z(ホールディングス)の川邊(社長)達の力量にかかってくる」と明言は避けた。
(文・小林優多郎)